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『生滅の流儀』ー松永久秀ー(『戦国の教科書』6限目 より)

タイトルだけみれば、ビギナー向けなのかな、と思える1冊

ところが、読んで見事に騙されたことを知る(笑)

玄人をも唸らせる短編が収録された、ガッツリ・クオリティなアンソロジー本、それが『戦国の教科書』

そのテーマについて書かれた短編集に始まり、テーマ解説があり、テーマを学べる他の本紹介(ブックレビュー)という構成。

日本史(歴史小説)初心者が入るにはやや難しいかもしれないが、飛び込んだら、その不思議な?魅力に引き込まれてしまうこと請け合い。

本書にて、その魅力を存分に感じ取れるはずだ。



ブログでは、本全体と各短編についての感想記事を更新した。

ただ、短編ごとについては、その感想をもう少し書きたいなあ、という思いから始まったシリーズ記事。

この記事は6限目の短編について。

本書の最後を飾るのは今村翔悟。

テーマは武将の死に様

収録作品は松永久秀を描いた『生滅の流儀』だ。

奈良の焼き討ちや将軍暗殺など数々の悪行を重ね、戦国時代の悪人と称される松永久秀。
本作では謎に包まれた前半生を見事に創り上げ、ものすごくカッコいい久秀が放たれた。
きっと、松永久秀の橋頭堡、これから描く方にとってのスタンダードになりそう。そんな雰囲気を醸し出す一作。

実力主義へ移行しつつある中でも、土地や名誉に縛られる者達がいた。
守るものがあるがゆえに“阿呆”になっていく武士。
それらを見てきたからこそ、兄弟は決意した。
失うものがないから、後世に残すつもりがないから、とらわれることなく前に進める。

下賎の身から絆と才覚で世に躍り出た松永兄弟。
彼らを見出した三好家は、四国を拠点に畿内へ大きな影響力を持つようになり、どこよりも『天下』に近づいていく。
しかし、いつしか守りに入っていき、徐々に劣化。
しまいには内側でも勢力争い、外には対抗勢力が勃興。
登り詰めた先で、二人は絶望を知る。

兄弟が願った未来は、実現することはなかった。
それでも、天下に名を残す思いは消えることはなく、久秀は老いて後も手を伸ばし続ける。

「悪名も名でござろう?」
自分の人生に最後までこだわりと誇り、そして哲学を忘れなかった久秀。
こういう生き方をしてみたい、そう思わせる作品だ。

そして、今村翔悟が松永久秀をさらに奥深く描いた長編が発売された。

その名は『じんかん』
500ページ以上の大巨編となっている。


2020年の歴史・時代小説の目玉となること間違いなしの化け物作品。
こちらも併せて読んでほしい。


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