秋風が散歩を促し、喫茶店
10月に入って空気の質が変わっていく様を
肌で感じる
湿度が下がり サラっとした風がなびく
半袖で太陽の下を歩くのが心地いい季節だ
読書の秋 スポーツの秋 などと言うが
単純に人間にとって夏より行動しやすい
今年の真夏は本当に暑かったので
余計にそう思わざるをえない。
自分は元々孤独が好きだったのだろうか?
1人で喫茶店に行くことなど造作もない
なんとも思わない いつからだろう
隣にカップルや夫婦がいても
「まぁ、どうせ俺のことなんて見てねえしな」
「例え印象に残ったとしても、寝たら忘れる」
俺自身、隣にいた人たちのことなんて何も覚えていない
夫婦やカップル マダムたちがいた くらいの
ざっくりとした記憶のみ
数日前のことですらこれなのだから
他人のことなんてすぐ忘れていく
僕自身、精神状態が不安定な時期もあったのだが
''結局、人間はほとんどのことを忘れる"
ということを念頭においておくと
大抵のことはどうでもよくなる
良くも悪くも 僕のことは誰も興味ないし
僕自身他人のことに興味ない
社会的ルールからはみ出さなければ
例え真っ赤な服で全身を染めたところで
ほとんどの人たちの記憶にも残らない
この日は適当に商店街をふらついてた
ユニクロでも見に行こうと思っていたのだが
一年前には存在していたはずの2店舗が
なくなっていて移転していた
散歩していると いつの間にか色々な店が
なくなっていることに気づく
ただでさえ大変なのに さらには物価高
難しいよなぁと思っていると
「何故この店は存在出来ているのんだ?」
というような
謎の雑貨屋さんもいくつかある
やる気がまるでないおじいちゃんと
適当に陳列された古びた商品たち
考え過ぎても社会の闇に触れるだけ
距離を置こう
「あのハンバーガー屋さん気になってるんだけど
なんか入りにくくて いつもスルーしちゃうの よねえ」
中年女性たちの会話に心でうなづく
確かになんか入りづらい雰囲気だし
ハンバーガーに1300円かぁ...
しかも1人で? 定食食えるしなぁ...
と結局スルーしてしまうのだ
そして気になってた喫茶店に吸い込まれていく
入り口からさらに地下に降りなければ
いけなかったし
先程のハンバーガー屋と立地もたいして
変わらないのに
何故か入りやすい
かつて テレビで飲食店の開業の際、
ぱっと見で入りやすい雰囲気がめちゃくちゃ大事
だとヒノキを使用して入り口を構築していた
ことを思い出した
喫茶店には大抵セットがある
ケーキセットやランチセット
フードとドリンクを同時に頼むと
少しだけお得になる
俺は大抵まず最初はその店の定番を頼んでみる
「チーズケーキセット ホットコーヒーで」
店内は平日なのに賑わっていて 流石は有名店
退席したテーブルを片付けている店員さんに
少し申し訳なさを感じながらも
かつて何度もタイミングを逃して注文が遅れた
経験から 注文を手短に済ませた
正直この写真を撮る時が1番恥ずかしかった
30歳を超えた男が1人で撮ったところで
何になるってんだ もがいてんだ
ずっと ずっと
脳裏に浮かんだあの曲のメロディーに
本音をなぞりながら
よく見るとフォークの位置や
破いたおしぼりの乱雑さで
最低限 なんとなく位置を整えて急いで撮ったことがバレそうだ
「チーズケーキは温かい間に召し上がり下さい」
俺は店員の言葉にうなづき、軽く会釈した
1人で来てるんだしせっかくなら じっくりと
味わって食べよう
スマホをいじることなどもせず
チーズケーキをフォークとナイフで切り分け
コーヒーで流し込む
...5分くらいで完食
サイズ感も女性でも食べやすい大きさで
成人男性には余裕でペロリであった
3割くらい残った珈琲に
砂糖とフレッシュを流し込む
かつて自分が喫茶店でアルバイトしていた時
お偉いさんの大ベテランから
「珈琲はまずブラックで楽しむ」
「そのあとミルクを入れて楽しむ」
「最後に砂糖を加えて変化を楽しむ」
という教えに納得した過去がある
結局滞在時間は20分前後くらいだったと思う
ゆっくりする気もなく
少し休憩したかっただけだった
店の回転的にも俺って良い客かも?
などと適当な理由をつけて
階段を上がり会計を済ませて店を出た
俺は15年前になんとなく思い描いていた
大人像よりもはるかに子供のままだ
中学生時代から精神的成長はあまりない
経験を重ねただけだ
でもそれで構わない
1人で喫茶店で一息ついて
また日常に戻っていく
秋風が心地いい