このラストで本当にいいの?<小説の書き方>
7/7、七夕で完結を予定している『紫に還る』(note創作大賞ファンタジー小説部門応募中)ですが、実はラストはまだ迷っています。本命と思っている締めくくりのほかに何通りものラストがあるのです。
実のところ、どの終わり方が良いのか、自分でもわからなくなっています。
迷っているのは、『ラストに含みを持たせるか』です。
ミステリー作家だからかもしれませんが、謎とその解明にはこだわります。
『紫に還る』のファンタジー世界にも謎があります。そのすべての謎をラストで解き明かすべきなのか、ある程度は読者の想像に任せる余白の部分を残すべきなのか、ということです。
ミステリーならリドルストーリーと言って、真相は読者に考えてもらうという手法があります。
ストーリーの中には、私が考える答えのヒントになることが、書かれています(伏線のようなものです)。ラストには、読者を答えに導くような描写もあります。
これ以上は書きすぎ、という気がするのです。
それと同時に答えだけをあっさり書きたくない、という気持ちがあります。その答えが一つの大きなストーリーになるからです。中途半端に答えだけを提示したくないというのが、正直なところかもしれません。
とにかくラストは本当に大事なので、まだもう少し悩もうと思っています。
そういうわけで、このところ創作大賞応募作品の中に
「ラストが決まっている、上手い」と思う作品を探していました。
ありました。紹介します。
「ヨシダは死にました」 野ヤギさん
ショートショートですし、恋愛小説ですから、私の書いている小説とは事情が違うのですが、とにかく、読者がすっきりする、気持ちのいい終わり方です。読みながら抱いていた疑問の答えをすっぱりと提示しているのも美しいです。
そもそも「お仕事小説」としての完成度が高く、軽妙な会話も楽しくて、すいすいと読み進めた最後の一行!
未来が見えました。
(あっ、これはその一行ではありませんよ)
ラストで、登場人物たちの先行きが見えた気がしたのです。それは明るく楽しげで、希望を感じるものでした。
それが一番私の胸に響いたのかもしれません。
ショートショートですので、すぐに読めます。
このラスト一行を味わうために、数分間、読んでみてください。
ありがたいことに読書感想文を多くの人に読んでいただいています。
私自身が『紫に還る』を実際に書いて、考えたり迷ったりしていることに
重ね合わせているのが良いみたいです。
今回も勉強になりました。そして楽しい読書をさせてもらい、ありがとうございました。