ビジネスサイドとエンジニアサイドの溝はどう埋めるべきか?
サービスや事業の開発を進める中のコミュニケーションで、相手が技術(またはプロダクトなど)を「手段」と捉えているのか、「目的」と捉えているのかを、もっと意識した方がいいなと思う場面が少なくありません。
サービスや事業において、例えば技術に対する意識は、ビジネスサイドの視点から考えると技術は「手段」、エンジニアサイドの視点で考えると技術が「目的」と、暗黙的に捉えられていることが多いように感じます。
この両者は対極的な見方なのですが、この視点の違いを認識されずにサービス開発や技術選定にかかわる意思決定やコミュニケ―ションがされている場面がときおり見られるように思います。
2つの違いが生まれる原因は、ビジネスサイドとエンジニアサイド、それぞれの「生業(なりわい)」に由来していると言えます。
経営や営業などのビジネスサイドとしては、何は無くとも「売上」「利益」を上げることが必達すべきゴールであり、極論すれば技術やプロダクトというのはあくまでその達成のための材料の一つにすぎないとも言えます。
一方エンジニアは、持っている技術を売り物として対価を頂く職種なので、こちらも極論すれば、短期的な売上やサービス、プロダクトの成否よりも、技術を正しく適用することこそが最大のミッションとも言えます。
双方にとってはそれぞれ当たり前の事なのですが、当たり前すぎて、相手の根底の意識に違いがあることが十分に意識されていないように見受けられる場面が多くあります。
両者の違いが強く表に出してしまうと、コンフリクトが発生しがちです。
ありがちなセールスとエンジニアの対立なども、根底にはこの意識の違いが遠因になっているケースがあります。
例えば、短納期/低コストで顧客の要望に応えたいセールスと、十分な人員と工数を使って万全に開発したいエンジニアとで、進め方に意見対立が起きる場面などは日常的にみられる光景かと思います。
このようなコンフリクトを避けるために「ミッションの達成」や「サービスの成功」を共通のゴールとして掲げ、両者でそこを目指していくのが一般的ですが、なかなか個々の根本的な目的意識を抑えるまでには至らず、両者が噛み合わない場面が発生してしまいます。
この2つはもちろん、どちらかが正しく、どちらかが間違っている、ということは一概に言えません。組織やサービスの目的ややり方、また場面場面で、どちらを優先するのかが分かれてきます。
どんなに技術的に正しくとも、売上が上がらずに企業が倒産してしまうなら、その技術を発揮したところで世の中に価値を届けられません。
一方、いくら目の前の売上が上がるからといって、技術的に間違ったものを提供すると、後になって大きな問題として返ってくるならば、ビジネス的にもトータルでマイナスとなり得ます。
この両者の隔たりを解決する方法は、大きく2つあるように思います。
1つは、いわゆる「プロダクトマネージャー」のような、ビジネスサイドとエンジニアサイドの両方のゴールを正しく理解した上で、適切な判断、コミュニケーションを取れるメンバーを間に置くことです。
そのうえで、ビジネスサイドはビジネスとしてのゴールを追求し、エンジニアサイドは技術としての理想形を追求し、プロダクトマネージャーはプロダクトとしての理想形を追求します。
この3者がかみ合えば、全体としてのミッションと個々のミッションがともに達成される理想的なサイクルを作ることが可能です。
ただ、このプロダクトマネージャーをこなせるメンバーには高いスキルや経験値が求められるため、そのようなメンバーをいつでも用意できるとは限りません。
その場合に取れるもう一つの解決策は、ビジネスサイド、エンジニアサイドともに、それぞれのメンバーが双方の目的意識、達成したいゴールの違いを十分に認識することです。
プロダクトの開発や展開を進める中で、意見の相違、対立があった際、背景にある目的意識の違いに目を向けられると、その本質的な原因に気づき、一段高い視点だったり、全く違った角度からの解決策を見出すことができます。
もちろんチームのメンバーが全員、それぞれ相手の目的意識を認識できればいいのですが、そこが難しい場合は、まずは自分一人から始めても良いと思います。
技術を目的としてみたときの意見なのか、手段として見たときの意見なのか、相手の目的意識を常に考えることで、建設的にコミュニケーションし、問題を解決できようになります。
技術やビジネスに限らない話ではあるのですが、個々人がひっそりと根底に持っている目的意識を意識しながらコミュニケーションすることには、大きなメリットがあるのです。
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