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小説新人賞の【枚数制限】を逆手に取る〈小説の書き方〉

新人賞には応募原稿の【枚数制限】があります。本来は筆に任せて、書きたい分量を書くのが正解だと思いますが、応募をするには、その賞が規定する【枚数制限】に合わせなければなりません。

また、同じ小説を改稿し、ブラッシュアップして別の新人賞に応募することもあるはずなので、その都度、【枚数制限】のために原稿の分量を調整する必要があります。

この【枚数制限】はやっかいな制約ですが、逆にその制限に合わせることが、小説を進化させるための強制的なアドバイスだと考えてはどうか、というお話です。

400枚を300枚に減らしたことも

何作も書いた今は、プロットから本編原稿の執筆に進むときに、「この小説は大体400枚くらいだろうな」と見当がつくようになりましたが、新人賞に応募を始めた頃は、まったく分かりません。
あるとき書き上がった原稿は、原稿用紙に換算して400枚。目当ての新人賞は300枚以下。締切りを横目に青くなって削った経験があります。
 その時は元の原稿から、重要度の低い、カットしても大筋には影響しないシーン・エピソードを削りました(それに伴っていなくなった登場人物も)。
時間の掛かる作業だったし、辻褄を合わせるのも大変でした。

 なお、改行を減らしたり、節、章の区切りを少なくしたりもしましたが、数枚しか減らず、あまり影響はありません。

無理矢理、枚数を増減させることが、作品にとってプラスになる


ここからは、枚数制限があることを逆に小説の進化に繋げる、という観点です。

自分の書いた小説を削りたくない

誰だってそうです。愛着があればこそです。しかし枚数制限のために仕方なく削った小説が以前より良くなっていると気づくことがあるのです。

どこかを減らせないか考えに考えて改稿した原稿を読み返すと、減らしたのが作品には不要なエピソード、なくても良いシーン、贅肉のような描写だった。それはとても重要な発見ですし、創作の訓練にもなります。

とは言え、これも大事なこと
 贅肉をそぎ落とす作業を続けても、これ以上はどうしてもカットできない、それでも枚数オーバーは解消できないケースがあるでしょう。それはその作品で目当ての新人賞に応募することを潔く諦めるべき時です。小説を壊してしまうからです。別の新作を書くべきです。その方が結局は早くて品質の高いものができます。
 その代わりスリムアップした改稿原稿は、良くなっているはずです。必ずどこかで使いましょう。

どうやって削る場所を見つけるか

私はプロットからあらすじに進む段階で、小説のシーンをエクセルにまとめた『シーン表』を作っていますが、そのシーンをじっくり見直して、不要なシーンを選びます。数百枚ある原稿を見直すのは時間も掛かりますし、読んでいる内に小説の世界に入ってしまうので、何かしらストーリーの骨格だけを俯瞰するのが良いと思います。

(これは別の記事にして書きますが)自分の小説を客観的に見ることは非常に大事です。可能な限り自分の小説の世界から離れて、物語の構成を見つめる訓練が必要です。

加筆することに抵抗を感じるとき

新たなテーマ・エピソードを加えることで、小説に厚みが出たりキャラクターの深掘りができることがあります。加えることで初めて、説明不足だったことに気づくケースも。
しかしそれを見つけて追加するのは意外に大変なことです。
 私も『シーン表』を睨みながら、何を追加したら良いのかと思いあぐねたことがあります。

 それは主人公の抱えるトラウマの内容や葛藤の具体的な描写であることがあります。
なぜそんな大事なことを書かなかったかというと、主人公のトラウマが私の体験したことであるケースだからです。
自分の思い出したくないことに触れてしまう。だから目を背けて(これ以上は)書かない。書きたくない。

しかしそこは往々にして、もっとも大事なシーンであり、説得力、共感を生み出す源泉になるのです。
自分の経験を小説にすることでリアリティーを生む。そう思って小説を書く人は多いはずです。ところが深く書き込んでいくと、いつしか腰が引けてしまう。
そういう時は中途半端にしないで、正面から向かい合うことが必要です。

小説にはデトックス効果があると思います。嫌なことを吐き出して忘れる、というやつです。気がつくと自分のトラウマが昇華されていることもあります。実話です。

枚数制限から、書くべきこと、というテーマに脱線してしまったようです。(小説のようにプロットを作らないからですね)
今日はこの辺で。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

『シーン表』について書いた記事はこちら。


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