アリストテレスの「抑制のない人(ἀκρατής, akratēs)」
アリストテレスが言う「抑制のない人(ἀκρατής, akratēs)」は、自己制御を欠いた人を指します。この概念は、彼の倫理学、特に『ニコマコス倫理学』の中で重要な役割を果たしています。「抑制のない人」は、欲望や感情に対して充分な自制心を持たず、内面的な葛藤に苦しむことが多いです。
抑制のない人の特徴
1. 欲望に対する従属
抑制のない人は、自身の欲望や衝動に影響されやすく、それに従って行動することが多いです。したがって、理性に基づいた判断をする能力が制限されています。
2. 内面的葛藤
抑制のない人は、欲望と理性との間で葛藤を抱えています。彼は倫理的に正しいと知っている行動を選ぶことができず、自分の欲望に屈することによって、後悔や自己嫌悪に悩むことがしばしばあります。
3. 行動の不安定性
自己制御が欠如しているため、行動が不安定で、状況に応じて変わることがあります。彼は、一貫した倫理的判断や価値観を持つことが難しくなります。
4. 倫理的な責任の難しさ
アリストテレスによると、抑制のない人は道徳的責任を持ちつつも、自己制御の欠如により、真に適切な行動をとることができません。このため、彼の行動に対して責任を問うことに対して複雑な問題が生じます。
まとめ
アリストテレスの「抑制のない人」は、理性に従うことができず、欲望や衝動に駆られて行動する人々を指します。彼はこのような人々が持つ内面的な葛藤や倫理的な責任の問題を考察することで、自己制御や道徳的徳の重要性を強調しています。抑制を持ち、理性的に行動することが、より良い生活と真の幸福に繋がるというのがアリストテレスの見解です。