2022年6月から義務化!公益通報体制の整備とは?
公益通報者保護法が改正され、2022年6月1日に施行されました。
これにより、対象事業者は、公益通報対応体制を整備する義務を負うこととなりました。
自社がこの義務の対象なのか、どのような体制を作ればよいのか、不安に思う担当者もいらっしゃることと思います。
そこで、ここでは、対象事業者についてや整備すべき内容について、整理していきます。
1 対象は、301人以上の労働者を有する事業者
改正法が体制整備の義務対象事業者として規定するのは、常時301人以上の労働者を有する事業者です(同法第11条第1項、2項)。
中小企業(労働者300人以下)に関しては、現段階では公益通報対応体制の整備は努力義務にとどまっています。
しかし、経営上のリスクを早期に発見、是正するためには、通報対応体制の整備は、有効かつ重要です。
複数の事業者が共同して、外部の法律事務所等に通報受付窓口を委託することもできるので、「うちはまだ関係ない」と思わず、ぜひご検討ください。
2 整備すべき内容
上記のうち、①~④の内容は次のとおりです。
以下の点に留意しながら、運用規定を定める必要があります。
3 ①従事者を定める
*窓口を設置して従事者を定めましょう*
事業主は、内部公益通報に関する対応業務を行う者=「従事者」を定める必要があります。
この従事者は、窓口における通報の受付、受け付けた通報内容の事実の調査、是正措置の検討や整備を行う役割の全部又は一部を担います。
従事者は、対応業務の過程で通報者を特定する事項について伝達を受けますが、正当な理由なく当該特定事項を漏らしてはならない義務を負います。
この従事者については、書面によって指定するなど、従事者となることがその本人に明らかとなる方法で定めなければなりません。
窓口として対応する従事者については、独立性を確保することが重要ですので、外部の法律事務所に委託する方法も有用です。
4 ②通報対応体制を整備する
*通報を受理する際の体制、フローを整えておきましょう*
体制整備においてとらなければならない措置は次の4つです。
いざ、通報を受けたときに慌てないようにするには、特に、調査する体制として、
✔︎ 調査チームをどのように組むのか(聞き取りに慣れた人物、事案に詳しい人物を含めるとすると、誰が適切かなど)
✔︎ 調査チームが組織の長や事案関係者等から独立性を保つためには、どのようにチーム組成すべきか(事案ごとにチームを作るのか、基本チームを作っておいた上で事案関係者がチーム内に含まれる場合のみ別の者と交代させるかなど)
✔︎ 調査の方法として、どのような証拠をどのように収集するか
✔︎ 是正策を検討するのは、調査チームと同一チームか、別チームか
✔︎ 予算はとれているのか
など、様々な点を検討しておく必要があります。
窓口としての従事者について、外部の法律事務所に委託した場合でも、実際に調査を行う際は、社内の担当者との連携も重要です。
5 ③通報者保護の体制を整備する
*不利益な取扱いが行われないよう周知することも大切です*
通報者が不利益な取扱いが行われないようにするために、以下の体制を整えましょう。その上で、従業員に対する周知も行いましょう。
*通報者が特定されないような工夫が必要です*
通報者が特定されないことは、不利益な取扱いが行われることを防ぐために重要なことです。
以下の体制を整えましょう。
通報者が特定され、不利益な取扱いを受けるおそれがあれば、通報すべき事案を知っていても、通報することをためらってしまいます。
法令違反があれば会社として早期に認識して対応することが、健全な会社経営のためにも、レピュテーションを維持・向上するためにも大事なことです。
会社で働く者が法令違反を知ったときに通報しやすくなるよう、通報者保護の体制整備は重要です。
匿名での連絡ができる専用のシステムを取り入れるなど、匿名通報の仕組みを整備しましょう。
また、通報事案に関する記録へのアクセス権者は限定する必要がありますが、そのセキュリティ対策も検討してみましょう。
6 ④通報対応体制が実効的に機能するための措置をとる
*体制が機能するような教育を行うとともに、定期的な見直しも行いましょう*
消費者庁の「公益通報者保護法に基づく指針」(令和3年内閣府告示第118号)では、以下のa〜gを行うことが必要とされています。
書面で通報を受けた場合、20日以内に通報対象事実について調査を行う旨を通知しない場合や、正当な理由なく調査を行わない場合、報道機関などの外部に対して通報が行われる可能性があります(同法第3条第3号ニ)。
会社としては、書面での通報を受けたときには速やかな対応をとるようにしましょう。
7 まとめ ~体制の整備に取り掛かりましょう~
まだ公益通報の窓口整備が整っていないという事業者の方もいらっしゃると思います。
当事務所では、窓口整備の初期段階からご相談を受けることができますし、もちろん窓口として対応することもできます。
中小企業の場合でも、健全な経営を継続する上で有効な制度ですので、複数の企業と共同して窓口を設置することも、ぜひ検討してみてください。