ゴダイゴ “伝説の” 日比谷野外音楽堂コンサートが遂にDVDとして商品化!(私的解説&宣伝文)
2021年11月24日(水)にリリースされる、ゴダイゴの『西遊記~シン・ミックス~』(UHQCD 2枚&DVD1枚)に、1979年4月8日(日)に行われた “伝説の” 日比谷野外音楽堂コンサート(以下、野音公演)のフィルム映像が収録されることが決定した。ゴダイゴの人気絶頂期のコンサートの中でも、野外会場で暴風雨の中決行された模様は当時の音楽雑誌等にも掲載されたものの、一部分の映像を除き(1979年10月に劇場公開された映画『マジック・カプセル』で、「ビューティフル・ネーム」の野音公演映像が一部分挿入されていた)、公演の音声すら今まで発掘されていなかった。伝説と呼ぶに相応しい公演の映像が発掘され、商品化される。…これは “奇跡” だ!
野音公演が行われた当時の背景を記しておきたい。1979年春のゴダイゴは前年にリリースした「ガンダーラ」「モンキー・マジック」のヒットによってブレイクを果たし、一躍人気ロックグループへと変貌を遂げた。『ザ・ベストテン』(TBSテレビ)、『NTV紅白歌のベストテン』(日本テレビ)、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)、『レッツゴーヤング』(NHK総合テレビ)…といったテレビの歌番組に頻繁に出演し、お茶の間の人気者としても有名になっていた。同公演の1週間前、4月1日には国際児童年の協賛歌「ビューティフル・ネーム」をシングルリリース、これも大ヒット曲となる。
野音公演は1979年春から始まったゴダイゴの日本全国縦断ツアー “セレブレイション・ツアー” の東京公演として行われた。都内でのコンサートとしては同年1月17日、銀座・中央会館でのリーバイス主催「ファッションコンサート」以来約3か月ぶりの開催。人気ブレイク後では初めての都内ワンマンコンサートとなる。
野音公演前後のスケジュールだが、前週4月2日(月)から九州ツアーを敢行し、6日(金)の久留米市民会館公演を終えて7日(土)に帰京。翌8日(日)に野音公演を迎える。なんと8日当日にタケカワユキヒデは、6月に開催予定のModel Production(東京学生英語劇連盟)のミュージカル『THE MAGIC MONKEY(西遊記)』劇中曲のデモテープの自宅録音も行っているのにはただただ驚きだ。そして、公演を終えた翌日9日(月)には新橋・第一ホテルで映画『銀河鉄道999』の制作発表記者会見に出席して、同夜には『NTV紅白歌のベストテン』に生出演。10日(火)からは北海道ツアー…と過密なスケジュールを消化している。
当日の公演の要項だが、4月8日(日)17:00開演、入場料A席2,000円(当日券2,300円)となっている。チケットには座席番号は割り当ててなく、通し番号が記載されており、入場順による自由席だったことが伺える。そのため2日前からの徹夜組が並び、当日の入場者は当時の報道で6,000人~7,000人とも言われている。現在の野音のキャパシティは約3,000人とされており、数字の水増しの可能性は否めないが、風雨にもかかわらず満員だったのは間違いない。リハーサルの時点から強く雨が降り続き、開演は2時間遅れになったという。
演奏中も豪雨は続き、観客はもちろん、メンバーもずぶ濡れで演奏。PAのミキサーや、エレキピアノ&シンセサイザー等のキーボード類が浸水で故障、ドラムに水が溜まり、ギターとベースは弦から感電したというエピソードがある。さらにホーンセクションの演奏者用の楽譜が雨水で滲んで読めなくなり、それはホーンパートの演奏にも影響した。終盤も荒天が収まらず、アンコールをカットして「威風堂々組曲」で終了している。
今回の野音公演DVDに収録予定の楽曲は以下の通り。
①「ガンダーラ」 ②「モンキー・マジック」 ③「銀河鉄道999」 ④「はるかな旅へ」 ⑤「ビューティフル・ネーム」 ⑥「セレブレイション」 ⑦「平和組曲(威風堂々組曲)」。
公演当日の詳細なセットリストは不明だが、その中からのベスト選曲的なセレクションとなっている。今回発掘されたフィルム映像は、まだMV制作が盛んではなかった当時において、宣材映像として製作されたものらしい。実際、当時のファン向けイベントではこの野音公演の映像の上映がされていた実績があるという(1980年1月2日~9日に西武池袋本店で開催された "HAVE A GOOD DAY in GODIEGO LAND" で上映されたとのこと)。その上映フィルムの時点で7曲に編集されたものと推測する。公演当日の全曲が収録されていないのは残念ではあるが、この編集映像が発見されてDVDとしてリリースされるだけでも “奇跡” と言えよう。
リリースに先駆けて、インターネット配信番組『Godiego TV』2021年5月30日と7月21日の配信回で収録映像のいくつかを先行公開している。映像を視聴した個人的な第一印象としては、「予想に反して、演奏が破綻していない」ということ。ゴダイゴに対し非常に失礼な感想かもしれないが、前述の通り悪天候下での楽器・音響の故障などバッドコンディションの中で、よくぞこれだけの演奏を成立させた、バンドとしての高い実力を見せつけられた気がしてならない。そして音質も、モノラル音声ではあるがPAの状況を考えれば、演奏の全貌を十分把握できるものだったと思う。決してすべてが最高の状態とは言えないが、ゴダイゴのコンサート映像としてほぼ最古のものがDVD化されることはとても意義深い。
特筆すべき点として、「銀河鉄道999」の最初期ライブ演奏の映像を収録している点も挙げたい。1979年7月1日にリリースされた同曲は、野音公演の前月である3月下旬に制作・レコーディングをすべて完了している。タケカワが「歌詞を渡されてその日の真夜中に作曲し始め、一晩で作った」エピソードは、トーク番組やライブMCなどで何度も語られているあまりに有名な裏話。当初はレコードリリースされなかった、英語詞のみのバージョンは “セレブレイション・ツアー” のセットリストに早速組まれている。この野音公演での「999」は、ミッキー吉野による間奏がオルガンソロではなくパーカッシブなピアノソロだったり(オルガンの不調があったのか?)、エンディングのリフが2小節多かったりと、その後のライブ演奏とは異なる点を見つけるのも一興であろう。
最後にもう一度書くが、野音公演のDVDリリースはまさに “奇跡” である。当日野音に行けなかったファン、そしてそれ以降にファンになった者にとっては、今まで伝聞でしか知り得なかった伝説の公演。悪条件の中の録音・撮影、そして長らく所在不明だった映像…。それが今、解禁される。11月24日まであと3か月弱…期待は高まるばかりだ!
※以上、敬称略