良い小説に会えました。<創作大賞感想のまとめ>
読者応援期間はあと一週間。ここで紹介するのは、どれも面白い作品です。自信を持ってオススメします。
見出し写真は、感想文を書いていただいたコングラボードたちです。
これは感想を書いた作品が良かったからだと思います。
他の方の作品を読むことは、とても勉強になり参考になりました。
このコングラボードは私から、作品を書いた方へのお礼とお祝いです。
その作品と感想文をひとまとめにして、ご紹介します。ぜひリンクから見に行ってください。
(一緒に書いた執筆ノウハウなどは長くなるので、直接の感想だけを抜粋しました。それと感想は連載完結前のものもあります)
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上手いなあ、これは次の話も読んでしまうなあ。
dekoさんは次の話への誘導がとても上手です。
①わざとシーンの途中で切って「主人公はどうなるのだろう」と心配させたり、
②意味深な描写で終わって「これは何を意味しているのだろう」と興味を持たせたり。
特にこの第2話。謎と余韻があってとても惹かれます。
(追記:この感想は連載初期に書きました。そしてラストはいくつもの謎が見事に解き明かされる驚きの大団円です!)
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主人公の置かれている辛く、重苦しい状況を第一話で丁寧に書かれている小説に出会いました。
私は最近はファンタジーを探して読んでいるのですが、ふと感想文にひかれて読んでみたのが小暮さんの小説でした。恋愛小説のようです。
この第一話(5000字ほど)で、丁寧にしかも簡潔に、主人公の喪失を描いています。喪失の辛い状態を夢を使って描き、後半で喪失がどうして起こったかを、そして描きながら主人公のキャラクターを浮かび上がらせています。
この主人公がどのような行動をして、復活の道をたどるのか、きっと先を読みたくなると思います。
※『茶色の小瓶』グレンミラーの曲を小道具に使っているのも上手いです。私は思わず曲を聴いてしまいました。
そしてこちらの感想文を書いたのは日々鯨之さんです。私の紹介より格段に読みたくさせてくれますので、こちらもどうぞ。
note創作大賞、様々な作品に触れることができて、大変勉強になります。
それではまた。
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今回、note創作大賞に応募している作品を拝読している内に、メディアミックスを上手にしていることに、感心した作品がいくつもありました。
文章、文字、音楽、絵、写真、声……五感に訴えるあらゆる刺激を、組み合わせることで、深く強い感動を生み出せると言うことに気づきました。
今日は、さちさんの「おはよう、私」を紹介します。
私が思わず書いたコメントです。
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素晴らしいですね。とても良いクリエーターの作品に出会った気持ちです。第一話を読み、その優しい世界に惹かれました。そしてラストの音楽を聴きました。映画館にいるような気持ちになりました。ジブリの映画を観たようです。声ではなく文字だから感動したのだと思います。
創作にはまだまだ可能性がありますね。感動しました。ありがとうございました。
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この小説はJaga さんという方の歌詞の無い曲からインスピレーションを得て生まれたそうです。ところがこの小説が、今度はJaga さんをインスパイアして、歌詞ができたのだそうです。
ぜひ、小説と曲、そこに流れる歌詞を味わっていただきたいと思います。
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「人間関係の描き方」が上手い、と思った作品を紹介します。
小説の冒頭シーンは読者をつかむために、もっとも重要です。そこで主要なキャラクターの人間関係を的確に、スタイリッシュに書いています。しかもこの小説のテーマである【出口】も、第一話で読者の興味を惹きつけるように登場させています。
この第一話のテーマと人物紹介のバランスが良いのです。
(私は第一話に惹かれて、思わず続けて第二話を読みました。こういう気持ちにさせることが大事だと思います)
冒頭の人間関係の描き方で、同じような悩みをお持ちの方には、第一話、読んでいただきたいです。
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ショートショートですし、恋愛小説ですから、私の書いている小説とは事情が違うのですが、とにかく、読者がすっきりする、気持ちのいい終わり方です。読みながら抱いていた疑問の答えをすっぱりと提示しているのも美しいです。
そもそも「お仕事小説」としての完成度が高く、軽妙な会話も楽しくて、すいすいと読み進めた最後の一行!
未来が見えました。
(あっ、これはその一行ではありませんよ)
ラストで、登場人物たちの先行きが見えた気がしたのです。それは明るく楽しげで、希望を感じるものでした。
それが一番私の胸に響いたのかもしれません。
ショートショートですので、すぐに読めます。
このラスト一行を味わうために、数分間、読んでみてください。
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さて、今日はnote創作大賞、応募作品の中から、文体に刺激をもらった作品を紹介したいと思います。
『Monument』川良部逸太さん
【詩】のような文体だと思いました。
一文の短さ、読点の多さ、行間の取り方、
さらに視点の切り替わり、心の声の置き方。
そのスタイルが独特です。
静謐なのに熱がこもっている。
(少しハードボイルドも感じました)
この文体、特徴的で読みやすい。そして先に読み進めていっても、ぶれないのです。
文体がしっかり定まっているから、安心してストーリーに入っていける。
船が揺れずに安定していると、落ち着いて景色を眺めることができる。
それと一緒です。
読者をおもてなしするのだから、読んで心地よいと思ってほしい。
そういう自分のスタイルを持つことが大切だと思いました。
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以前、『主人公を早く困らせないと』という記事で、主人公を苦境に突き落とすことが大事だと書きました。
それから主人公の活躍、成長が始まる、という流れがエンターテイメント小説の定番なのですが、この【落として上げる】という展開をいかに書くかが難しいのです。
それではnote創作大賞の応募作から、【落として上げる】が上手いなあ、と思った作品を紹介したいと思います。
『夢と鰻とオムライス』は花さんらしい、スーパー読みやすさ、巧まざるユーモア(独特のおかしみ)満載の楽しい小説です。
今日は数ある美点の中から【落として上げる】の上手さを紹介できればと思っています。
第一話から主人公が辛い目に遭います。かなり気の毒な感じです。これが
しっかり書かれています。
(暗くなりそうですが、それを母親の一風変わったキャラが救っています)
そこから第四話、こうちゃんというキャラが登場し、環境が変わったことから、主人公は俄然、いきいきとエンジンがかかります。
このスイッチの切り替えが、とても自然です。
主人公はひどい目に遭う、かわいそうな環境
支援者が現れる、活躍に向かう変化・転換
この上向きへの転調が、しっかり書かれていて、それがスムーズにシームレスに読めてしまうのです。
気がつくといつの間にか小説の景色が変わっています。トンネルを抜けて
明るい光に照らされたことに気がつきます。
非常に巧みだと思います。秘訣を聞いてみたいところです。
一話から四話まで読んでもらえると、【落として上げる】上手さがはっきりわかると思います。
(追記:このあと、ストーリーは日常系ファンタジー、そしてさらに深いテーマに向かっていきます。考えさせられる良い小説でした)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小説のタイトルは本当に難しくて、私はいつも四苦八苦しています。
デビュー作の『幻の彼女』の時も何十案も考えました。内容を表せば良いというものではなく、そのタイトルで店頭に並んだときに、手に取ってもらえるかという観点が必要なのです。
今回、note創作大賞の応募作を読むときに、やはりタイトルで選んでいることに気づきました。
すごい数の作品が応募されているのですから、作品の大海の中をタイトルというブイを頼りに泳いでいるようなものです。
今日は「なんだろう、これ?」「面白そうだな、読んでみよう」と思って、思わずクリックしたタイトルをご紹介します。
これはタイトルでも惹きつけられましたが、それに加えて、引用したあらすじの中に、すぱっとタイトルの意味が書かれていて「なるほど、それで八方ふさがりか! 読んでみたい」と思いました。情景が目に浮かんだのです。
こういうの、上手いなあ、と思います。
「漂着、ちゃん?」。「ちゃん」って何? どういうこと? と思ったら、もうクリックして作品を読んでいました。派手なイラストも相まって「私を読んで」と言われているようでした。
元になった小説のタイトルは、『結尾美織はみそ汁が飲めない』だったそうですが、改題して良かったと思います。インパクトが10倍くらい強くなっていて、次の作品にいく手が止まります。
読書感想文でも紹介させていただきました。すごく目を引くタイトルです。ラストの一行といい、野やぎさんは、一言で世界を切り取るのが上手い方なのだろうと思います。
私がネコやわんこが大好きだからかもしれませんが(そういう人は多いはず)、イラストも合わせ技で、読ませていただきました。
作戦勝ちではないでしょうか。まずは読まれてナンボ、の世界ですから。
優れたタイトルを選ぶのも、勉強になると気づきました。
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楽しんで書いていますか?
創作は楽しい、と私も思います。今日はこの作者さんは自由に伸び伸びと楽しんで書いているのだろうな、と(勝手に)思った作品を紹介します。
疾走感が素晴らしいです。意識的に余白の少ない、詰め詰め感のある文字組にしているのでしょうが、意外に重くなく、アップテンポに感じます。
それは短文を重ねていく文体、主人公の一人語りの親しみやすさによるのだと思います。
途中から主人公の語りやセリフが、作者がしゃべっているように聞こえてきました。この小説の世界をつくっている人のように思えたのです。作者が主人公に(逆かな?)憑依して書いているからではないかと思います。
特にスターウォーズを思わせる戦闘シーン、きっとわくわくしながら、書いてるんだろうと、こちらまでその楽しさが伝わってきました。
(コブラも混じってる?)
あれも書いてやろう、こうしたら面白そうだ、こうしてくれよう、という作者の声が聞こえてくるようです。
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第一話からとても吸引力があるストーリーだと思いました。
魅力的な人物、謎めいた会話に惹きつけられます。
特に第三話から急に展開が気になり始めました。
「……そうだな。まずは、カインがあの子の側で生きていられるかどうか、だ」
この文章が一瞬、違和感を伴って不穏です。あらすじを読んだので、ある程度予想できるのですが、この小説が出版されたとしたら、あらすじはありませんから、この一行の価値はもっと高まると思います。
このような違和感、謎、ほのめかしが至るところに顔を出します。
だから次へ次へと読む手が止まらないのです。【スキ】を押すのを忘れるくらいでした。
これ以上の内容には触れません。どうぞ読んでみてください。
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エッセイは読むのに時間が掛からないので、note創作大賞の応募作もたくさん読みました。長編はあらすじや第一話を読むときに、どこかに面白い種がないかと、緊張して読むのですが、エッセイは光るものがあれば、一、二回のスクロールで黙っていても、目に飛び込んできます。
今日はその飛び込んできた「これ、いいな。面白い」と思った作品を紹介します。
面白いです! ノリがすごく良いです。いただいたコメントによると、ノリとテンポを意識して書かれたそうです。
言葉選びのセンスに感心しました。こういう作品を読むと、小説の世界は本当に自由で、作者の感性さえあれば縦横無尽に楽しめるのだなあ、と思います。
(作者も自由な方かも)
それと可愛いイラストにも惹かれました。
読みやすくて、楽しめて、気づきもある、こういうエッセイ、良いですねー
これは読んだ時に書いたコメントです。
たった一枚の看板から、これだけの物語(実話ですか?)が広がるのが素晴らしいです。夫さんのもっともな理屈が次第に妙な理屈になっていくのが悲しくもおかしいです。
「痛すぎて涙がツツーって頬に流れるのが分かんねん」
流す涙にも哀愁を感じます。
私も最近、レーザー治療をしたものですから、身につまされました。
こちらこそごめんなさい、爆笑してしまいました。「全部、親のせいだ!」と喝破した辺りから「これは」と思い、引きずり込まれました。いくつになっても歯医者は嫌ですが、その嫌さに笑いが見事に大勝利です。
ご自分を舞台の役者のように見ることができる人なのだなあと思いました。
ぜひ、かわいい歯科衛生士さんから見た話も書いてほしいと思いました。(エッセイじゃなくなるけど、面白そう)
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大変な数の応募作の中で、プロより上手いのでは? と唸らされる表現があったり、思わぬカウンターパンチに驚かされたり。
輝いている傑作に出会うのが楽しみでした。
noteには、さっくり読めるエッセイやショートショートが合っているかもしれません
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そう言えばnote創作大賞にはショートショート部門がないのですね。
次回はつくったらいかがでしょうか。
私はショートショートが大好きなので、面白かった3作品、ご紹介します。
面白いなあ。こういうの、大好きです。ほぼ会話のみで繰り広げられる夫婦の日常(?)会話。
「えっと、ポエマーだから仕事は、ね」
このセリフが絶妙。そして全編通じてですが、ユーモアのツボがわかっていらっしゃるのだと思います。
妻さんの容赦なさにしびれて、少し夫さんがかわいそうになりますが、最後は……
短文で刺す、ショートショートの威力炸裂です。
アイディアがとても良いですね。タイトルからスッとストーリーに入れました。仕組みは通信データのギフトを思い浮べました。あれこれ難しく説明しないのもよかった気がします。読者が想像する余白をつくっている。きっと読者を信用しているのだと思います。
SF風味で読み進むにつれて、怪しく怖くなっていく。私の大好きな星新一さんの作品のようです。
十分に短編に育ちそうな魅力的なテーマだと思いました。とても読みやすく、書き慣れた印象です。二人のいろんな絡み、エピソードを読みたくなります。
そして最後の甥っ子の一言。決まってますねー。もうこれだけで作品が成立してしまうからすごいです。ショートショートの威力をよく知る作者さんの狙い澄ました一撃なのではないでしょうか。
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note創作大賞には様々なジャンルがあります。これまで小説の応募作を読んで感想を書いていましたが、今日は他のジャンルからも紹介します。
「五・七・五・七・七」
たった31文字に込められた力と想いに驚かされました。
あえてここでは短歌を紹介しません。それは作者がその前段で書いている文章と一緒に味わってほしいからです。(どうぞクリックして読んでください)
短歌とその解説(エッセイ風で楽しく読めます)。良いですね、この形式。
オールカテゴリ部門になるのでしょうか。
NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の短歌を集めた「トビウオが飛ぶとき」を読んだことがあって、それを思い出しました。
私がちょうど植物をテーマにした小説を連載していたので、余計に刺さったのかもしれません。
オールカテゴリー部門だそうです。
本当に「ぐりとぐら」の世界が好きなことが伝わってきて微笑ましいです。
ぐりぐら愛は、本の世界にとどまらず、ミュージアムやあのカステラを食する楽しみへと、ずんずん進んでいきます。
表現のルールや常識に囚われず、自由に書いているのが素晴らしいです。
私も子どもに「ぐりとぐら」を読み聞かせていた頃を思い出して、カステラに唾がわきました。
創作は自由だなあ、と思いました。
そしてこちらは レシピ部門。
あのチョコモナカジャンボのとんでもない食べ方(これが美味しそう)が写真たっぷりに紹介されています。これは食べてみたいです。
こういう記事を目にするとほっとします。忙しい現実を忘れて、束の間癒やされる人がたくさんいるだろうな、こういうスタイルの表現が求められていると思いました。
「食」は偉大なコンテンツですから。
※私は酔っ払ったとき、喉が渇いてこのジャンボをコンビニで買って、食べながら帰ったものです。
たくさんの新しい表現を楽しませていただきました。
文章をベースにして、写真や音楽や絵などさまざまな手法を駆使して表現することができるのがnoteだと思います。
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ミーミーさんの応募作を読みました。20年前の司書としての経験を書かれているのですが、時代を経ても大切なものは変わらないと思います。
司書さんの仕事は司書のテキストにあるようなことばかりではなくて、むしろそれ以外の方が大事だと言うことがよくわかりました。
気持ちの温かくなるエッセイをありがとうございました。
それと……
こちらは花さんのエッセイ。癒やされました。
作品を良くするために一生懸命な花さん、その役に立とうと入れ替わりで親身に対応してくれる図書館員さんたち。
図書館ってありがたいなあ。これが原点だなあ。
そう思わせてくれました。
(勝手に紹介しました。すいません)
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ある日突然フルマラソンの大会に出場することを決めた主婦の話です。
今の私にはど真ん中ストレートの第一話でした。
モヤモヤする毎日をおくる主人公、一念発起するも屈辱的な出来事、いきなりハードすぎる目標設定、夫との賭けに勝てるのか……
「わかるなあ」と共感できる始まりを持つ小説は、もうその時点で祝福されています。
実話を元に書いていらっしゃるようです。文句なく面白い導入です。書かれている内容に無駄がなく、どれかが読者の心の琴線に触れるようになっていると思いました。
釣り針がたくさん垂れている感じと言っても良いです。
私も見事に釣られてしまいました。
どうぞ、1~2話をさらっと読んで見てください。
タイトルもいいですね。私の好きな
「風が強く吹いている」、「一瞬の風になれ」
のように強いです。
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これ、第一話を読んだ時の私のコメントです。そして完結してから一気に読んで、とても感動しました。その後、豆島さんとは長文のコメントのやりとりをしました。それは長くなるのでリンクだけ張っておきます。
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以上、昨日までに書いたnote創作大賞の感想文です。なんだかすごく長くなってしまいました。ここまで読んでくださる方はいるのでしょうか。
でも私にとっても良い振り返りになりました。この記事をときどき見返して、自分の創作の刺激にさせてもらおうと思います。
応援期間の残り、一週間。私も気になっている作品を読んで感想を寄せたいと思います。