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事件は起こらないけど満たされるストーリー。(「団地のふたり」を観て)

ネットニュースに流れてきたのをチラ見したこちらのドラマ。地上波ならNHK+で追っかけ視聴したものを、BSだったので泣く泣く諦めていた。そうしたら年末に再放送するというので、折しもインフルで隔離生活を強いられていた私に持ってこいのタイミングとばかりに、朝から待機してこの一挙放送を視聴した。

シンクロ率95%以上。

まさに、まんまドンズバ世代。
55歳。若くもなく、かと言って年寄りでもなく。
いや、逆に「若くもあり年寄りでもある世代」の方が正確なのかもしれない。
どのグループにいるかでそれが変わってくる。
団塊の世代が住み始めた所謂ニュータウンと言われるコミュニティは、今や高齢者世帯になり、自分達世代がそこに居れば自然と「若手」になり頼りにされる。
でも冷静に考えてみて。55歳と言えば、仮に24歳で結婚して25歳で出産していればその子供も30歳、孫を見ていてもおかしくない年齢なのだ。実際、中学時代の同窓生の中にはとっくに孫を見てる人もいる。そう、「おばちゃん」を通り越して「おばあちゃん」と呼ばれてもおかしくない世代なのだ。

50代に入ってこの「上の世代にも下の世代にも共感できる」感覚は徐々に増えてきたが、それもおそらく今後は上世代に自分自身が吸収されることで、下世代の気持ちがわからなくなるんだろうなと予想する。

このドラマに感情移入するあまりに、文庫本を購入してしまい、ドラマを文字で復習している。

しみじみとした安心感

団地でのなっちゃんとノエチの暮らしは、穏やかで大きな事件はそれほど起こらない、ごくごく平和な時間。一つひとつのエピソードが丁寧に描かれていて、ゆっくりとした時間の経過が忠実に再現されているというか。語彙力がないのが残念なのだが、何というか、ホッとする。
特に心に残った文章や、好きな場面を備忘録として残しておこう。

なっちゃんは団地の住民から預かる不用品をオークションに出す。一体誰がこんなものを、と思うような品物が売れた時に「日本中に欲しい人がひとりいればいい、というのは素敵なシステム」となっちゃんが思う場面。

いくら売れそうにないものでも、世間でだれかひとりくらいは、興味を持って探しているかもしれない。ひとりだけいればいい。そのひとりに届けばいい。

藤野千夜「団地のふたり」

オークションだけじゃない。呟きだって、noteだって同じ。リアルな人間関係もそう。誰か一人でもわかってくれる人がいればありがたいことじゃないの。

他にも、職場でイヤなことがあって落ち込んでるノエチが、楽譜が売れてホクホクで思わずおかずをはずんだなっちゃんに元気付けられてムクっと起き上がり、夕餉の食卓をテキパキと整える場面とか。なっちゃんがご飯の準備をする様子。団地の部屋で一人、イラストを描いたりオークションで売れた品物を梱包したり。おばちゃんに頼まれてノエチと2人で網戸の張り替え作業をしたり、近所の喫茶店でホットケーキを食べたり。

作品全体を通して、穏やかな時間が流れているのを感じる。自分もこんな風に丁寧に落ち着いて暮らしたいなぁ。団地に暮らす人々はそれぞれに人生の山や谷を経験してきているけれど、何とか乗り越えて今日まで生きてきたのは、周りの人達との関わりがあったからかも。そんな気がした。

U-nextでも配信されてるらしいので、穏やかな気分になりたい人は是非見てほしい。そして一緒に語りましょう。


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