
ソニックシリーズが抱える「ハイスピードアクション」という問題点について
■自己紹介
皆様はじめまして。あっばあばばぁと申します。
日頃はゲーム制作について勉強し、その内容などを投稿している私なのですが、何を隠そうソニックシリーズのファンなのです。
そんな私が、先日プレイ映像が解禁されたソニックシリーズの最新作「ソニックフロンティア」に寄せる不安と僅かな期待について書いていたら、あまりにも長くなってしまったので「ソニックシリーズの抱える問題点」として分けることにしました。
後編はコチラ。
ただの素人の独り言ですが、時間を持て余してる方はどうぞ。
ハイスピードアクションとは茨の道である。
■ソニックシリーズとそのゲーム性
ソニックシリーズは1991年にメガドライブにて発売されて以降、関連作品が多数発売されている(海外で)人気のアクションゲームです。
初代であるソニック1は圧倒的スピード感とやりごたえのあるジャンプアクション、リング一つ持っていればやられない親切設計、十字キーとワンボタンのみというシンプルな操作性、という3本柱を持って発売され、主に海外で記録的ヒットを飛ばしました。
この3本柱はゲームが3Dになっても暫く継続されましたが、生みの親の一人である中裕司氏の退職以降見直され、「ブースト」という新たなシステムと共に最盛期を迎え、現在に至ります。
こう書くと聴こえは良いのですが、その実は初代ソニック1から既に多くの問題を抱えた、出来不出来の差が激しいシリーズでした。
■初代ソニック1の問題点
ではまず3本柱を一つずつ解説していきます。
①圧倒的スピード感とやりごたえのあるジャンプアクション
ソニックシリーズをプレイしたことのある人なら
「気持ちよく走っていたのに敵にぶつかって萎えた」
「シビアなアクションを要求され、爽快感に欠ける」
という感想を抱いたことはないでしょうか?
これこそソニックシリーズの最大の問題であり命題である「ハイスピードアクションはそれ以外の要素との両立が難しい」ことにあります。
上記の2つの感想も、ハイスピードアクションと「戦闘」及び「ジャンプアクション」との相性が悪いことによって起きています。
「ハイスピードアクション中に急に敵が出てくるので対応できなくてぶつかる(ボスは急じゃないので対応できる)」
「ハイスピードアクションをやりたいのにジャンプアクションばかりやらされて全然スピードが出せない(ジャンプアクション中はスピードを出すとミスしてしまう)」
という訳ですね。
特に初代はこの調整がイマイチで、以降は良くなったり悪くなったりを繰り返しています。
でもこれは問題を解決したわけではなく、スピード-戦闘、スピード-ジャンプアクションについてはプレイヤーを上手く誘導するノウハウを得たという努力の結果なのです。
ちなみに良作として名前があげられるものは、ここの調整が上手くいっているものが多いです。
特に近年の主流であるブーストシリーズでは、敵を障害物ではなくブーストでぶっ飛ばすだけの置物にすることでこの問題を解決しています。
②リング一つ持っていればやられない親切設計
これは一見優しい仕様に見えますが実は一長一短です。
リングを少ししか持っていない時はその恩恵を多く受けられますが、逆にリングを大量に持っている時は急な敵との接触で全てぶち撒けてしまうことを恐れ、自ずとスピードを制限してしまうのです。
しかも初代等作品によってはリングの所持数によってスペシャルステージへの道が開かれるので、より慎重なプレイを要求してしまう設計になっているのです。
これでは折角のハイスピードアクションも名折れですよね。
なので近年ではリングの重要性を下げることや、そもそもブースト中は基本無敵になることで解決しています。
③十字キーとワンボタンのみというシンプルな操作性
これは初代の問題点というよりは特に3D以降足枷になってしまった様に思います。
(バランを見る限り)恐らく中裕司氏の意向であると思われるこの仕様は、3D以降では流石にワンボタンではなくなったものの、なるべくシンプルであるよう努めていた様に見受けられます。
その結果悲惨な結果が生まれた…という程ではないのですが、方針転換後に新たなブーストシステムの発見に至ったことを考えると、自ら可能性の幅を狭めていた様には感じます。
まぁこれそのものはそこまで悪いものではないですね(多少の弊害はある)
■現在のソニックシリーズの問題点
これらの問題点はあくまで初代とそれ以降に続くいくつかの作品の問題点です。
「じゃあ現在はこれらの問題点をクリアしてるんだから良作なんでしょ?」
この返答はYESでありNOです。
というのも近年はまた別の問題点が生まれているのです。
・3D化に際して生じた問題点
猫も杓子も3D化していた当時のゲーム業界では「距離感が掴みづらい」や「カメラが上手く扱えない」、「3D酔い」等の共通問題を抱えていました。
そしてそれらは各社の努力やアイデアなどで、現在ではあまり問題にあがることはなくなってきています。
ソニックシリーズにおいても当然同様の問題を抱えていましたが、ハイスピードアクションというジャンルにおいて、これらはより深刻な問題でした。
「距離感が掴みづらい」という点は敵への移動と攻撃を兼ね備えたホーミングアタックの導入により解決しましたが(これによりまた新たな問題が生じたのですがそれは後述)
特に「カメラが上手く扱えない」問題とそれに付随する「カメラが引きになった結果、スティックをどう倒せば良いのか分からない」という問題が大きく、操作性と相まって「指示されたとおり動かしてる筈なのに死ぬ」という状況が頻発するようになりました。

・ブーストシステムの功績
それまでの3Dソニックシリーズはざっくり言うと「マリオ64と同じ移動方法とジャンプの、スピードを上げたもの」でした。
その結果カメラの問題とソニックシリーズお馴染みのシャトルループ中などで「スティックをどう倒せばいいのか分からない」状況が生まれる様になりました。
これらと先述した幾つかの問題点を一気に解決したのがブーストシステムです。
ブーストシステムとは□ボタン(ややこしさを避けるためPS表記)を押すと、無敵になりながら高速で直進するという車でいうアクセルのようなものです。
これを導入した結果、カメラは必ずソニックの後ろに来るのでカメラ操作の問題もほぼなくなり、必ず直進することからスティック入力の不満もなくなり、更に無敵+高速にしたことで爽快感も得られるという「正にこれこそ求めてたソニックだろ」という画期的なものでした。
・2.5Dの功績
これは昨今よく聞く舞台俳優の総称ではなく、3Dステージ中に2Dステージに切り替わるというものです。
3Dは先を見渡せるため敵との急な接近がなくなる反面、距離感が掴みづらいという問題点があります。
なので細かなジャンプアクション時は画面を2Dにすることでプレイを快適にし、3Dの直進メインのステージとの対比がメリハリになり良質なゲーム体験に繋がるというこれまた画期的なシステムでした。
これら2つのシステムを一気に取り入れたソニックワールドアドベンチャーというゲームは様々な問題点に立ち向かい、方向性を示した超意欲作なのです。
・ボリュームという最大の敵
「こんなに画期的なシステムが生まれて何が問題になるのか」と思うでしょうか。
それはとてもシンプル。「ボリューム不足」です。
ブーストシステムはあまりにも高速で、ステージを一瞬で駆け抜けるので、1ステージのプレイ時間はざっくり5分。
仮に15ステージあって、その半分にボスがいたとしても2〜3時間もあればクリアできることになってしまいます。
ここ数年は「短く良質なゲーム体験」も再評価されてきてるとはいえ、やはり大多数のプレイヤーはそれなりのボリュームを求めるでしょう。
ボリューム不足への対策として、セガはブーストの実装されたソニックワールドアドベンチャー以降、必ず2本+αの柱を立てるようになりました。
ワールドアドベンチャーではウェアホッグという無双的なシステムを。
カラーズではカラーパワーという変身システムを。
ジェネレーションズではクラシックソニックの2D要素を。
フォースではアバターとクラシックソニックを。
かさ増し要因として登場させています。
しかしプレイヤーとしては思います。
「そんなのよりもブーストソニックのステージを増やしてくれよ」と。
そこでもう一つの問題点が浮かび上がるのです。
・ステージという最強の敵
ブーストシステムはあまりにも高速で、ステージを一瞬で駆け抜けていきます。
そしてそのステージは他のゲームのステージよりも圧倒的に長いです。長くしないとすぐゴールに辿りついてしまいますからね。
更にそのステージは立ち止まってみるととても作り込まれていて、ワールドアドベンチャーは十年以上前のゲームとは思えないほど今見ても綺麗です。
これはどういうことかと言うと
「一瞬で駆け抜けてしまうクソ長い3Dステージの背景を作り込んでいる」ということになります。これどういう意味か分かりますかね?
「コスパ極悪」なんです。
2D時代はマップチップというマップのパーツを使いまわして、ステージを量産することが出来ましたが、3Dはそう簡単にはいきません。
特にブーストシリーズはカメラの動き得る範囲が限定されているので、カメラに映らない裏側は作っていないのではないでしょうか?(じゃないと無駄に重くなってしまうので)
なので使い回しは簡単ではなく、ステージを一つ増やすだけで工数が爆増するんですね。そりゃなるべくやりたくはないわ。
なのでソニックロストワールドでは背景のデザインを近年のリアル調から初代よりのトゥーン調にすることで、背景にかかるコストをすこしでも下げようという意図が見られました。
結果このゲームは違う理由で酷評されたのですがそれはまた別の話…
しかしソニックカラーズは変身要素はあるものの、基本的にはソニックだけなのに、各ZONEに7個位?ステージがあります。
これはどういうことか。答えは簡単「2Dメイン」にすれば良いんです。
3Dゲームにおける2Dステージは3Dステージよりは工数が少なく済みますし、足場など比較的使い回しがききつつもステージの印象を変えやすいので、かさ増しに向いてるんですね。まぁ正直しょうがないかなとは思います。
カラーズ以降メインの3Dステージ内の3Dの比率も下がってきているのですがそれもまた別の話なので割愛しましょう。
■ハイスピードアクションとは茨の道である。…それでも…
以上のようにソニックシリーズはハイスピードアクションという唯一無二の存在であるために、非常に険しい過酷な道を進む宿命を背負った悲劇のシリーズなのです。
本来であれば会社の看板タイトルなのですから「総力を徹してハイスピードアクションの気持ちよさを追求していくべき所だろ」と個人的には思うのですが、内部のゴタゴタのせいなのか残念ながら
脚本及びストーリーがクソな時代が10年ほど続く
全然気持ちよく走れないジャンプアクションメインの新作を出す
カラーパワーの変身アクションに味をしめ、毎度ゴリ押しする
元々ただのファンだった人が作った2Dアクションの方が圧倒的にソニックを理解していて出来が良い
等、正直ここ10年でソニックチームに対する期待値は底をついています。
それでも満を持して「ソニックでオープンワールドに挑戦する」と聞いた時には「きっと内部では常に研究を続けていだだろうし、いよいよオープンワールドでソニックを成立させられる手立てが見つかったんだろう!」と思いました(本当に)
何やらゲームのクオリティ管理とかの部署が出来たり?とかそういった配置転換みたいな話もあった気がしたので、とうとうここで本気を出すのだろうと
思っていたのですが!
ダメそうです!
後半へ続く…