フォロワーシップを活かしたこれからの企業経営と労働組合の立場
労働組合への関心
この一年、春闘による賃上げ、ストによる資本経営への抵抗など、労働組合に注目が集まっている。
では、労働組合が組織内に存在している事は、企業経営にとってプラスかマイナスか?その答えは、企業経営者、従業員の双方がフォロワーシップを活かしているか否かで左右される。
昨今の企業経営の傾向
企業経営者は、人的資本経営、個を活かした経営の名のもとに、人事や組織開発面において取組みを進めている。「エンゲージメントが生産性を左右する」となれば、無視できない経営テーマとなる。
一方で、従業員側はその取組みの前提になるキャリア自律を迫られ、自身のキャリアを見つめ直し、リスキリングや学び直しなどに取組むなど、改めて所属する会社のミッションや経営方針などに関心を示し、自身のキャリアビジョンを描こうとしている。
労働組合に出来ることは何か?
では労働組合は、この経営者と従業員の取組みの間に立って何が出来るのだろうか。取組みに必要な制度の導入を検討する。導入された制度の運用面に目を光らせチェックし課題などを吸い上げ適切な提案をする。
経営者は人的資本経営を実践することで結果として生産性が高まることに期待する。一方の従業員は個を大切にしてくれることに期待し、成果よりもプロセス重視となる。このような立場の違う人たちが組織内でどのように共存していくのかが、鍵となる。その鍵を握っている調整役としての労働組合の存在価値がある。
調整とは幾分消極的な印象を受ける言葉であるが、実際には従業員から経営者に提案する事、経営者の決定した方針を従業員に翻訳して伝える事など、人的資源を最大化し組織を創造的に導いていく積極的な行為である。
日本の労働組合は、欧米では一般的な産業別や職務別の運営体ではない。企業内労働組合としての活動が基本となっている。それ故、労働組合の役員は経営者と、本来の対等性をもって対峙することがやりにくい側面をもっている。
労使対等の原則があったとしても、経営者の顔色を伺うことになる。経営者も従業員を大切にした経営を行うことを主眼にしているが、株主への対応などが思考的に優先され、本来の持続可能な経営のあり方を見落としてしまう。
企業経営に必要なフォロワーシップというエッセンス
このような現実がある中で本来の労使関係が創造的であるために必要なエッセンス、それがフォロワーシップである。
企業経営においてフォロワーシップをどう解釈するか、それは全員がフォロワーであるという事実である。
・経営者は、市場や株主に対してフォロワーシップを発揮する立場である。
・従業員は、組織や顧客に対してフォロワーシップを発揮する立場である。
・中間層は、組織にフォロワーシップを発揮し、そして従業員のフォロワーシップを引き出す立場である。
・労働組合は、従業員を代表して集団的フォロワーシップを発揮する立場であと共に、中間層や経営者のフォロワーシップを補完する立場である。
組織に所属する様々な立場の人たちに共通するものそれが、フォロワーである事。そして一人ひとりがその立場でフォロワーシップを発揮する事。
リーダー善とすることは大事なことだが、その前に組織メンバーとして公式に認められている役職を超えて、一フォロワーとして自分に出来ることを発信していくことが関係性を良好なものにし、一人ひとりがこの低成長時代を、自分を成熟させながら生きていくことになる。
時に従属的なフォロワーになることもあり、時に破壊的な行動をするフォロワーになることもあり、時に全てに消極的なフォロワーになることもある。しかし、フォロワーシップが何たるやをそれぞれの人が理解し、お互いにフォードバックをすることで支援し合える関係性になる。
これらの取組みを推進するにあたって、従業員を代表している労働組合がその任を担う最有力であることは間違いない。