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循環型で持続可能な事業に必要なコト

こんばんは
今年の4月に立ち上げたVUCA Laboコミュニティは、おかげさまで継続的に活動が行えております。これまで、ビジネスや組織での創造的な取り組みや、地方でのまちづくりや新規事業・改革について議論してきましたが、いろいろ話を伺っているうちに民間企業だけではなく、金融機関や行政、起業間同士での連携がますます重要だなと感じております。
そこで、次回の VUCA Laboでは『循環型で持続可能な地方でのデザイン』というテーマでセミナーを開催する運びとなりました。このnoteでは、こういった背景に至った理由と、今回のゲストに江口晋太朗さんを招いた理由、そしてセミナーでディスカッションしたいことを書きます。

これまでのVUCA Laboをふりかえって感じたこと

4月に立ち上げてから毎月開催していますが、これまでのゲストは信じられないぐらい豪華です。改めて並べると以下のようなラインアップです。

1. 佐宗 邦威(さそう くにたけ)さん
        株式会社BIOTOPE CEO/Chief Strategic Designer
2.嘉村 賢州(かむら けんしゅう)さん
        東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授
        特定非営利活動法人場とつながりラボhome's vi 代表理事
        「ティール組織(英治出版)」解説者
        コクリ! プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)
3.小林 弘人(こばやし ひろと)さん
        株式会社インフォバーン共同創業者・代表取締役CVO
4.井庭 崇(いば たかし)さん
        慶應義塾大学総合政策学部教授
        同大学大学院 政策・メディア研究科研究科委員
5.中川 敬文(なかがわ けいぶん)さん
        株式会社イツノマ 代表取締役
6. 篠原 稔和(しのはら としかず)さん
        ソシオメディア株式会社 代表取締役
        NPO法人 人間中心設計推進機構 理事長

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全てを語るときりがありませんが、次回のイベントと関係するこで印象に残ったことがあるので以下にピックアップします。

トリガーはテクノロジーはない
やられてないことをする(革新的じゃなくていい)
新しい課題の発見と解決を繰り返す。
「分散」には注目すべし

トリガーはテクノロジーではない

株式会社インフォバーン CVOの小林 弘人さんに登壇してもらったことがあります。コバヘンさんという愛称でも有名な小林さんは、初代日本版WIREDの編集長でもあり、これまで数々のメディアや著書、監修などを日本に伝えてきた鬼才です。そんなコバヘンさんからは、最先端のテクノロジーやビジネスの話題を盛りだくさん聞けるのかなと思いきや、ネイチャーやマインドセットな話題が多かったんです。これは自分としてはかなり意外でした。
最近、自分がレビューを手伝ったコバヘンさんの著書『After GAFA』でも、欧米問わずにブロックチェーン動向や過去の技術革新や暗号技術の刺激的な話で埋め尽くされてたいたので、そことのギャップが大きかったんです。

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ですが、よく考えると、昔からインフォバーンは地方でワークショップを頻繁に開催し、地域での新規事業にも積極的に取り組んでました。それと海外のフードテックやサーキュラーエコノミー、Web3などの視察ツアーを行っています。この2つの点の繋がりが見えた気がしました。テクノロジーはあくまで手段である。ただし疎かにしてはいけない。先手先手の道具として、事業で本当にやりたいことにマッチングさせることが重要なんだと。

やられてないことをする(革新的じゃなくていい)

ビジネス関係者から出たアイデアが必ずしもいいわけではない。むしろリサーチが足りてないの方が多いぐらいです。というか人はみんな偏っています。ワークショップで出てきたアイデア、インタビューの回答、界隈での偉い人の課題提唱などは参考にはなってもビジネスになることは稀です。なんでも根底から疑いましょう。仮によさそうでも最低限の機能でまずは一刻も早く世の中に出して検証します。かの有名な米国アクセラレーターY Combinatorのチェックリストでは、製品への質問にこんな問いがあるようです。

恥ずかしいぐらい出来の悪い Version 1 を素早く出していますか?

プロジェクトにまだ創造的なスキルがない場合は、様々ワークショップを体験することをお薦めします。私の場合は、社外コミュニティで様々なものを体験しました。最近だとSGDsの前身MDGs時代から世話になっている今井健太郎さんの新著『クリエイティブ・イノベーションの道具箱』などがお薦めです。

価値のあるモノを多角化させるきっかけとしては、抽象化と具体化を行き来するのもお薦めです。今あるモノコトの中で新しい視野が見つかるのコスパが高い取り組みではないでしょうか。

8月のVUCA Laboで登壇した慶應義塾大学の井庭 崇先生は、PLoPなどのパターンランゲージ国際学会などで活躍される偉大な先生です。私もソフトウェアのデザインパターンやUMLメタクラス仕様などが大好きです。井庭先生はソフトウェア以外でも様々なものパターンにまとめています。私達はそれを学ぶことで、一から調べずに済むのです。それにより本質的な作業に注力ができるのです。
井庭先生には、パターンではなく創造社会に向けて大切な事をいくつも教わりました。その中の一つが「無我の創造」です。

「無我の創造」(egoless creation)とは、自分の身体や感覚を総動員して全身全霊で取り組むが、「こうしてやろう」という作為を生む自我を抜く創造のことです。

そこには中動態というものがあります。一般的には「能動と受動」が対に考えられますが、インドなどでは「能動と中動」が対になっています。「するかされるか」ではなく「内か外か」みたいな表現です。

僕も詳しく理解できてないので、説明が難しいのですが、自分の意思でやるというものではなく、社会や環境、心理的なものと交わりながらなるようになっていく新しい課題を見つけ、それを造り上げていくことです。ケヴィン・ケリーの『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』の中にある一番最初の「BECOMING —ビカミング」と、一番最後の「BEGINNING —ビギニング」がそのイメージに近いのではないでしょうか。

私は昔、MITの石井裕さんから『造山力』について教わりました。実際には、出杭力、道程力、造山力の3つがあり造山力はそのうちの1つです。

「出杭力」(でるくい力)= 打たれても打たれても、突出し続ける力。
「道程力」=原野を切り開き、まだ生まれていない道を独り全力疾走する力。
「造山力」=誰もまだ見た事のない山を、海抜零メートルから自らの手で造り上げ、そして世界初登頂する力。

やるべきことは「無我の創造」について、自らの手で誰もまだ見た事のない山を造りあげることです。そして自分自信と同じ志を持つ仲間達で、一番最初に頂上を目指すのです。

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新しい課題を探し、解決することを繰り返す

「まだ誰もみたことがない」とは、モノやコトではなく課題そのものです。まだ見つかっていない課題を探すのです。そしてそれを解決するのです。
新しい課題を解決するために一番大切なものは「人」です。「人」がいると、「金」や「モノ」が必要です。さらに本気で社会を変えるには、共感や信頼が必要になり、そのためには行政や金融も含めたたくさん人との「ネットワーク」が必要です。
第1回目に登壇してもらった株式会社 BIOTOPE CEOの佐宗 邦威さんからもアドバイスや刺激をたくさんもらっています。この内容はログミーにも掲載されてるので是非読んでください。「8~9人の濃い仲間がいればなんでもできる」という話が特に響きました。実際に自分の周りで成功してきた人達も、そういった雰囲気で繋がっているのをお見かけします。

ログミー1:ベストセラー『直感と論理をつなぐ思考法』著者が語る、VUCA時代を生きる3つのスキル
ログミー2:コロナが変えた人々の意識“資本主義がいったん止まる”ことで見えた新たな潮流
ログミー3:自分を客観視できる人とできない人は10~50倍の差がつく
佐宗邦威氏が説く、自分と向き合うコツ

ログミー4:「外に興味を持つ人」が2~3割いれば組織は変われる
社内アーリーアダプターの役割

ログミー5:人間関係は広くなくても濃ければいい『ドラクエ』に学ぶ、withコロナ時代の仲間の作り方

少し話が変わりますが、昨年、佐宗さんのワークショップをお手伝いしたとき、テクノロジーのアドバイザーとして参加しましたが、自分はそこで技術を使った提案を率先してしまいました。そうではなくビジネス寄りの参加者にわかりやすく伝えるのが自分の役目だったなと後悔しています。佐宗さんの過去3冊の本を読むと、造山力をどのように組織と共感しながら進めていくべきか大まかなイメージがつきます。実際に成功させるには運もありますが、知るだけでも相当な確率アップになるのではないでしょうか。

佐宗さん著書

「分散」には注目すべし

ブロックチェーンから得た知見と、コロナ禍の影響で『分散』というキーワードがとてもホットです。自律分散型組織の中ではティール組織が有名です。そのティールの専門家 嘉村 賢州さんにも過去に講演してもらっています。嘉村さんからは、職業という仮面を被った自分の仮の姿の底にあるパーパスを発見して、その上で自由に力を発揮することが、個人と企業や社会の双方に幸せになることを学びました。そして、人生は、常に宇選択と集中の連続であり、その中には失敗もあることを当然と思うことが重要なのです(=OPTION B)。

また、ロケーションとしても、自分の周りでは都心から地方への移住したり、ワーケーションが徐々に活発になっています。そして、そこに猛烈にチャレンジしているのが、キッザニア東京をはじめ数々のデザインを手がけてきた中川 敬文さんです。現在は宮崎県都農町でまちづくりをされています。もちろんVUCA Laboでも講演していただきました。中川さんの取り組みはnoteをご覧になると一目瞭然です。

これ以外にも、VUCA Labo共同主催の新井 宏征さん、前回登壇したソシオメディアの代表 篠原 稔和さんもコロナ禍前から地方で移住しながら活動しています。また、私の場合は、地元は北海道苫小牧市で、長女と孫は同じ北海道の十勝地方にいます。地元愛も含めて、地方を盛り上げたり、守りたいという気持ちは誰もがもっているものです。
特に新井 宏征さんがいる浜松町はその中でも活発です。先日、Code for Japan代表理事の関 治之さんが「浜松市フェロー」として委嘱されています。そんなこともあり、近々、関さんと新井さんと一緒にカジュアルにお話する予定です。

そして、地方創生とええば、長年このテーマで取り組まれてきた江口晋太郎さんの貢献は計り知れません。

そんな江口さんは先月、元日本銀行金融高度化センター副センター長の山口省蔵さんと一緒に『実践から学ぶ地方創生と地域金融』を出版しました。これは地域金融の観点からのまちづくりについてまとめた国内では初の書籍で、全国11箇所の地域で地方金融が連携して、地方創生を成功させてきた事例が挙げられています。

江口さんはこれまで、市民主体の行動を通じた当事者意識の醸成と地域における包接型社会に向けた取り組みをまとた『日本のシビックエコノミー』や、「都市」の「つながり」を軸にネットワーク理論をもとにした「拡張した市民性」を論じた『孤立する都市、つながる街』などの執筆や事業支援を通して、都市や地域で、行政と民間、金融が連携した事業スキームについての知見をお持ちの方です。

地域にはさまざまな課題が目白押しです。その中には、金融や行政と力を合わせなければ取り組めないものがほとんどです。ただし、限られた資源のなかで先に取り組むべき課題として取り組ませる活動が重要です。そのための力を貸してくれるところから金融は関わるべきなのです。

地方が金融に期待すること

実際、地方の金融機関に期待したいことはたくさんあります。

・プロジェクトファイナンス
・ファンド組成
・信用創造、ネットワーク構築
・創業支援
・事業承継支援
・事業再生支援
・ビジネスマッチング

逆に「クラウドファンディング」や「SIB(ソーシャルインパクト投資)」「地域通貨」などは地方金融を巻き込まずに行うケースがあったのではないでしょうか。地域通貨が軒並みに失敗しているのは、地域に密着している人達との連携不足が原因である可能性が高いと推測します。デザイン次第では、循環する地域経済には地域通貨は強力な武器になるのではないでしょうか。

次回 VUCA Labo セミナーは11月26日開催

江口さんの講演は11月26日になりました。これまで私達がVUCA Laboで得た知見を、さらに金融や行政と連携することで持続可能で循環型のものにできるのだろうか?『実践から学ぶ地方創生と地域金融』の中にある地域金融の11の事例などを伺いつつ、さらに江口さんがこれまで地域で見てきた他の課題や解決についても伺いながら、新たな事業に取り組む手がかりを探求しますので、是非、皆さんもご参加ください。




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