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台風さん、速度あげてさっさと過ぎ去ってくれませんかね【ゴミ収集車の運転席からお送りします】
台風が自転車並みの速度で日本列島に接近してるという。自転車並みて。せめて立ちこぎして速度あげんかい。
というのもゴミ収集に雨は天敵である。真夏の太陽にも文句は言うが、そんなのツンデレみたいなものなのだ。できればカッパ着てゴミ収集なんぞしたくない。
カッパは雨を防ぐ物なのだが、気休めにしかならない。作業員は一軒一軒ゴミを収集して身体を動かしている。めちゃくちゃ汗をかくのだ。カッパの中で蒸れて、スチームサウナの中で仕事をしている感じになる。結局、身体は濡れるのだ。
長靴も同様だ。雨や汗がズボンを伝って長靴の中に溜まる。びちゃびちゃだ。収集がひと段落つく頃には、靴の中が池になっている。どうせ濡れるならと、雨具を着用しない強者作業員もいるくらいだ。
雨対策は作業員それぞれ個性が出る。雨具は着たくないけど、ゴミ袋が雨で濡れているからカッパのズボンだけ履く人、長靴は歩き辛いから安全靴に変える人、視界が悪くならないよう帽子だけ被る人。持ち物を用意している姿はみんなげんなりしている。雨が降る中で収集するのが好きで好きでたまらないわ、っていう人はあまり会ったことがない。
そんなしょぼくれた作業員を、ワシはゴミ収集車に乗せて現場に向かう。赤信号で止まり助手席を見ると、作業員は両肘を太ももに乗せて背中を丸めていた。その姿は「あしたのジョー」だ。ちょいちょい、収集始まる前に真っ白に燃え尽きないでおくれい。
まあでも心配することはない。彼らは、やる。
収集現場に着いて土砂降りの雨に降られても、ゴミを積んでちょっと時間が経てば作業員の動きが変わる。ゴミを掴み、投げ入れるリズムが良くなるのだ。
一度動き出せばやる気や集中力が湧いてくる。それはまるでマラソン選手だ。最初は走るのが面倒くさくても、走っているとラクになっていく。ゴミの収集作業員もそう。ランナーズハイならぬ収集ズハイだ。雨粒も、カッパの中でこもる生暖かい空気も、濡れた下着の感触も、気にならなくなる。
神経を集中するのは目の前のゴミ。たとえどんなゴミ袋の山が立ちはだかったとしても、ひとつでも積めば仕事の終わりに近づいていくのだ。雨に打たれながらでも、懸命にゴミと戦うのだ。
そうして作業員がふんばって積むから、雨の日でもゴミは普段通りに収集される。台風が来たからって、可能ならばワシらは出撃する。ゴミから逃げない。それがワシ達の仕事なのだ。
さてと、そろそろワシも雨具の準備をしようかね。シャンプーで頭を泡だらけにしとけば、仕事が終わる頃にはさっぱりしてるだろう。
じゃ、行ってきます。それでは、また。
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