2021年の五大感動本
いま勤めているヤプリのバリューの1つに「感動体験」がある。
僕は年賀状で、その年のオススメ本を書くことが多かった。でも今年からは、感動体験本という名目でまとめていこうと思う。
年をとると涙もろくなると言うけど、自分の場合、全般的に感動しやすくなった。本を読んで「すげぇ」と圧倒されたり、「これは人類皆読めばいいのに」という思いに駆られやすくなった。もちろん泣くケースも増えた。
そういう意味で、感動体験ベースで本をまとめていくと、ちょうどいい整理になりそうだなと思っている。
2021年の五大感動本を紹介する。
嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
僕は34歳だ。自分の小中学生の頃は、日本プロ野球の黄金期の一つだったと思う。掃除当番の男子がホウキで、選手のバッティングを真似ていた。「なりたい職業」でもプロ野球選手が首位だった。野球のテレビ中継も毎日のようにあった。
その時代に巨人ファンとして思春期を過ごした僕にとって、「落合監督率いる中日」の強さは憎たらしかった。素人目にわかりやすい強さというより、不思議に競り勝つ強さだった。
この本は、その頃の中日の内情に迫る。落合監督が、どれだけ特異な思想で戦力を整えたのかわかる。ついでに著者が監督とのやり取りを通じて、新聞記者としての在り方を自問自答するので、読んでいる自分も落合監督と対峙している気になれる。
プロジェクトマネジメントに関わる人や、専門職としてキャリアの築き方を考える人ほど、反省や尊敬の念が湧く本だと思う。
サピエンスの未来
神考察。ひたすら神考察。「この先、人類はどう進化していくのか?」について「進化の歴史」から考察する。20世紀前半の知識人の考察の紹介がメインの本。
で、これはウェブ業界にいる人、みんな読んで損はないと思う。インターネットの進化論的な価値がわかる。考察が正しいかどうかはさておき、自分の仕事の意義を新たに感じることができる。上手くいけば考えるヒントになるかもしれない。
僕は何となく「昔の人ってインターネットとかない分、どこまでも深く考えて、すごい何かに辿りついていたんじゃないかな」と思っていたけど、その通りの人がいたんだなと感動した。
三体III 死神永生
三部作の完結編。IもIIもあちこちでオススメしたけど、IIIもすごかった。スケールの壮大さと納得感の持たせ方が、自分史上最高だった。どこかで「スペクタクルな読書体験ができる」みたいな紹介がされてたけど、ホントその通りです。
人間ドラマ的にいうとIIの方が面白かった。Netflixが映像化するけど、IIのパートが一番人気になると思う。ただIIIはそれを補って余りある超宇宙規模の話が展開される。
三体シリーズは自分のSFのイメージを再構築した。今後「SFを読んでみたいけど、何から読むといいでしょう?」っていう人にまずオススメしていきたい。人類の想像力の果て無さに感銘を受けることができます。
心は孤独な狩人
村上春樹ファンとして、この本を挙げずにはいられない。
村上春樹は翻訳しまくっている。翻訳だけで90冊以上発表している。だが、自身の練度が高まる最後まで、この本の翻訳は取っておいたという。
読んで納得した。村上春樹の原点のような小説だった。この本がなければ、村上春樹作品はいささか違っていたのではないかと思える小説だった。
文体は他の作家の影響の方が大きいかもしれない。だが、物語の構築の仕方や、視点の在り方のような根源的な部分で似通っているように感じた。「愛好する作家のルーツ」に触れられたという意味で感動した。
ただしファンとしての感動なので、不特定多数にオススメするならば、この本は挙げにくい。今年、独立した作品として感動した小説は、カズオ・イシグロ『クララとお日さま』だ。あるいは吉田 修一『国宝』や川上 美映子『夏物語』とも迷ったので、メモしておきます。
統計学を哲学する
データ職種としての、今年の1冊。
大学で◯◯学という学問を専攻することは、世の中に対する視座を手に入れる意義が大きいと僕は思っている。データサイエンスの一分野として扱われがちな統計学も、単なる手段ではなく、視座がセットであるべきというのが僕の考えだ。その方が断然応用が利きやすい。
そして本書では、統計学は何を前提として、世の中をどう切り取っているかを、わかりやすく学ぶことができる。いや、そもそも難しいテーマなので、決して簡単なわけではないけど、今まで世にあった本よりはるかに平明に解説、考察している。
世のデータサイエンス系学部の学生は全員読んでほしい。1周でわかることはないだろうけど、何周もして、自分なりの世の見方を鍛えてほしい。そのために最適な1冊だと思う。
以上、2021年の五大感動本でした。今年もよき本と出会えたことに感謝です。なお本記事はヤプリ Advent Calendar 2021 1日目に捧げます。Happy Reading!
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