[読書感想文]神秘/白石一文
「えぐい」しか出てこない。
いろいろと衝撃すぎて頭が追いつかない。
だらだらと読んでいてようやく下巻に辿り着き、勉強の息抜きに続きを読もうと思ったら一気に物語が展開されて頁を捲る手が止まらなくなってしまった。
「この人物がここでくるのか!」とか「これがこれに繋がるの?!」が連発して、解説にも書いてあったがあれよあれよと人間曼荼羅が出来上がってしまった。
始めから終わりまで一貫して考えさせられたのは死とは何ぞやということで、解説を読んで納得した。白石一文は癌について考えさせられる出来事を経験していて、癌治療についての考え方が随所に書き表されていた。
なんとなく「今」読んだけれど、偶然ではなく必然として22歳の今の私が読んだのだろうなと思わされた。
生まれた瞬間に人生の全てが決まっているのではないかと思うことがあります。宿命論。そう考えてしまえば楽になる。何も自分を責めたりせずに流れに身を任せるような、なるようになるさの精神を持って。
たとえば嫌な人に出会った時でもこれからの私にとって何かプラスになる事を教えてくれるのかもしれない、と全部必要な出来事なんだと考えるようにしたら楽になる。
なるほど私はそういうふうに考えていたのかと本を読んで整理されました。
読んでいる途中で、これは事実なのか小説なのかわからなくなった。ありえない事象が展開されているはずなのにどこかにリアリティがあって、事実もあって。
久しぶりにとてもテンションが上がる小説に出会った。
ふと、本を読む行為ってギャンブルと近いのではないかと思った。
絶対に当たりだという保証はどこにも無いし、他人が当たったとしても私が当たるかはわからない。
途中まで面白くなかったのに辛抱強く待っていたら大当たりなこともある。
ギャンブルをやったことは無いからちょっと表現が違うのかもしれないけれど、中身を知らない本を読みたくなるのは大当たりを引く可能性を見込んでいるからだと思ってしまった。
でも絶対にギャンブルと異なる点は本を読んでも何も失わないことですね。
なんにせよ『神秘』は私にとって大当たりでした。