万象は光と影で彩られる
朝の散歩
言葉の切れ端を
拾い集める
三軒隣の庭先に咲く
一茎の立葵
挑むように
照りつける太陽に向かって
這い上っている
隣の家の玄関横
涼しげに泳ぐ金魚たち
水面はきらきら日差しを反射する
そういえばと
記憶を手繰る
幼い頃
お祭りの夜店で掬った金魚たち
我が家でもしばらく
目を楽しませてくれた
一緒に泳いでいた水中花は
どうなってしまっただろう
水面の揺らめき
金魚の尾っぽ
水中花のゆらゆら
万象は光と影でできている
葉月が近づいてくる
強い意志をもって
光とともに葉月はやってくる
葉月の強さは
万象のカタチを変える
山の滴りは
夏の訪れを喜んでいるが
アスファルトのかげろうが
カタチを変える
どこかでお経の声がする
盆入りの準備するのか
老媼が畑に
きゅうりとなすを収穫する
精霊馬は
父を無事送り迎えしてくれるだろうかと想いを飛ばす
天と地
過去と未來
万象は繋がれている
葉月はカタチなきものも
呼び寄せる
カタチを見ずに影を見る
カタチを見ずに光を感じる
葉月はそんな季節ではなかろうか
先祖と繋がりは
今に脈々と受け継がれる
朝の散歩は
言葉拾い
集められた言葉の切れ端を
手のひらにそっと置く
影があるから
光は輝きを放つ
目にはさやかに見えぬもの
なくさないように
心に留める
ジリジリと
油蝉が鳴いている
地上に出て
日を浴びてから
たった1週間の命に
巡り合う奇跡
こうして
生かされている奇跡
万象は
光と影に彩られている
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