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キムチの前のとおせんぼ

とおせんぼ。

人生で
とおせんぼされる機会は、
何回あるだろうか。

まだ小学生だった頃は
「遊びに行く前に〇〇しなさい」
といったとおせんぼは
あったかもしれないが、
それはあくまで言葉のとおせんぼだった。

日曜日、
友人とキムチ作りを
約束していた私は、
9時に出る予定で身支度を済ませる。

出発する直前だった。
わかちゃんこと夫との
軽い言い合いに火花が散り、
わかちゃんが
扉の前に立ちはだかった。

玄関へ続く扉はそこしかない。

意を決して近づくが、
お相撲さんの
「のこった」よろしく跳ね返される。

100㎏の力は半端ない。
軽いひとつきであろうと、
体重約半分の私は
いとも簡単に押し返された。

「も~!
時間だから出なきゃいけないの!
遅刻しちゃうう!」

物理的に敵わないため、
言葉で対抗する。

「いいや!ここから動かないから!!」

そう叫んだわかちゃんは、
ついに扉の前に寝転んだ。

またごうにも
足をバタつかせて、近づけない。

脚先を持って
引っ張ろうにも、
100㎏の巨体はビクともしない。

それならと、
くすぐり作戦に出たところ、

「うひひひひひひっ!」

笑い出したものの、
扉の前から動かない。

なんという執念・・・!

私は普段、
約束時刻の10分前行動を
心掛けている人間だから、
遅刻なんてめっそうもない。

まして原因が
旦那のとおせんぼだなんて、
もってのほかである。

攻防の末、
時刻は10時を回っていた・・・・。


寝転ぶわかちゃんの図



ちなみに、
1時間以上遅刻して作ったキムチは、
持ち帰ると
わかちゃんのお口に非常にあったらしい。

食べたら、絶賛。
「もうこのキムチしか食べない!
また作って!」

なんやねん。


そんなわかちゃん、
いつものように
ヨギボーの上に伸びていると
おもむろに、こちらを向いて
真顔で呟いた。


「You make me so happy.」


誰やねん。

「Thank you.」


ニヤけながら答えた。

記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。