白銀選書〜1月のAoyama Book Colors〜
Aoyama Book Colors、それは青山ブックセンターコミュニティー支店による色々選書。本屋さんで出会って大切に読んできた本を、毎月メンバーのコメントと共に紹介します。
少し暖かい日が続いています。渋谷駅を降りてABCへ向かっていると、夏は日陰がなく冬はビル風に吹かれ、季節を感じがちですよね。さて、今回のカラーズは「白銀選書」です。
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1、鈴村温『Same Pose』(さりげなく)
最初から最後まで、いろんな動物がいろんなポーズをとっている。その表情はどこか誇らしげだ。
見開きの両ページに配置された左右対称の絵は、人が向かい合っているように見える「ルビンの壺」を彷彿とさせる。トリックアート的でもあり、やはり動物たちがただ踊っているだけなのである。
気が付くと手も足も投げ出して、彼らと同じポーズをとろうとしていた。
装丁:古本実加
印刷:シナノパブリッシング
選書:松下大樹
2、レン・フライス著・林央子訳『エレンの日記』(アダチプレス)
フランスの雑誌編集者エレン・フライスの日記エッセイ。
自身の感受性を信じて雑誌を作る編集者の人々との交流、世界各地への旅がつづられている。
日本へも来ており、著者から見た日本の景色を読むのも面白い。
装丁:須山悠里
印刷:シナノパブリッシングプレス
選書:岸本晃輔
3、ラニー・バッシャム著・藤井優訳『メンタル・マネージメント』(星雲社)
普段ならできるのに本番で力が出せないという時はありませんか?
ライフル競技で普段勝てていたところ、オリンピック当日に負けてしまった経験を持つ著者がオリンピックの金メダリスト達にスポーツの精神側面の話を直接聞いて実践して、金メダル取りまくったお話です。
例えばお子さんにかける言葉も含めてちょっとした差。『転ばないないように歩こうね』よりも『まっすぐ歩こうね』にすると望む状態になっていく。10年以上前に手にした薄い本ですが、ギュギュッと大事なことが詰まっていて、ときおり読み返します。
選書:まーちん
4、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著・倉橋由美子訳『新訳 星の王子さま』(宝島社)
とっても有名で熱烈なファンも多い物語。一つの訳(やく)を安易にオススメしないほうがいいだろうか、とも思ったのですが… やっぱり私はこの新訳がけっこうすきです。
ほかの翻訳版がお手元にあるひとは、一字一句の読み比べとまではいかなくても、みんなの“キャラ”の差や舞台構造の大きな違いに気がつくと俄然楽しくなると思います。(訳者あとがきを先読みする派の人もこの本では通読後に読んでほしい…!)
二冊目の「星の王子さま」として本棚に迎えてあげてください。
選書:山田晴香
5、和山やま『夢中さ、君に』(KADOKAWA)
ネタがシュールで、独特で、今一番ハマってる漫画家さんです。“実は心根の優しい不良”を描くのが上手!
選書:須藤妙子
6、三角みづ紀『よいひかり』(ナナロク社)
1ヶ月のベルリン滞在中に綴った旅と生活の詩集。各詩のタイトルも「スーツケース」「二階建てバス」「洗濯機」「フライパン」など、異国で過ごした日々を彷彿させる。
三角さんの詩は、難しい言葉もなければきらびやかな言葉もない。淡々と、シンプルに心に語りかけ、そしてすごく映像的で、読みながら作者と同じ情景に浸れるところが好きだ。
「自分という存在が息をひそめてようやく、あたり一面に詩があふれていることに気づく」とあとがきにあるように、日常風景のなかでの細やかな気付きや心情の変化が味わえる一冊。さとうさかなさんの鮮やかな装画が目をひく表紙にも注目。
装丁:服部一成
装画:さとうさかな
選書:Ayana Suzuki
7、今和泉隆行『「地図感覚」から都市を読み解く: 新しい地図の読み方』(晶文社)
地図は現在地から目的地に行くためのツール、と考えがちだが、実はそれだけじゃない。
地図にはまるで年輪のようにその都市が発展してきた歴史が刻まれ、そこにはそれぞれの物語がある、という概念をこの本は教えてくれる。
GoogleマップやYahoo!地図といったオンラインでの地図と、昭文社の都市地図などの紙地図との違い、使い分けといったUIUX的な視点から、旧市街、新市街地の構造の違いといった歴史文化的な視点まで、とにかく作者の地図に対する視野の広さ、そして地図愛の深さに終始心を持っていかれる。
点、線、面を超えて地図からこんなにもたくさんの情報が読み解けるのかという、読了したあとの感動をぜひ味わってほしい。
装丁:MIKAN-DESIGN
選書:Ayana Suzuki
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暖かくなって今の状況も落ち着いてきたら、本屋で買った本を片手にいろんな色を探して出掛けたいものです。次回はチョコレート色を選書します!
文:松下大樹