齋藤響介投手(メルボルン/オリックス)インタビュー
「テンポよく、自分のペースで投げることが、相手を抑えるポイント」
テークバックの小さな、“ショートアーム”と呼ばれるフォームが特長の齋藤投手。メルボルンで登板のない試合では、一塁走者の防具を受け取りにベンチから走るなど、若手らしいシーンも見られた。しかし、マウンドに上がれば年齢は別。オーストラリアで磨いた投球術を武器に、今季はより強気のマウンドでチームを勝利に導く。
インコースと強い真っすぐを磨く
――日本での今シーズンを振り返っての、収穫と課題から教えてください。
日本での今シーズンは、いろいろな経験をさせていただきました。一軍の舞台でも投げさせていただいたのですが、自分に調子の波があって、連打を浴びるなど大量失点することが多かったので、課題が多かった1年だったと思います。その中での収穫は、今年目標にしていたプロ入り初勝利(6月8日、巨人戦)を挙げられたことですね。
――球団からABL派遣を告げられたとき、「こういうことを勉強してきなさい」とか、「こういうことが齋藤投手には必要なんじゃないか」とか、どんな話をしてもらいましたか?
オーストラリアに来る前からずっとインコースの練習をしていて、そのインコースをオーストラリアでも投げられるようにすることと、強い真っすぐをどんどん磨いてきなさいという言葉をいただきました。
――インコースに決めることはコントロールの部分、メンタル的な部分など、いくつかの要素が必要だと思いますが、齋藤投手の場合はインコースの精度を上げるためにどこを一番磨かなくてはいけないのでしょうか。
インコースに投げようと思えば投げられる、というわけではないんですが……多少はいけるんですけれども、狙うと少しボールが弱くなる部分があるので、外角など他のコースに投げるときのように、もっと腕を振ってインコースにも投げられるようにしていきたいなと思っています。
――こちらに来て先発ローテーションで回る中、そのあたりの感触はどうですか?
インコースにもしっかり腕を振って、多少は投げられるようになりました。ツーストライクに追い込んでから、決め球のボールが浮いて甘くなって打たれることも多かったので、追い込んでから低めに集めることや、決め球となるフォークやスライダーの精度も、こちらに来て学べたと思います。
――日本での齋藤投手と、ABLでの齋藤投手に、何か違いはありますか?
自分はあまりキャッチャーのサインに首を振らず、キャッチャーのサイン通り投げているので、あまり違いはないと思います。日本でも決め球にはフォークを使うことが多いですし。こっちに来てからは、試合前に通訳さんを介して組み立てについてもバッテリーで話して、自分が投げたい球も投げさせてもらっています。
――チームメイトとのコミュニケーションはどうですか?
僕は自分から話すのがあまり得意ではないんですけれども、みんながいろいろ話しかけてくれるので、よかったです。最初は緊張していましたが、どんどん馴染めている感じはあります。ほかのピッチャー陣とはキャッチボールを一緒にさせてもらったり、どんどん向こうから話もしてもらっていますね。
――そういえば、20歳の誕生日(11月18日)をオーストラリアで迎えたんですね。
はい、ちょうど自分の登板日だったので、試合が終わった後にホテルでケーキを買ってもらって、お祝いをしていただきました。
――そうそうない貴重な経験の連続ですね! ここまでの試合(取材は12月19日)で一番印象に残っていることはなんですか?
やはり、「結構ホームランを打たれたな」という印象が残っています。特に最初のほうの対戦で(編集部注・11月24日のブリスベン戦で被本塁打2など)……。
――こちらの選手はやはり、「そこを持って行くか」という感じですか?
当てに行ったというか、泳いだと思っても打球が飛んでいきますね。スライダーとか、ツーストライクから少しでも甘くいくと、ちょっと体勢が崩れてもそのままホームランになってしまうので。そういったところで、やはり決め球が課題になるなと思いました。
マウンドでは強気です
――ここオーストラリアに来て、最も勉強になったなと思うことはなんですか?
やはり、そのツーストライク後の決め球のことが、一つ。それから、最初かなり打たれて自分のペースが乱れていたときは、その後もさらに続けて打たれていました。でもテンポよく自分のペースでどんどん投げれば、多少でも抑えられることは分かりました。
――それは、日本でも同じですか。
そうですね。相手のペースに飲まれると、どんどん相手が流れに乗って、打たれてしまう。自分のペースで、間を使って投げていけたらいいなと思います。気持ち的にも強気でいきたいです。
――初めてお会いしたのにとても失礼なんですが、すごく優しそうなお顔をしていらっしゃいますよね。でもマウンドでは、やはり性格も変わりますか。
やはりマウンドでは強気というか。自分は結構負けず嫌いなので、相手に絶対負けたくない気持ちで投げています。
――ちなみにオーストラリアのアパートメントでは、誰と同部屋なんですか? 自炊はしていますか?
僕は髙島(泰都)さんと2人です。自炊はそんなにしていなくて、トレーナーさんに作っていただいたり、外食をしたりしています。
――齋藤さんは生活の中で、何か担当はないんですか?
特に担当はないんですが、洗い物とか、いろいろしています。
――将来の1人暮らしの勉強になりますね。
そうですね。やはり食事面など、大変だなと思いました。でも今回、トレーナーさんが一緒だったので、食についてもいろいろ学ぶことができました。
――日本でもローテーションで回っていましたが、こちらでの先発でも同様に、きちんと自分のルーティンができていましたか?
はい、自分は登板の2日前にブルペンに入って、という流れがあるんですが、こちらでも変わらず、いつも通りにできました。
――この経験を、来季はどんなふうに生かしたいですか?
自分の中では今年、あまりうまくいかなかったので、来年はもっと勝ちを増やせるように、もっと内容のいい投球ができるように頑張っていきたいなと思います。
――先発で試合を作って、チームの勝利に貢献することに加えて、よくしたい“内容”とは?
先発がフォアボールを出して試合の流れやテンポを悪くすると、全体のリズムも悪くなり、野手のバッティングのほうにも悪影響を与えると思います。そうした意味でもテンポよく、どんどん投げていきたいと思います。