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ずっと都会で働かざるを得ない

本日はこちら。

よく詰めて考えると「ムズい」

私の勤務先はまさに東京ど真ん中に立地し、いわゆる大手メーカーのオフィスで働いてきました。自宅から勤務先は全部で所要時間1時間くらいのベッドタウンに住んでいます。

コロナ禍になって以降は、月に数回出社やお客様とのお打ち合わせがあるものの、ほぼ在宅勤務という生活であり、多分今後もそういうワークスタイルが常態化すると思われます。

妻も東京都内のとある会社で営業職をしています。彼女も1時間近くかけて通勤しています。ただ職業柄、彼女の方が外に出る機会が多く、最近は週の3、4日は出勤又はお客様との打合わせです。

子供は現在保育園に預けています。朝は妻が送り、夕方私がお迎えです。通勤時間がなくなった分を1時間前倒しして仕事を開始しているため、定時が16時半、多少残業をしても、私は子供のお迎えに行けるのです。

こうした生活が一巡してくると、当然こんな考えが頭に浮かんできます。

「別に首都圏のバカ高い家賃のマンションに住んでなくても、不自由しないんじゃないか?田舎の安くて広いお家に住んで、そこで子供をのびのび育てるのはどうだろうか?」

妻の仕事についての理解

上述の通り、妻は週に3〜4日は自宅にいません。営業という職業柄、まだまだ現場での打ち合わせというものは頻繁に発生しますし、DXはこれからです。彼女の勤めている会社の旧態依然な状況を責めてもしょうがありません。

それが現実であり、その会社の現実を変更させるには膨大な労力を妻に強いることになります。この会社を変えることの大変さは私もよくわかっているつもりです。

皆さんの中には、「会社はもっと自由な選択肢を社員に用意すべきであり(実際用意できる時代にもなった)、一方で社員もそういう主張を会社にしないと、会社自身もずっと変わらないから、はっきりと言うべきだ」という方もいるでしょう。

確かに正論な部分もありますが、簡単ではありません。そもそも妻がそのことに苦労すべきなのかもわかりません。少なくとも本人はそんな苦労を望んではいないと思われます。

そのようなことで苦労するくらいなら、新しい環境を探す苦労(転職活動)を選ぶでしょう。しかし、今の仕事が決して嫌いな訳でもないですし、少しずつそういう改善も行ってない訳ではないようなので、彼女の意思として尊重すべきかなと思っています。

となれば、現実的には田舎暮らしは望めません。

フルリモートとハイブリッドリモート

一旦、妻の話を除いたら田舎に住めるかどうかも考えたことがあります。

結論しては、それでもやっぱり難しいです。

それはフルリモートか、ハイブリットリモートかで決定的に変わります。私のように月のほとんどはリモートだけど数回は外に出るハイブリッドリモート人間にとって、その数回が致命的になります。

例えば、私が北海道に憧れて網走に住んだとしましょう。そうなると、例えば1ヶ月では、20日稼働のうち15日は網走で在宅勤務です。これは問題なしです。

残り、5日の内訳ですが、例えば・・・

①:9:00〜17:30東京の勤務先
②:10:00〜12:00神奈川の厚木 お客様打ち合わせ
③:13:00〜14:00千葉の幕張 お客様打ち合わせ
④:9:00〜17:30群馬の工場
⑤:10:00〜12:00東京の丸の内 お客様打ち合わせ

このような日程が1週間前くらいに決まります。どうなるでしょうか?

まず時間の問題です。
「①」の東京のど真ん中に出勤するにしたって、朝9時入となれば、とてつもなく早起きするか、前泊するしかないでしょう。

帰路も同様です。「④」の群馬の工場17:30で業務終了、定時上がりしたとしても、乗り継ぎが悪く、当日中に帰れない可能性はあり得ます。そうなるとここでも羽田空港近くで一泊という必要性が出てきます。

はっきり言って非効率です。

それから旅費の問題。多くの会社ではまだ制度設計すらできていないと思います。②、③、⑤あたりは出来たら1日で回りたいですが、そんな都合よくアポイントがハマるのか言えば、実際にはそうはならないです。突発的に明日行かないと、みたいなことだって往々にしてあり得ます。

そうなると旅費を合算したら、東京にウイークリーマンション借りた方が安い、というレベルかもしれません。東京にウイークリーマンション借りていいと会社が言ってくれるなら、良いのですが、会社からすれば、「そこまでしないといけないのなら今まで通り東京に住んでくれません?」と思うでしょう。

オンライン商談ができないビジネス

だったらオンラインミーティング、オンライン商談すればいいではないか?と思うかもしれません。すでに、そうできるものは、ほとんどそうしています。

ただ、例えば、数ミリの小さなネジの小さなネジ山に傷が入っていて、これが致命的な品質的欠陥を発生させていた場合を想定してください。

これをお客様がいる現場打合わせで、お客様から現物を目の前で手渡されたとしましょう。蛍光灯にかざしながらクルクルと回すと、ある一点で確かに僅かな打痕が見えたとします。

これは普通のオンライン商談で使うPCカメラでは読み込めない解像レベルの話です。これを工場で持ち帰り、専用の粗さを計測できる機械に入れると、グラフで確かに凹みを確認できたりしますが、まさかその機械を先方の現場に郵送する訳にいもいきません。

現実的に考えて、現地か工場でしか確認が難しいものがハードを担う製造業では起こり得ます。この時ばかりは現地に訪問せざるを得ません。

オンライン商談は、先方においても、急速にPC やネットワークといったインフラがほぼ間違いなく存在するようになりましたし、ベルフェイスのように通話は電話回線という方法で、会話そのものは担保できる仕組みも出てきました。

しかし、先方に対して「カメラを4Kにまで上げて、しかも、生配信でその画像品質を担保できる通信環境下の中でオンライン商談したい」とは、簡単には言えないでしょう。

網走を拠点にするには以下のいずれかが必要です。
・完全にフルリモートワーク(現場は誰か別の人がやる)
・金と時間をジャブジャブ使って良い(つまり会社が金を出してくれる)

多様性は都会にある(場合も多々ある)

人によっては実家との距離は重要です。例えば、お母さんに子供の世話をたまには見てほしい人はもちろんいます。逆にお父さんの介護が必要という人もいるでしょう。

核家族化が進み、子育て世代の我々の親が都市圏に住んでいることも多々あります。そうなると、例えば親族が全てが首都圏に集合しているのは、かなりの恩恵をもたらしてくれます。

幸いにも私の母方の祖父母は存命で両方とも90歳を超えてます。彼らを支えるメインは当然ながら私の母です。しかし、私の母もまだ現役で働いています。ここで、母も祖父母も同居はしていないものの、お互いに首都圏内に住んでいるので、なんとか面倒が見れています。

おそらく、これがどこか遠くの田舎だったら、別の手立てが必要だったでしょう。実際問題、20年ほど前に母は祖父母を田舎から東京に引っ越させました。

今は老健施設に入ってくれないか、相談していますが、「年寄り扱いするな」と怒られるそうです(笑)・・・それくらい元気でいてくれてありがたいことですが、やはり母としては気がかりです。

しかし、いつまでも2人で生活するんだという本人の意思がある以上、それもまた一人一人の人生であり、尊厳ある生き方として、尊重が必要です。

そうなると、やはり「現状維持」=「お互いに同じ都市圏に住んでおいて、いざとなったら駆け付けられる距離」が適正距離ということになってきます。

まとめ

要するに、例えば六本木に住むメリットはあるか否かという議論は、実はあまり意味がないと思っています。そういう都会の街に一人で住む前提では、突き詰めると、実際に都会に住む魅力や理由を全ては説明しきれない人も多々いると思われます。

実際はある都市の円の中、つまり都市圏にいかに公私共々パートナーや関係者を一つに集められるか、が重要です。もう初めからバラバラなら、或いはバラバラを受け入れられるなら、好きなところで働ける可能性は高いです。

しかし、様々にゆるやかな繋がりが、とある都市圏の中で構築されている人々にとっては、なかなか抜け難い事情があります。前向きな表現であれば、都市圏の魅力がそういうところにある、と言え得るのかなとも思います。

・・・ここまで書いてあれですが、個人的には、そういう現状維持を超えた、一皮向けた考え方を社会が受けれ入れてくれたならと期待します。上述した部分ですが、金と時間をジャブジャブ使える社会です。

メリットがあるかどうかとかデメリットが小さいという理由で都市圏に住むのでではなく、個々人が住みたいところに好き勝手に住める社会、それが一番最高に決まっています。それにはテクノロジーの進歩だけでなく、金と時間に対して寛容な社会が必要なのだと思います。

これに対して「贅沢言うな」と思う人が多数なら、翻って冒頭の「ずっと都会で働きますか」と言う問いには、「ずっと都会で働かざるを得ない」と言うのが、私なりの回答となります。

ということでまた。

#日経COMEMO #ずっと都会で働きますか

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