フォロワーシップの根源にある「自我システム
フォロワーシップ研修
先日、某大手機械系メーカーの管理職研修の一コマとして「フォローシップ研修」を実施しました。その中で、日本のフォロワーシップの第一人者の同志社大学松山教授が提唱するフォロワーシップ論に基づき、「自我システム」について探求するフェーズを設けワークショップを展開しました。
本稿では、その一部をご紹介しながらお話を進めます。
自我システム
自我が確立しているか否か、それは誰にも判断できないものです。しかし、この自我システムというものが何かの拍子に作動します。例えばそれは、組織に属し方針などにふれた時、上司からの指示や命令を受けた時、などなどの場面で作動します。
上司「この企画書、いつもの手順で纏めといて!」
部下「はい!分かりました!」
なんの疑いも持たずにその指示を受け入れ行動を起こす。
これも、自我システムの一つが作動した結果であり、「従我」という「自我」の一種が作動します。
何の疑いも持たずに、上司の指示に従っている自分。まるで、条件反射のごとく行動を起こします。
従我
この指示を受けた時に、自身の内面において何らかの違和感を懐いている。しかしやがてそれは、喉元を通り過ぎるように消えてしまいます。
後日、この指示通りに企画書をまとめるのですが、クライアントの要望に沿わない内容となり、上司の指示に従って作成した自分に多少の情けなさをもちながらも、やり直しをします。
また、多少の後悔のようなものも生まれると同時に、上司に対する怒りの感情も懐くことになります。「なぜ、もっと丁寧に指示をしてくれなかったんだ!」
こんな日常のちょっとしたやり取りの中で、「従我」が作動し、自分の意図せぬ方向に自我システムは確立されていきます。
観我
やがて、上司からの指示に対して「客観性」をもって受け止める自分に気づきます。上司からの指示に対して「従我」=従う自分と、自身を客観的に眺め観察する自分=「観我」が芽生えます。
上司の指示を鵜呑みにせず、受け止め理解し、疑問や違和感があれば言葉にしてみる。自身の内面や感性を信じ上司に対して自分の意見を主張し、問い掛けてみる。
このような行動の積み重ねが「観我」を育てます。
従我と観我の重なり
この「従我」と「観我」を重ね合わせ、それぞれの人間関係の中で自身の意思で発動させていくことの積み重ねが、フォロワーシップを育てることになります。
フォロワーとしての発達段階であり、「従我」と「観我」が発達し重なりあうことでプロアクティブ型フォロワーとして成長します。リーダーになるプロセスとも言えます。
注意が必要なのは、上司の「従我・観我」が育っていないケースです。上司の「従我」が盲目的なもので、疑いもなく組織の論理に従っている。当然、「観我」も育っていませんので、その指示は組織として継続的に続いているもので、「改善」されていない。
関係性マネジメント
自身の「従我・観我」を育てるということは、相手の「従我・観我」を観察し相手を知り、不足部分をフォロワーシップを発揮して埋め合わせていくということです。
相手の不足を自身の出来ることで埋め合わせることで、自身が成長できる。この関係性マネジメントが肝になるということです。
ただし、自我システムは使い方を間違え、バランスを崩すと「エゴ」として認知されてしまうので、注意が必要です。
いずれにしても、自身の「自我システム」のクセに気づくこと、自身を観察すること、内省することがフォロワーシップ発達の出発点となります。