インターンのオンライン化を本気で考える。 【#私たちはつながっている 】
ABEJAでは創業間もないころから学生インターンを受け入れてきました。その数は、長期短期あわせて60人を超えます。
新型コロナウイルス感染症が流行しているいま、インターンの受け入れ方も一から見直す必要があると感じています。
そこで、いままでABEJAがインターンの受け入れをどう行ってきたのか、直近のケースを紹介しながら、人事担当としていま考えていることも書きたいと思います。(文:志積由香子)
インターンの過ごしかた
今年に入ってから、ビジネスや研究開発の分野で、5人が新たに参加してくれました。東京をはじめ、京都、名古屋、鹿児島などで工学や情報学を学ぶ大学生や高専生が、インターンページから応募してくれたり、ABEJAの採用担当が声をかけたりして集まりました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が広まり始めた時期だったので、時差出勤をしてもらいました。
インターン生たちはABEJAでどんなことをしていたのでしょうか。
インターン生には、メンターがつきます。取り組むテーマによってメンターを選定し、今回はLabsのリサーチャーやサービスを開発しているエンジニアが担いました。
取り組むテーマは、本人から、いままでどんなことを勉強してきたのか、何をしてみたいのか、希望を聞きながら、インターン中の業務を決めていきます。本人が持ち込んできたテーマを採用することもあります。
今回のインターンは2-3週間と短いものでしたが、テクノロジーをビジネスに落とし込むためのプロセスや、商用利用を意識したプロダクトの開発、最新の論文から実現したい機能の方向性や技術背景を整理する方法など、メンターの指導を受けながら踏み込んだ内容に取り組んでもらいました。
初日は毎朝開いている朝会で全体に向けてインターン生を紹介し、その後、パソコンを支給して、メンターから業務をする上での基本的な説明をしました。
メンター(右端)とフロントエンドエンジニア(左端)と、システムのUI開発について討論しているメンターの学生(奥)=本社オフィス
ABEJAでは、インターン生たちがその日取り組んだことを日報で報告してもらっています。メンターに聞きたいこと、今日取り組んだけれど解決しなかったことなどを振り返り、メンターからフィードバックを受け、改善につなげていきます。
2〜3週間はあっという間。楽しく過ごせた、だけではもったいない。日報を書いてもらうのは、インターンを通じて自分がどれだけ成長できたか、記録していくことできちんと把握してもらうためです。また、自分がどういう人生を歩んでいくのかということと、ABEJAで働くことの意味をひきつけて考えてほしいという思いもあります。
インターンの1人が書いた日報の一部。
インターンが書いた日報に、メンターが返事を書き込む。
同じ時間を過ごす同世代の存在も刺激になります。インターンがきっかけで、長く付き合える仲間と出会えることもあります。
そこで、メンターも交えてインターン生同士が集まるランチ会を開いたり、インターン生からの相談内容によって適したメンバーを紹介したりしています。
メンターたち(右側)とピザをほおばるインターンの学生たち(左から3人)
取締役COO外木直樹とも1時間会い、ざっくばらんに討論しました。外木から「今のタイミングだからこそコロナと共存する世界を見すえて、社会のために挑戦したいことを仕込むべきだ」と話したり、インターン生たちからの人生の目標に向かうための相談で盛り上がりました。
COO外木(奥)と歓談するインターン生たち=本社オフィス
インターンに参加した学生たちの声
インターンを経て、学生たちは何を感じたのでしょうか。それぞれメッセージをもらいました。
京都大学 工学部 情報学科 豊國郁人さん
インターンで取り組んだテーマ:「顔画像の特徴量分析」
他のインターンと交流する中で、皆さんがより具体的かつ大きな目標をしっかり持っていること、その実現のために目的を持って参加していると知り刺激になりました。
僕は今まで技術寄りの環境に身を置いてきましたが、技術をビジネスに生かそうとする取り組みを目の当たりにできたことが、非常に貴重な体験でした。もっと具体的で大きな目標を据えて、ビジネスのことも学んでいこうと思うようになりました。
名古屋大学 工学部 物理工学科 中野高志さん
インターンで取り組んだテーマ:「Annotation関連技術のサーベイ」
印象的だったのは、メンターの白川達也さん(Labsリサーチャー)の存在です。白川さんは機械学習に精通しているだけではなく、ビジネス視点でのプロダクト開発のアイデアや技術を持ち、高いレベルで実装できる方です。目指すべき人物像が明確になりました。
また機械学習を専門とする人と実務ベースの深い議論もでき、問題解決のプロとのディスカッションを通じた個人的な気づき、高いレベルの同世代の人材に囲まれることで 「自分に足りない力」もしくは「自分だけの強み」への気づきが得られきました。
Arizona State University Computer Science 入学予定 村石愛子さん
インターンで取り組んだテーマ:「Annotationモデル学習&デプロイ自動化システムにおけるUI/UX 設計実装」
ABEJAの社員さんと人生について深く議論できたことは、大変有意義な時間でした。 「人生目標のためのほんとうの意味の原体験を見つけると良い」といったアドバイスや、「ずっと会いたいと思っていた人に会いに行った」などのエピソードです。みなさんのお話を通じて、机上の空論では何も始まらないことを学びました。
私は社会格差をなくしたいという大きな目標があります。これまで優先度が高くなかったボランティア活動に取り組むことを決めました。ABEJAでのインターンを通して原体験を深める必要性を感じるようになりました。
鹿児島大学大学院 理工学研究科 岩丸慎平さん
インターンで取り組んだテーマ:「AI活用におけるPoCパイプラインへの、新規モデルの追加」
ビジネス×テクノロジーを現場で体験したいという気持ちを胸に参加しました。とくに印象に残ったのは、皆さんが「ストーリー」の重要性についてお話されていたことです。
私はこれまでダンスに取り組んできたのですが、表現を考えるうえでストーリーを意識してきました。今回のインターンで、ビジネスやニーズの調査においても、ストーリーが非常に重要なものとして扱われていることを知り、その重要性を学びました。またCEOやCOOと交流できたのは、貴重な体験でした。
東京工業高等専門学校 小渕晴紀さん
インターンで取り組んだテーマ:「特殊詐欺防止電話AlCallの開発」
制作物についての仕様を決める際、メンターの大田黒紘之さんからいただいたお話が印象に残っています。それは、どんな社会問題に、どうアプローチし、どう社会貢献するのか。また、プロダクトを「安定的かつ継続的に提供できるエコシステム」の観点も含めて仕様を決めていくという考え方でした。
こうした視点は、今までの自分の「ものづくり」の思想にはありませんでした。この教えを軸に据え、プログラムの仕様を決めたりテーマに沿って進めたりする際に、商業的に継続可能かどうかを判断する視点を持てるようになりました。
インターンのオンライン参加。未知の領域に本気で入っていく
ABEJAのビジョン「イノベーションで世界を変える」という観点からも、学生が貢献できることが大いにあると信じて、通年で学生インターンを受け入れてきました。
「何のテクノロジーを使うか」ではなく「何のために、どのように使うか」を問い続ける姿勢や、失敗を恐れず情熱を持ってものごとに向き合う姿勢、前に進むために自ら手を動かす行動力は、社会人経験の有無に関係なく人として求められる姿勢であり、それは年齢や経験は関係ないと考えています。
そういう考えから「世の中をよくするためにしたいことがある」という思いがある学生には、密度の濃い体験ができる機会を、とインターン制度を続けてきたのです。
しかし新型コロナウイルスの感染が拡大しているなか、ABEJAのインターンとして体験や価値を得てもらう方法は、オフィスに来ることが最善なのかどうかを一から見直す必要性があると考えるようになりました。
ABEJAはメンバーがコミュニケーションを取りやすいよう、ワンフロアにすべての部署が入っています。また多様な働き方や生き方を尊重できるよう、リモートワークが週2回までできる仕組みを作ったり、オンラインの打ち合わせや会議も以前から当たり前に行われたりしてきました。
そのため、メンバーが一斉に自宅で働くこと自体、大きな影響はありませんでした。これらすべて、社内の管理・IT担当者が地道にリモートで働ける環境を整えてくれたからこその賜物だと思います。
一方で、学生インターンの受け入れは、これまではオフィスに来てもらうことが前提でした。せっかくABEJAで数週間過ごしてもらうのですから、参加したからこそ得られる体験は、やはりリアルが一番いい、とおもっていたからです。
でも、世界は変わりました。感染症の広まりで、オフィスに毎日来るのが当たり前という前提すら揺らいでいます。オフィスに来ない状況で、どうしたら新たな学生への提供価値を生み出せるのかという「未知の領域」を、追求する時が来ていると思っています。
アフター・コロナを見据えて新たなチャレンジを目指す
オフィスに来ないと、社員からのフィードバックをリアルタイムで取り組みに反映したり、会社の雰囲気を肌で体感したりといったインターンの「価値」が提供しにくいのではーー。そんな考え方自体、もしかしたら視野が狭かったのかもしれません。言い換えれば、オフィスに来ることを求めた結果、その枠組みでできることだけ考えて、オンラインでの新しい取り組みを考えることを怠っていたとも言えます。
オンラインのインターンは、これまで参加したくても来られなかった人たちが応募しやすくなる環境をつくり、新しい出会いにつながるのではないか。そんな期待もあります。
「従来と同じレベル」ではなく、いま想像もつかないような「別次元」の濃い体験とは何かを、みんなで考えたいと思います。
企業活動もわたしたちの生活も、これまでの予測が立たなくなるような事態が世界中で生じています。それゆえ、これまでの「当たり前」を再構築し、向き合う問いの設定や実行を、迅速に変えていく必要が出てきていると感じています。
これまでのインターンの受け入れで大事にしてきた「人として何をするべきか」をこれからも大事にしつつ「アフター・コロナ」の世界を見すえた上で、ABEJAが提供することを設計、提供していきたいと思っています。
(※画像にzoomが使われていますが、セキュリティ観点から他のツールの導入を検討しています)
志積由香子(しづみ・ゆかこ)(写真前列左端)
新卒採用支援会社を経て、2013年、社員がまだ1けた台だったABEJAに転職。専門は採用・人事だが、入社直後は資金調達OPS、オフィス移転、営業サポート等、人事以外の業務にも幅広く従事してきた。その頃から新卒採用に成功。以後インターン生、新卒採用を中心に従事し、国内外でのインターンからの新卒採用を推進。組織が 50人から100人規模に移るフェーズで中途採用担当を兼任、1年で約30人の正社員を採用し現在に至る。
志積のインタビューはこちら→「もう、やってられない!」 会社を飛び出し1カ月。 私が世界を旅して見つけたもの