魂の螺旋ダンス 改訂増補版(16)

・ 超越性宗教の垂直的超越運動

このように、超越性宗教はパラドックスを通じて非二元的な(不二の)根源的解放をもたらす。
そこに開かれた世界は、共同体内部にも、国家の体制の中にも収まりきることのできるものではない。


超越性宗教は、古層のシャーマニズムもその祭祀宗教化した国家宗教も、それに支えられた王権も、そのすべてを解体し、超越していく運動である。
共同体の子宮、母なる大地に繋がり直すというよりは、無防備なままに投げ出された自己を宇宙に向かって解放してしまうのだ。


ここではさらにブッダの悟りの例を検討してみよう。

ブッダは、バラモンの祭司主義に決別し、個的な探求を始める出家者となった。
出家し、裸の個人に還ったゴータマは、あらゆるヨーガの行法に習熟する。
インドには、シャーマニズムの古層が、弾圧を潜りぬけて、ヨーガという形で残存していた。
それ故にゴータマは、その個的な探求を、様々なヨーガの師匠を渡り歩くことで続けていくことができた。
こうしてゴータマは、当時のインドで可能な限りのあらゆる変性意識の次元をすべて体験する。

ブッダは六年間の苦行の中で、あらゆる変性意識を探求したと言われている。
しかし、それでも彼は「到達した」とは感じない。
六年間の苦行の果て、憔悴しきったゴータマは尼蓮禅河のほとりで美しい娘から、乳がゆの施しを受ける。
そうして菩提樹の下での瞑想において、あるがままの自己と世界に帰着する。あらゆる努力の果ての究極のくつろぎ。

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