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ミラーニューロンを活性化させてパワーリフティングを強くする!

ミラーニューロンは、他者の行動を観察した際に自らもその行動を模倣するために活性化する特別な神経細胞の一種です。この神経細胞が最初に発見されたのは、主にサルの脳内でしたが、後の研究によりヒトにも類似のメカニズムが存在すると考えられています。このようなミラーニューロンは、パワーリフティングにおけるスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの運動様式を学習するためのシステムにおいて、非常に重要かつ中心的な役割を果たしていると考えます。
多くのパワーリフターは、解剖学、脳神経学、バイオメカニクス的な知識が乏しくても上達していると思えます。そして、近年においてその傾向が強く感じられます。このことが起こる要因として考えられるのは、YouTubeなどの動画が(特に一流パワーリフターの動画)がいつでも簡単に観察できるようになったことがあげられます。つまり、動画による模倣学習※が成果を出していると考えます。
(※模倣学習:他者のやっていることを真似すること)

ミラーニューロンの機能がパワーリフティングを強くする理由

【観察と模倣】
他者の動作を観察した際に、その行動に対応するミラーニューロンが活性化します。この過程によって、観察者はその動作を理解し、認識することが可能になり、それを模倣するための基盤がしっかりと形成されます。観察した行為を運動(神経システム)に変換するのがミラーニューロンが行っている[模倣のメカニズム]です。

【運動計画】
ミラーニューロンは、観察した運動を内部的に再現すること[観念運動行為]によって、自らの運動計画を立てるための重要なサポートを提供します。この脳内でのシミュレーションを通じて、実際に運動を行うための準備が整い、運動の精度や効果を高めることが可能となります。
ここではミラーニューロンが観察される行為と実行される行為を同じ神経コードで処理できる特性があるにではないかと考えられています。観察が運動の[コード化※1パラメータ※2]を行っているのです。

※1コード化(coding)とは、情報を別の情報体系に変換して保持し、空間や時間的に離れた点でも「本質的に同じ情報」として再現できるようにすること 
※2パラメータとは媒介変数。

運動系では、運動を計画し、実行する過程に関するパラメータが主に関与します。具体的には以下のような要素があります。
1. (筋力)運動を行うための力の強さや持続力。
2. (運動範囲)関節の可動域や動作の範囲。
3. (タイミング)動作を行う際の正しいタイミングやスピード。
4. (精度)目標に対する動作の正確さや定まったパターンの再現性。
5. (協調性)複数の筋肉や運動部分が連携して動作する能力。
ミラーニューロンは、このような運動計画を観察する行為で運動コード化を実現させます。つまり、視覚情報を潜在的運動行為に直接変換するメカニズムということなのです。

【学習】
他者の行動を観察することによって、自分自身のパワーリフティングスキルを向上させることができるため、ミラーニューロンの活動は競技的な側面でも極めて重要です。具体的には、[よいフォーム]を観察することにより自らのパホーマンスを向上させることが出来ると考えられます。
それでは、「現在の世界チャンピオンは[善いフォーム]である」という定説は肯定されるか?」という問題が起こります。ここで問うている「善い」は「絶対に正しい」という意味です。俗に言う「世界チャンピオン理論」です。答えは「No!」です。選手にはそれぞれの特徴・特性があります。身体的なもの精神的なものです。これらの特徴・特性を見極めて「よい手本」を探し出し、それを模倣する必要がるのです。この「よい手本」を探し出す作業には、解剖学、脳神経学、バイオメカニクス等の知見が必要不可欠となります。つまり、善き指導者は各選手にマッチングした「よい手本」を探し出せる能力が必要である、ということです。この善き指導者は、自身である場合もありますし他者である場合もあります。

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