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【エッセイ】ChatGPTと京大英作文
ChatGPTは凄いです。瞬時に質問に答えて翻訳をして文書作成までお手のものです。本当に便利です。殊に翻訳には驚かされます。支離滅裂な訳文がオンパレードだったときのGoogle翻訳を使ったことがある身としては、機械翻訳の革新にはただただ脱帽します。
ところで、Open AIによる英語から日本語への翻訳は十分に意味が通じる程度のクオリティである一方で、日本語から英語にはどうでしょうか? 私見ですが、英語は文型といった語順の縛りがあるため他言語に置き換えやすいと思っています。しかし、日本語では文型のように語順の縛りが緩く同じ単語を使っても表現のパターンがいくつも出来てしまいます。そのためヒトが英訳するときには和文和訳というプロセスを英訳の前に挟むことがあります。それくらい日本語は複雑な言語なので、AI翻訳でも《日→英》だとチグハグになることがあります。
もちろん機械翻訳を活用するのには賛成です。せっかく便利なものがあるなら使わない手はありません。しかし全てを機械翻訳に任せるのは他力本願が過ぎます。
前置きが長くなりましたが、今回はChatGPTの英訳、わたしの拙訳の2つを紹介します。
なお拙訳については本記事投稿前日に辞書なしで訳しました。そして本日辞書を引いて一部加筆修正しました。太字が加筆修正した箇所です。
①我が家の古いピアノには懐かしい思い出がたくさん詰まっている。②5歳からピアノを始めた娘たちもすっかり大人になり、今やだれも弾かなくなった。③しかし、なかなか処分する気になれない。④そういうピアノを買い取って再生させる会社があるらしい。⑤プロの手で修理すれば、また美しい音を奏でることができるという。
①Our family’s old piano is filled with nostalgic memories. ②My daughters, who started playing the piano at the age of five, have grown into adults, and now no one plays it anymore. ③However, I find it difficult to bring myself to dispose of it. ④Apparently, there are companies that purchase such pianos and restore them. ⑤They claim that with professional repair, the piano can once again produce beautiful sounds.
①The old piano in my house is full of nostalgic memories. ②My daughters, who started to play the piano at the age of five, are fully grown up, and so nobody plays it any longer. ③Nonetheless, I cannot bring myself to dispose of it. ④I hear that there is a company which purchases and repairs such pianos. ⑤It is said that they will produce beautiful sounds again if they are tuned by professionals.
①我が家の古いピアノには……
わたしの翻訳が優れているとは言いませんが、ChatGPTでは①の「我が家」と②の「娘たち」でourとmyと2つの代名詞を使っています。この文章自体が一人称の随筆調なので単数のmyで統一したいですね。
②5歳からピアノを始めた娘たちも……
わたしはbe grown upを使っています。これは慣用句ですが、平坦な英語を心掛けるならばChatGPTのhave grown into adultsのほうが読者を選ばないかもしれません。
③しかし、なかなか処分する……
ここはhoweverでいいのか悩みます。わたしもはじめはhoweverにしていましたが、「いまでも」というニュアンスが原文から読めるので、howeverよりもnonethelessのような「それでも」というニュアンスを伴う表現のほうが良い気がしています。ちなみにこれは創訳ですが、but…stillで「だが今でも」という風に訳したいと思いました。
《…する気にならない》は「…する気分+じゃない」という表現を使うとシンプルです。そうdo not feel like doing somethingです。ちなみにChat GPTもわたしもbring mysef to do somethingを使っています。ただChatGPTは、find it C to bring oneself to do somethingのto不定詞句が2回続きます。くどい印象です。もし使うなら、It is difficult for me to dispose of it.のように文構造はシンプルにしたいです。
④そういうピアノを買い取って再生させる……
apparentlyは最高です。ChatGPTの英訳一語目でドンピシャな感じを覚えました。またrestoreも良いですね。ここのワード・チョイスは本当に凄いです。ただ気になるのは、companiesです。おそらくここで書き手は幾つかの会社ではなくて、ひとつの会社を指しているのではないかと思います。
⑤プロの手で修理すれば……
They claim that...と会社の宣伝みたいに聞こえますが、claimはやり過ぎです笑 またonce againを文中に挿入するのも不自然です。ただ、それ以外は大きな問題もないように思います。個人的にはwith professional repairをみて付帯状況のwithを使い、with them tuned by professionalsのように句にまとめて使うのもありかもしれないと思いました。
ChatGPTの英訳は読めばざっくりと意味は伝わると思います。しかし書き手の言いたいニュアンスみたいなものを掴むのはまだ難しいのかなと思いました。個人的には、文全体の統一性(人称代名詞の使い方)、語彙選択が若干気になりました。
わたしの拙訳が良いとは思いませんが、おそらく理想としてはChatGPTに訳してもらい、そこから手を入れて英訳するのが、いまはプロセスとしては最も効率的だと思いました。