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恐怖の扉と好奇心のカギ、とノスタルジー -『Outer Wilds』を遊んで

世界が破滅するような状況になっても22分前に戻れるのだとしたら、自分は何をするだろうか。

Outer Wilds』は22分後に超新星爆発によって滅びてしまう星系に住まう主人公が、この22分間をループできる能力を手に入れたことをきっかけに、この星系に隠された謎を解き明かしていくことになるという、オープンワールドのゲームである。

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様々な謎を解き明かしていくというゲームの都合上、ネタバレがゲームの体験の質に直結してしまう。できる限り物語の核心に近い部分に関する言及は避けるつもりではあるが、そういったネタバレが気になる方は是非先にプレイをしてみてほしい

Outer Wildsの世界

主人公はハーシアンという四つの目をもつ種族であり、「Outer Wilds Ventures」という宇宙探査を目的とした組織の一員でもある。そして主人公は広大な宇宙を調査する任務を務めるために、初めての宇宙船での航海に旅立っていく。

主人公が住まう「木の炉辺」と呼ばれる惑星を含むこの太陽系には、古代に存在していたと思われる「ノマイ」と呼ばれる種族の遺構が数多く存在している。

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主人公や仲間のハーシアンが住まう「木の炉辺」

彼らは数多くの文書を残しており、主人公は友人と共に開発した翻訳機を手に、彼らの残した言葉からこの星々に隠された謎を解き明かしていくことになるのだが、不運にもこの航海の最中、太陽は超新星爆発を起こし周りの惑星もろとも消し飛ばしてしまう。しかし何の因果か次の瞬間、主人公は出発直前の夜に戻されてしまうのだ。主人公は直前の探索の記憶を頼りに、新たな調査を試みることになる。

新米調査員、宇宙を漂う

一通りのチュートリアルが終わった後、プレイヤーは具体的な目的もないまま広大な宇宙をさ迷うことになる。そして大抵は着陸を試みた惑星に宇宙船の機体を叩きつけて、太陽が爆発するのを目の当たりにすることなく一週目のループを終える。

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操作性には癖があって、自分はしばらくの間22分間生き抜くこともままならなかった。
だから初めて22分間の終わりを告げるBGM(通称:蛍の光)が流れて超新星爆発を目の当たりにできた時は少し感動したことを覚えている。

さて何とか機体を不時着させると、今度は個性豊かな惑星がプレイヤーを出迎える。衛星がまき散らす火山弾によって今にも崩壊直前の「脆い空洞」、吹き荒れる竜巻によって海に浮かぶ島々を空中に放り投げる「巨人の大海」、大量の砂が互いに行き来をしている「燃え盛る双子星」と「灰の双子星」、そして惑星というよりかは巨大な植物のツタのように見える不気味な「闇のイバラ」など、どれもユニークな惑星だ。

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「燃え盛る双子星」と「灰の双子星」

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「空洞のランタン」から降り注ぐ火山弾によって、「脆い空洞」は今にも崩壊してしまいそうだ。

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不気味な「闇のイバラ」

しかしエンディングまでたどり着き、こうして感想を書いている私だが、初めて惑星に着陸したときはこう直感した。「俺はこのゲームクリアできないかも」、と。

恐怖との邂逅

率直に言って、私はかなりのビビりだ。小学生のころには『バンジョーとカズーイの大冒険2』というゲームの終了時に再生される悪役の笑い声が脳裏にこびりついて離れず、眠れなくなったことがある。いわゆるホラーゲームなんてもってのほかで、「リトルナイトメア」は操作説明の段で諦めた。

さて、私が『Outer Wilds』において初めてたどり着いた「巨人の大海」と呼ばれる惑星は、名前の通り星全体が巨大な海に覆われている。そのため探査艇を破壊することなく惑星にたどり着くことは比較的容易なのだが、宇宙船の操作に不慣れな私は宇宙空間の勢いそのままに大海に突っ込んだ。

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海、怖っ

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分厚い雲をぶち抜いて、幻想的な宇宙空間から、飲み込まれてしまいそうな薄暗い深海へと一瞬で舞台転換する様は、私の恐怖心を呼び起こすには十分すぎた。


しかし落ち着いてから惑星の探索を始めていくと、徐々にこのゲームの面白さに気付き始める。
恐怖すら感じるほどの自然の驚異の合間に存在する、人工的な遺物の数々。「ノマイ」の残した多くの遺構や文書が、今は亡き彼らのことを教えてくれる。

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彼らの生活、文明、一人一人の性格や関係性。そして秘密…。

それらが様々な謎を生み出し、そしてその謎を解き明かすカギとなる。

生み出された謎はプレイヤーを圧倒する自然の驚異を探索すべき対象へと変容させる。「ノマイ」たちは私に暗にこう呼びかけるのだ。「深海に飛び込め」。

好奇心というカギ

「Outer Wilds」の制作者は、このゲームを「好奇心駆動型オープンワールド」と定義している。つまり、プレイヤーの行動動機が好奇心によって生み出されるようにこのゲームはデザインされている。

つまりプレイヤーは知らないことを知ろうとする、その欲求によってゲームを進めるのだ。ただ何もわからない状態では恐怖でしかなかったものが、好奇心を手にしたとたんに、宝の眠るダンジョンへと姿を変える。
22分間の繰り返しの中で、プレイヤー自身が経験と知識を蓄積し、そしてそのプレイヤーが見る景色を変えていく。

最初の22分間から、恐怖の中に答えはあった。ただ、自分が見ていなかっただけなのだ。

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まさにこの恐怖からの転換がこのゲームの醍醐味でもあり、そして「記憶を消してもう一度やりたい」と言われるゲームたらしめているのだと思う。

孤独と音の道標

このゲームで私が好きな演出の一つに、楽器の演出がある。

主人公は探査のためのレーダーを持っていて、これが受信する信号をもとに、様々な手掛かりをつかむことができる。そうした信号のうちの一つに、すでに宇宙に飛び立っている「Outer Wilds Ventures」の仲間たちの奏でる楽器の音色があるのだが、これが非常にノスタルジックで憎い演出なのだ。

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月を見て望郷の念に駆られる、なんて詩もあったような気がするが、姿の見えない仲間たちが遠い宇宙の星々にいるということを、この楽器の調べは思い出させてくれる。

彼らは別々に楽器を演奏しているのだが、実は同じ曲を一緒に演奏している。実際に彼らはほかの仲間たちが演奏している音を聞いてはいないだろうから、きっと仲間たちのことを想像しながら楽器を奏でているのだろう。
宇宙は孤独で寂しい。

仲間たちのうち最も太陽に近い位置にいるものは、太陽が超新星爆発をまもなく起こすことを知り取り乱す。しかし彼は最後まで演奏することをやめずに爆発に巻き込まれていく。彼は何を思いながら演奏をしていたのだろうか。

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「同じ旅人同士だ、ここに座れよ。ここで一緒に星たちが滅んでいくのを見守ろう。」

終わりに

それでも、怖いところは怖かった。
特に物語上探索が必要になるあるエリアには、何度も泣きを見せられた。
好奇心は恐怖を乗り越える鍵となりうるが、時として命を落とすことになるから、気をつけなければならない。(もしくは22分前にタイムループしよう)

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このゲーム最大の恐怖

今回こうした感想を書くに先立って、様々な考察を読み、大いに刺激を受けた。

今回物語の核心に触れることはしなかったが、そういった話題に触れている考察も面白いので、興味があればぜひ目を通してみてほしい。


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