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【2022.07.14】芦田愛菜『まなの本棚』

宝探しみたいに本の世界へ入っていきます

◇私的要約

著者の芦田愛菜さんは、小さい頃から『何が欲しい?』と尋ねられたら真っ先に『本が欲しい』というほど読書が大好きな子どもだった。
そんな芦田さんが、『なぜ本が好きなのか』という理由の一つに、『ページに並んだ活字から自分の想像で物語の世界を作り上げていく楽しさ』を挙げている。場面の情景や登場人物の姿まで、自分自身の想像力で物語の世界に出てくるすべての色も形も好きに決めてプロデュースできることの魅力を知ってしまったら、もうこの楽しみを手放すことはできないそうだ。
また、『自分とは違う誰かの人生や心の中を知ること』に興味があるからだとも述べてある。自分一人の人生だけでは経験できないことや、自分では考えもつかないような発想が本の中には詰まっており、読むたびに発見があるのだそうだ。
芦田さんは幼い頃からお芝居の仕事をされており、自分とは違う誰かの人生を演じてきた。『本を読む』ということは、自分以外の誰かの考え方や人生を知る『疑似体験』という意味で、とても近いものではないかと本書の中で分析されている。

そんな芦田さんは、よく『おすすめの本』は何かと聞かれることがあるそうだ。
芦田さんとしては、人それぞれの見方や考え方があるので、自分にとって感動的な本だったとしても、それが他の人の心にもすごく響くとは限らないかもしれないと考えている。それは、芦田さんにとって、読みたい本を見つけるのは『宝物を発見』するのと同じであり、また、『人と出会う』のと同じで、自分で探し出したり巡り合ったりするからおもしろいものであり、出会おうと思って出会うのではなく、気づいたら出会ってしまっていることもあると考えているからだ。もちろん、読んだ本の感動を友達や周りの人に伝えたくなる瞬間もたくさんあるのだが、おすすめという形で、その人の大切な本との出会いを自分が決めてしまっていいのか、やはり、その時に自分自身が惹かれて選んだ本こそが、その人の人生を変えてしまうような『運命の一冊』になることが多いのではないかと思っているそうだ。

本書は、芦田さんがこれまで読んできた本の中の約100冊が紹介されているが、これは、本が好きな人はもちろん、これまであまり本を読んでこなかった人も、子どもも大人も『芦田さんの本棚』を覗くことで『普段あまり本を読まないけど、ちょっと読んでみようか』というきっかけにしてもらいたい、この本を通じて読者が新たな本と出会い、本が新たな世界へ連れて行ってくれるようにとの願いが込められているのだ。

◇教育×読書

何のために本を読むのか。
大人の読書と子どもの読書でもまた目的は違うと思うが、読書には、『学び』の側面と『趣味=楽しみ』の側面があるのだと思う。例えば、大人にとっての読書の例としては、ビジネス書などはスキルの習得、つまり『学び』のための読書だろう。他方、小説を読むのは『趣味=楽しみ』のための読書だと思う。
では、子どもの読書はどうなのだろうか。
子どもにとっての読書もやはり、『学び』の側面と、『趣味』の側面があるのだろう。
『学び』の側面に注目すると、子どもが『読書』することによって得られるスキルとして大人が期待するのは『読解力』だろう。よく保護者懇談をしていると、『本を読まない』から『読解力がない』というのを保護者から聞く。それはそうだろう。活字に触れ、丁寧に文章を読んでいくことを身につけなければ『読解力』というのはつかないと思う。それはそれでもちろん大事なのだが、低学年の子たちが読書から得られる最大の効果として私が最近感じているのは、芦田さんも本書で述べられていた通り、『疑似体験』が生み出す『経験』と『想像力』なのではないかということだ。
例えば、芥川龍之介の『トロッコ』を読んだとして、『トロッコ』そのものがどんなものかを想像できる子は、果たしてどれくらいいるだろうか。実物のトロッコを見ることができる機会というのは、今どきあまりないのではないだろうか。わからなければ自分で調べたり、大人に聞いたりしていきながら、文字からどんなものかを想像していく力を養っていくこと、そして普段の自分では体験できないことを本の中で疑似体験していきながら、自分の中のいわゆる『一般常識』・『一般知識』と呼ばれるものを増やしていくことこそが、幼い頃に読書が勧められる理由なのではないだろうか。体験したことがないことは、もちろん想像しづらい。大学入試の理系科目などは、状況設定の把握など、文章から読み取るイメージが大事なものも多い。だからこそ、低学年の内から読書を通じて疑似体験をしていく中で、自分の経験を増やしながら、その経験をもとにイメージを膨らませる力を養っていくのは大事なのではないだろうか。
そしてこの疑似体験こそが、子どもたちの『ワクワク』につながってくれれば、本を読むことが大好きになってくれるのだろう。本が好きな子は、『楽しみながら学ぶ』という最強の勉強法(しかも無意識)を身につけているのだ。

◇私的感想

本当に、10代の子が書いた文章(本)なのだろうかというのが正直な感想です。
言い回しなどには幼さも垣間見え、年相応のものですが、内容については、読書の本質をとらえている素晴らしい本だと思います。
『読解力』とは何だろうと、最近、改めて考えます。
それは、本文の内容をきちんと把握することであるのは間違いないのですが、本文の内容をきちんと把握するためには、語彙力も必要だし、想像力も必要だと思います。数学や物理の文章問題については、この想像力というのが大きなウェイトを占めているんじゃないでしょうか。想像するには、ある程度の経験も必要なのだと思います。
この2年ほど、行動制限せざるを得ない状況が続いた中で、あらゆるものを体験できない幼少期や青春時代を過ごしてきたお子さんたちにこそ、読書を通じての疑似体験をどんどんしていってもらいたいなと改めて感じた一冊でした。
素晴らしい本との出会い、ありがとうございました。

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