【読書記録】山内マリコさん「あのこは貴族」
正直、一番印象に残ったのはこの一節だった。
わたしたちは蔑まれていたのか…。
あらすじ
松濤で代々整形外科医院を営む家に生まれ、小学校から大学まで名門女子校育ちの華子。
一方、漁港の有名な地方の街に生まれ、猛勉強の末慶應義塾大学に入学した美紀。
全く接点のなかった二人がある男との関わりによって知り合って…という感じの話。
冒頭で引用したのは、美紀が慶應の内部生(付属校上がりの人々)と自分の埋めがたい差を感じたときの一節。
東京の、なんとなく暗黙の了解的になっている社会の構造や、女性同士の連帯などが描かれているのが印象的だった。既視感あるなと思ったら東京カレンダーの連載かも。
同じ空の下、私たちは違う階層(セカイ)を生きている
この本を原作とした映画のキャッチコピーが本当に端的に内容を表していると思う。
タイトルの"貴族"が指すと思われる華子や慶應の内部生たちは、ずっと同じコミュニティで生活している人々というように描かれる。
外食は昔から家族で贔屓にしている老舗レストラン、学校も親と同じところ。(三代続いて慶應、○○女子とかよくある話だよね)
付属小学校から一緒の同じ階層出身の友達とつるんで、同じような家柄のパートナーと結婚する。
だから、コミュニティ外の人、違う階層の人たちとは出会うことがない。お互いがお互いに見えないはずの存在。
華子が知人から紹介された男性と会う時に、東京出身者以外であることを全く想定していなくてゴリゴリの関西弁のお相手にドン引きしてしまうところは象徴的だなと思ったし面白かった。
昔からのコミュニティから出ないという点で美紀の地元の人々と似ているという表現がある。そしてそれぞれ自分たちのコミュニティ内で幸せに生きているように見える。葛藤することになるのはそのコミュニティにいることに疑問を抱いたり、飛び出した時なんだなぁ。
心当たりが一つ二つ
わたしは東京出身とはいえ23区外の出だから、美紀の思いはわかる~と思ったことがいくつもあった。
大学受験の時。一つだけ某女子大を受験したのだけど、両親を従えて受験に来ている子のあまりの多さに面食らった。確かに保護者控室の案内はあったけど、まさかあんなに利用する人がいるとは思っていなかった。
自分が着用していたペラペラな都立高校の制服の4倍は厚みがありそうな、一目で上等な生地を使っていることがわかるブレザーを着たツヤツヤのロングヘアーの女の子を見て、私とは住む世界が違うなと思った。ちなみにその学校は落ちた。
御三家、女子御三家と言われる中高一貫校出身の子たち。親が有名企業の部長職、大学教授。帰国子女。
大学に入ってそのような子たちと出会うと、生まれたときからの差をまざまざと感じた。とりわけ、今まで受けてきた教育の差を強く感じて今から努力しても到底かなわないなと思ってしまった私…。そんなヒリヒリした感情を思い出した。
地元から専門学校や短大に通って地元で就職して20代で結婚し、親の家の近くに家を建てて住んでいる同級生を見るとこういう生き方もあったんだなぁと思ってしまう。
もちろん自分の知らない世界があることを知れて、素敵な出会いもたくさんあったので早稲田に進学したことも、進学できるように頑張った自分も否定しないけれど。
女同士の義理
華子と美紀は一人の男性をめぐって出会うわけだけれど、決して奪い合いをするわけではない。そんな関係性も魅力。
女性同士を何かと対立させようとする風潮はあるけど抗っていきたいねぇ令和。
海街diaryのレビューで「4姉妹の中が良すぎ。監督が女性同士の関係性にファンタジーを抱きすぎ」という文章を見つけてほえ~となった記憶。
まとめ
東京で大学生活過ごした人には特に刺さるんじゃないかな~と思った一冊。
ちなみにすぐに映画も見たんだけど、こちらはこちらで面白かったのでぜひ。
以上、自分の中の何かが刺激されたため2000文字近く書いてしまった読書感想文…ここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
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