2匹いれば、いじめがはじまる。
他のお魚よりも悠長にぷくぷくと泳ぎ回るフグ達の世界も、自然の厳しさが漂う瞬間が多々あります。
もともとフグは、見た目のかわいらしさとは裏腹に気性が荒く、他の魚種との混泳も複数飼育も難しいとされており、単独飼育を推奨されています。それは、世界最小のフグ、アベニーパファーも例外ではありません。小さな口で他のお魚のひれをかじったりします。
複数飼育は難しいと分かっていても、群泳している姿がとてもかわいく、自然繁殖をめざしたいので、我が家ではアベニーパファーのみ大所帯で45㎝規格水槽で暮らしてもらっています。
フグにも性格の違いがある。
水槽を毎日観察していると、同じアベニーでも、控えめな性格の子、ものすごく気が強い子(縄張り意識が強い子)、食いしん坊な子、のんびりしている子など様々な性格の子がいることに気が付きます。
そして、気が強い子は周りのフグに「ここは自分のエリアだから来るな!」と激しく追いかけたり、ツンッと飛びだしたりしながら威嚇して縄張りを主張します。
余裕がないと、弱いものは生まれつづける。
フグのヒエラルキーの真ん中にいる子は、「なんだこいつ・・」くらいの雰囲気で飄々としているのですが、体格が小さく気弱な子は気が強い子のみならず、ヒエラルキーの真ん中の子たちにも圧力をかけられ始めます。
弱い子はストレスが溜まり、病気になってしまうことも多いです。体格が小さい子は、いじめられないようにあらかじめ保護してケアしたとしてもうまく太らずに命を落とすことが多いです。
その水槽のなかで1番弱い子がいじめられて、命を落としていなくなったとしても、またその中から新しいターゲットが生まれて、いじめがはじまります。
複数で飼育していなくとも、2匹いればどちらかのほうがパワーバランスが上になり、上下関係が生まれます。
お互いを必要以上に意識しないために水草や石、流木を複雑にレイアウトしたりして、衝突を防止するのですが、それでも執拗に縄張りを主張する子もいます。そのため、飼い主は定期的にあることをします。
共通の敵がいると、フグも団結する。
水槽の掃除のタイミングなどで、定期的に飼い主は水槽に手を突っ込んでレイアウトを若干変更したりします。
巨人(飼い主)によって、家をひっちゃかめっちゃかにされたフグたちは、それまでいじめが起きてギスギスしていたとしても、巨人の襲来とともに急に団結しはじめるんです。
巨人が共通の脅威になった途端に、隊列を組んで移動したり、まとまって行動しはじめるんです。笑
人間もフグも大差ない。
わたしはそんなフグたちの姿を見るたびに、姿形が似ていなくても人間もフグも大差ない、同じ動物なんだなと感じます。
限定された場所で集団生活しはじめると、段々ギスギスし始めて、共通の敵を見つけると途端に団結することもある。
ターゲットがいなくなると、新しいターゲットを見つけて、大なり小なり弱い者いじめが始まる。
1匹、1匹(のパーソナルスペース)が尊重されていると感じている環境であれば、いじめはそもそも起きないかもしれない。
そして、仲間を見捨てない義理堅さもあります。
(この動画では、網に引っかかった仲間を見捨てることなく
助かるまで寄り添い続けるハリセンボンの様子が記録されています。)
起きる事柄のレベルは違えど、人間だけが特別なわけじゃなく、フグの世界にもいろいろあるという事実が、視座を変えてくれる日もあります。
癒しだけじゃなく、いろんな気づきをくれるアクアリウムの世界が私は好きです。