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小説

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2020年3月の記事一覧

岸のない河

岸のない河

(詩)岸のない河

せまい入り口をはいっていくと

奥には

岸のない河がひろがっている

さざ波もなく

流れる音もなく

ぼくもなく

あなたもなく

光さらさら

あふれかえる

岸のない河(1)

abhisheka様

こんにちは。

突然のお手紙申し訳ありません。

このことはかくかかかないかとても迷いました。

けどあの頃のことを含めてまたいろんなことをお話したいとおもい、本当のこ

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高樹のぶ子「甘苦上海」

2014年3月19日

 高樹のぶ子「甘苦上海」1巻2巻読了。上海が舞台である必要があったかどうか、やや疑問。だが、これで東京だったら、ありふれていて、誰も読まないかも。実利に奔走する人々の群れ。その一歩裏町に入れば昔ながらの中国。そして上海人と外地人(他の田舎の省)の立場の違いなどが背景にはなっている。そういえば、いつの頃からいつの頃までか、日本人も世界中からエコノミックアニマルなどと言われたっ

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吉村萬壱「臣女」

2015年3月19日

 再読せずにメモするので不正確かもしれないが、『臣女』の一番目のテーマが介護であるという説が流布し、作者も「それで受けるなら、それでいこう」と思っている節があるが、私が読むと違う。
 私が読むと、そういうありきたりのものでなく、もっとおもしろい。
 『臣女』の第一のテーマは、妻という存在の理不尽さと恐怖(こっちには保護意識が混じる)、二つ目のテーマは母という存在の理不尽さと

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吉村萬壱「出来事」

吉村萬壱「出来事」読了。細部に気を配って飽きさせない文体を維持する苦労がしのばれる。作品としては、どこまでをフェイク、どこまでをホンモノとするのかが、中途半端な気がした。人間の社会的合意がフェイクなのか。人間の脳の認識パターンそのものがフェイクなのか。

おそらくはそのせめぎあうどこかで書いている。だから緊張感があるともいえるが、だから脳の認識パターンそのものの徹底破壊の恐怖も清々しさもないとも言

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文学の遠近法

僕のアートに欠けていたのは遠近法だ。と、自分が撮影した写真を見て気づいた。

一見して二次元でも、遥かなるものの深みから、時空を超えて切り込んでくるもの、または連れ去られる感じ。
あの世だけを描くのでもなく、この世だけを描くのでもなく、遥かな距離を超えていく運動そのものを描きたいと思ったんです。

水墨山水などには、近代西洋画とは異なる、空なる世界との遠近法を感じます。
荒海や佐渡に横たふ天の河(

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普天間よ レビュー

古い原稿が出てきました

小説『普天間よ』大城立裕 レビュー(あび=長澤靖浩)

エッセンス
普天間で踊るというということは、強大な力に圧倒されながらも、このように寸分の狂いもなく、踊り続けることなのだという覚醒は、この小説の書かれた意味を支えている。

小説が沖縄に対して何をできるのかについて多くの示唆があった。だが、前半余計なことを僕が書いたため、このレビューを読まなかった人も多いと思うのでレ

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小説の書き方

 突然ですけど、真の官能小説の書き方が、天啓のようにわかりました。
 登場人物が、何をどんな風に感じてセックスしているかを描いていき、もちろん読んでいる読者にそこでエッチを感じてもらわないと官能小説にならないわけだけど、それで終わらず、その根源にはいったい何があったのかに迫っていき、場合によってはすべてが氷解して、愛だけが広がるのが、完璧な官能小説です。
 と考えていると、ミステリーの書き方もわか

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作家の仕事

僕がもっとも信頼する作家は、書きたいことが初めから形を持っている作家ではない。

曖昧模糊とはしているがやむにやまれぬ衝動があり、それを何とかして形にしようとしている作家だ。

彼自身もそれがなんであるのか、わからずに書いている。

しかし、無視できないエネルギーが彼をかきたて、小説が完成するまで、彼を休ませることがない。

彼は書き続けるだろう。

そして小説が完成したとき、自分自身がまたひとつ

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