花見じゃなくて本見をしてみた
寒さも和らいできた頃、コミュニティーのみんなで花見をしたいね、という話をしていた。桜の木の下で待ち合わせ、持ち寄った本を肴にお酒を飲む。最高じゃないか。
舞い散った花びらがページに挟まり、いつかまた同じ本を手に取ったとき、ひらりと思い出に触れて……
でも、叶わなかった。
外出自粛の中、ふと思い出したのが本棚の話。以前、メンバーで交流会をした際に、自宅でどんなふうに本を収納しているかで盛り上がった。
いわば、一人ひとりが自分だけの棚づくりをしている。この本の隣にはどの本を置くか、限りあるスペースでどのように並べるかなど、本棚には自然とその人らしさがにじみ出る。これは眺めるに値するのではないか。
本は紙、紙は木。今年は花ではなく本を愛でよう。こうして企画されたのが、オンライン飲み会「本見」(棚見)だった。
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3月29日、急な呼びかけに集まってくれたのは6名—待ち合わせ場所は自宅の本棚。徐々に増え、最終的には9名になった。
簡単な自己紹介のあと、本棚紹介へ。やってみると分かるが、これが意外と恥ずかしい。自分でも意図せず並べているところがあったりして、心のやわらかな部分を差し出しているような気持ちになる。でも、みんな本が好きって部分では同じなので、さらせばさらすほど安心していくような不思議な感覚もあった。
一言に本棚紹介とはいえ、本当にさまざまだ。一方で大きめの本棚にまとめて収納し、他方で何箇所かに分けてしまっていて。分けてる派は若干の移動も伴い、芸能人お宅訪問さながらの臨場感があった。
画面の向こうで雪崩を起こす本
棚の上に整然と積まれた本
インテリアに溶け込んだ本
実家で掘り起こされた懐かしい本
「あ、それ。うちにもある」
「その黄緑の文庫って何?」
(見切れる猫)
「このサイン本見てください!」
「本棚ないので、ウォークインクローゼットに入れてます」
同じコミュニティーのメンバーでもいろんな本を読んでいて、本棚を通していろんな人生に触れられた気がした。みんなの頭の中にお邪魔した気分だ。それが本当に心地よくて、ずっと留まっていたかった。
もしかすると、ここは新時代のブックバーなのかもしれない。自宅にいながら、本棚を介してゆるやかにつながることのできる場所。本好きがいてオンラインツールさえあれば、世界中どこにでも生まれる場所。
退出ボタンを押したら、静かな夜が戻ってきた。残ったのは、手にした本のぬくもりと、大量の買いたい本リストだった。
—次はいつ会う?おうちの本棚で待ち合わせ、ね。
文・イラスト:松下 大樹
編集:増田 ダイスケ
ヘッダーデザイン:鈴木 ユースケ
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