ひと筆に籠った熱量,理想的な展示空間-[没後30年 木下佳通代]展(-8/18)
8月某日。京都から移動し、大坂滞在。
大阪中之島美術館。
ヤノベケンジ作品がお出迎え
猛暑のなか、ヤノベケンジ「SHIP’S CAT (Muse)」が迎えてくれる。
この猫さんは、全国各地に。銀座シックスでも出逢った。
館内には、同じくヤノベケンジ作品「ジャイアント・トらやん」。
圧巻の、「没後30年 木下佳通代」展
お盆期間。前日の村上隆展では、人混みを鑑賞することとなったが、
ここは、静けさに満ちている。
はじめに書いておくと、圧巻の展覧会だった。特に中盤から終盤。55歳で亡くなった女性アーティストの回顧展。
絵画と「境界の思考」
展示は時系列で、3つの時期に分けて作家の軌跡とその作品を観ることができる。
初期の油彩のなかで、特にこれら2作品に惹かれた。人物を描いていても特に人物を強調しているように見えず、背景にあるものたちを含めてすべてが同じ比重で描かれているように感じられるところが特に興味深かった。
つぎに、大学時代のノートとともに展示されていたのは、
立体の断面と背景の関係性に着目した「内側と外柄」のシリーズ。
「存在」「知覚」「認識」
この年代の作品では、かなりの点数があったなかで特に印象に残ったのは、写真を用いた作品群だった。
「塗り」から「線のストローク」へ
晩年にあたる10年間の作品。
ここでは、強い線、力強いストロークに目が離せなくなった。
大型作品の前に佇む
この企画展すべてに言えることだが、天井が高くゆったりととられたスペースが、抽象的な作品の「余白」となり、より作品に没入することができた。
これら大型作品は、まずその前に立ち、近寄って細部を観てはまた遠のいて全体を鑑賞する、を繰り返した。作品と対話させてもらう、贅沢な時間を得た。
そして、最後の展示室へ。
「描きたいのに時間がない」 -最後の展示室
病を押しながら描かれた、晩年の作品。
広い広い展示室には、ちょうどいい場所に椅子が配されており、キャンバスに描かれたさまざまな「線」と対峙した。
近寄ると、実は画面は立体のようにも見えて、じっと見つめていればいつしか、作品のなかに入り込んでしまう。
ロビーのショップでは、赤を基調とした「'93-CA792」など、印象的なグッズも販売されていた。
作家の想いと、鑑賞した人たちの気持ちが浮遊する。白い巨大な空間は、そのすべてをひとつにして、静かに循環させている。
人生半ばで亡くなったアーティストが、全活動期間を通して放ってきたエネルギーを、それにふさわしい展示環境で、存分に味わった。
この場に来てよかった、と。
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