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人事評価制度で参考にしたい。沢村賞とサイ・ヤング賞の「評価基準と判断材料」

「『入社してくれて、ありがとう』が結果に繋がる。存在承認と結果の関係」でお伝えしたように、経営で結果を出すために、人事評価を行うわけですが、その根幹には「存在承認」がある、とお伝えしました。

さて、大きく話が飛びますが、あなたは野球の沢村賞はご存知でしょうか?

沢村賞とは、1947年に読売新聞社が戦前のプロ野球黎明期において、豪速球投手として名を馳せた沢村栄治の栄誉と功績を称えて制定した賞で、最も活躍した先発完投型の投手に贈られ、日本における投手最高の栄誉として知られています。

現在、沢村賞には、以下の7つの選考基準が存在し、それを大きな指針として、5人の選考委員が中心となって最終決定されます。

【沢村賞・選考基準】
(1)15勝以上
(2)150奪三振以上
(3)10完投以上
(4)防御率2.50以下
(5)投球回200イニング以上
(6)25試合以上の登板
(7)勝率6割以上


近年は、投手の分業化が進み、この選考基準が実態に合っていない、という指摘もあるようですが、いずれにせよ、未だ選考基準という結果数値が受賞に大きく影響しています。

一方、アメリカのメジャーリーグでも沢村賞と同様、最優秀投手に贈られる
栄誉ある賞があります。それが、サイ・ヤング賞です。


では、サイ・ヤング賞の受賞条件はどのようなものでしょうか?

アメリカと言えば、科学的な思考や統計学が際立っており、数値評価が絶対の世界である、と考えてしまいませんか?

となると、サイ・ヤング賞は、日本の沢村賞より数値評価が厳格なのではないか、と想像するのではないでしょうか?


実は、サイ・ヤング賞には選考基準がありません。

どのように決めるかというと、全米野球記者協会各支部から任命された30名の記者による投票で決められるのです。

具体的には、各投票者が上位5人をランキング付けし、上から順に以下のポイントが割り当てられます。

1位票=7
2位票=4
3位票=3
4位票=2
5位票=1


その合計点の最も多い投手が、サイ・ヤング賞を受賞する仕組みとなっています。そして、投票内容は全米野球記者協会の公式サイトで公表されます。

このため、突飛な投票をすると同業者から遠慮なく詰問される上、そのやり取りを記事にされることも多く、同業者の鋭い「突っ込み」に理路整然と返答できるだけの確固たる投票理由がなくてはならない、とのことです。


投票の裏で、各記者は、確固たる理由を理論武装するために、様々な結果数値を判断材料に、投票選手を決定しているのです。

つまり、サイ・ヤング賞は、沢村賞とは異なり、結果数値は選考基準ではなく、選考の判断材料にしか過ぎないのです。

いわば、各記者は、説明責任を果たすために、数値を使った根拠を集めている、と言えるでしょうか。

ここには「単なる数字では、最優秀投手は選べない」という考えがあるようです。

そのため、先発投手しか受賞権利がない沢村賞とは異なり、サイ・ヤング賞はリリーフ投手も受賞対象となります。

かつての長嶋茂雄は「記録より記憶に残る選手」と言われましたが、それに近いものがあるように感じます。

より科学的な思考や統計学が進んでいるアメリカで、このような流れがあり、人に寄り添う日本で、結果数値で判断していることは、大変興味深い内容だと感じます。


但し、サイ・ヤング賞ではその投票結果をオープンにしている上に、その投票の判断材料に結果数値を用いていることは、ある意味、アメリカ流が垣間見え、合点がいくところでもあります。

そして、日本では、結果数値を残しても、沢村賞を一度も受賞できなかった投手がいます。それが、怪物と言われた江川卓です。

受賞できなかった理由は、江川の「人間性」との指摘ですが、選考の評価基準を設けながら、最後の最後で「人」で判定を覆すのは、いかにも日本らしい、と言えるのではないでしょうか。


かなり大きく話が回ってきましたが、人事評価における結果数値の扱い方という視点で、日本の沢村賞とアメリカのサイ・ヤング賞は、どちらも結果数値を使っていますが、その「考え方」と「使い方」が、大変参考になると感じた次第です。

繰り返しますが、人事制度は人材育成の仕組みです。

あなたの会社では、人材育成の仕組みがありますか?
そして、人事評価は何を基準にしていますか?


今一度、自社の経営に合った人事制度とは、どのようなものであるかを考えて頂ければと思います。


以上

P.S.
野球業界に詳しくありません。沢村賞やサイ・ヤング賞についての間違いがあるかもしれません。その場合は何卒ご容赦下さい。

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