
キムチ漬けと試験前夜
今年の冬、ついに”キムジャン(김장):キムチ漬け”の大役が私に回ってきた。
実はいつも一緒にやってくれる弟嫁さんや他の人達がいるのだが、今年に限って体調不良や用事が重なり参加できない人が続出し、しかも頼みの綱のはずだった義母さえも膝を痛めてしまい戦力外通告を受けてしまった。
だから、実質“私ひとりでやってね〜”状態なのだ。
今年の白菜の数は約60株。
以前150株を3人で漬けたこともあるのだがやばすぎたので、それに比べれば数はそれほどではない。
いや、やっぱりすごい量ではある。韓国嫁業の洗礼だよな、こりゃ。
そして、私はといえば韓国に嫁いで10年以上も経つのに、正直、キムチ漬けの工程なんて全然覚えていない。
毎年のキムジャンでお義母さんといっしょに家族総出でキムチを仕込んできたものの、外国人の私は今まで実質ただのお手伝い兼小間使いだったのだ。
「嫁としてまずいよね」と思っていた。
「いいかげん作り方を覚えないと」とは思ってはいたのだ。
しかし、言い訳に聞こえるのかもしれないけど。
やっぱり義母を筆頭に韓国人の皆様のほうが段取りわかっているし、味付けだって完璧だ。だからこそ、今までのキムジャンでは、白菜を洗ったり材料を切ったりといった準備作業と雑用ぐらいしか外国人嫁である私の出番はなかったとも言える。
でも、今年は逃げられない。
今年のキムジャンは私が担当。どうしても避けられない試験みたいなものだ。もちろん、自信なんてゼロ。
だから今、必死でYouTubeで「キムジャン(김장)」とか「失敗しないキムチの作り方」とか検索して、片っ端から動画を観ている。イメトレ予習大事。
キムジャン(김장)の手順を確認しながら、ふと学生時代の自分を思い出した。あの、計画的に勉強するつもりが、つい誘惑に負けて遊びまくり、気づけば試験前夜になっていたあの頃のこと。
普段はどうでもいいのに、勉強しなくてはならない時に限って、目覚ましのためだけにつけていた深夜ラジオが妙に面白くて耳に入ってきたりする。試験勉強したくなくて、無意味に聞き入ってしまって、気づけば夜が白み始めているあの瞬間。
そして、やっつけで覚えたせいで散々なテスト結果になったのも今ではいい思い出…いや、やっぱり悪い思い出かな。
そんな風に、今回のキムチ漬けも昔のように一夜漬けで勉強をしている。
結局人間そうそう変わらないのだ。
切羽詰まって動き出す自分、今でも健在。
まあ、これも立派な「テスト」みたいなものなのかもしれない。
今まで韓国生活を乗り越えてきた私への韓国食事文化テスト。科目「キムチ」。
さて、予習は万全のつもりだけれど、本番がどうなるかは神のみぞ知る。
ひとりでキムチが無事に漬けられるのか、そしてキムチを美味しく仕上げることができるのか今はまだ謎だが、とにかく無事に終わることを祈りつつ、今週末の“キムジャン試験”に挑む覚悟だ。
ただし、キムチは結果がすぐ見えるのではなく、漬けて熟成させてみて初めておいしいか、まずいかの味の結果が出る。
遅延性の毒ならぬ、遅れて結果が出る試験結果。
はたして試験本番で私がどんな点数をもらえるのか?
そして試験結果、キムチの味はおいしいか、まずいか?
とにかくデカくやらかさないことだけを祈る!