【MIL】前半戦の振り返りpart1 ~奪三振力低下と守備力向上~
ブルワーズ担当のあなんです。
前半戦最後の17連戦を目前に振り返りをします。
今回はpart1ということで全体成績をメインに振り返っていきます。個々の選手については次回に。
☆ 全体成績
はじめに勝敗から。
素晴らしい開幕スタートダッシュを切ったものの、5月に負けがこみ6月には一時貯金が0に。それでも地区順位は2位です。
ちなみにピタゴラス勝率によると、ブルワーズは5割切るどころか地区4位です。
次に野手・投手の成績。2022, 2023年いずれも74試合消化時点での成績です。
投手・野手成績いずれも大幅に悪化しています。得失点差は+11から-26。ともにfWARを4以上下げています。改善されているのは守備のみです。
ではここからは打撃・投手・守備に分けて振り返りをしつつ、気になる点についてお話しします。
☆ 打撃
昨年から何ひとつ進化せず、何なら後退しています。開幕直前noteで「空いた穴を埋めただけで上積みはない」と分析しましたが、見事予想通り。今年も貧打で投手を見殺しにしています。
スタートダッシュはうまく切れていました。ルーキーと新加入選手の活躍で4月時点のwRC+は95(それでも全体20位)。しかし彼らのブーストが切れると成績も直滑降。5月と6月のwRC+は80と78でいずれも下から5番目以下です。
ポイントとしてひとつ挙げると、対左投手の成績が著しく悪い。4月は対右の103wRC+(全体14位)に対して、対左は72(同29位)。あまりの低さにフロントは5/15に左キラーのDarin RufをFAで獲得しますが、一塁守備で右ひざを怪我しわずか2週間でILへ。その後6/14にRamiel Tapia(左打者)をFAで獲得しましたが、弱点解消には至ってません。
地区優勝を""本気で""狙うならばTDLで右打者を補強すべきでしょう。しかしそうはならないのがブルワーズ。フィールディングを軸にした編成が組まれている点(後述)や、Voitとのロスター争いに敗れ開幕直前にDFAとなったKeston Hiuraがマイナーで好調を維持していることを考えると、今年も目立った野手の補強はしないと予想します。
☆ 投手
全体的に印象との乖離がないため、あまり言及することはありません。5月だけERA-/FIP-が跳ね上がっていますが、原因は怪我人の続出と大量失点した試合が複数あったというだけのことです。
さて、この章で注目したいのはFIP。先発・リリーフともに平均以下です。昨年は74試合時点で95(先発)/92(リリーフ)ですので、明らかに悪化しています。
FIP悪化の原因はなにか。その前にまず、FIPはどのように求められるのか整理します。FIPで用いられる項目は奪三振・与四死球・被本塁打の3つです。
このような計算式ですので、大雑把にいうと奪三振が増えればFIPは下がり、HRと与四死球が増えればFIP値は上がります。
では、今年のFIP悪化は何が原因か。明らかに変化している指標は奪三振率と被本塁打率です。
特に注目したいのは奪三振率の低下。ブルワーズは長い間奪三振マシーンを多く抱えていましたが、今年は一転して三振を奪えなくなっているのです。
この原因は、退団・怪我離脱組の穴を打たせてとる(バビる)タイプの投手で補っている点もありますが、それだけではありません。昨年から在籍している投手も下がっています。
このうち、Lauer、Houser、Strzelecki、Milnerは原因がはっきりしています。Lauerは怪我、Houserはそもそもシンカーボーラー、Strzeleckiは新たにシンカーを習得、Milnerは変則左腕です。
一方、Burnesは怪我や新球種習得などなく、シンプルにスタッツが悪くなっています。ボール球のコンタクト率(Chase Contact%)は43.3%から51.3%、空振り率(whiff%)は35.2%から27.9%に悪化しています。Burnesの奪三振能力が低下しているのか、はたまたピッチクロックの影響を受けているのか。ここまで成績を落とすと、24年オフにFAとなる彼を夏に放出して利確を図る可能性も浮上しています。
☆ 守備
守備指標はトップクラスに改善されました。
ポジション別にみると、センターライン(C, 2B, SS, CF)と外野全般が優れています。
守備の章で注目したいのは2BとCF。2Bは現在Owen MillerとLuis Uríasでシェアしていますが、6月頭まではBrice Turangが座っていました(6/7にマイナーオプション行使)。CFは開幕戦をGarrett Mitchellで迎えるも、4月中旬に右肩の怪我で今季絶望。現在はJoey Wiemerが正CFを務めています。
このTurangとWiemer。ともに開幕3連戦でMLBデビューしたルーキーですが、打撃は最下位クラスに位置しています。5月までのwRC+は下から3番目と6番目です(対象:170PA以上の打者188人)。しかしTurangは降格するまで43/61試合にスタメン出場し、WiemerはMitchellの離脱以降スタメンを外れた試合は2試合。2人とも出場機会を与えられ続けていました。
チーム全体が貧打に苦しむなか、なぜ打てないルーキーコンビがスタメンを守っていたのか。これには今年のブルワーズの編成方針が関係していると推測します。2023年スタートのシフト制限はブルワーズに追い風とみられました。奪三振力に長けた投手を多く抱えていたためです。しかし当のブルワーズは野手のフィールディングに重きを置いたのです。そういえる根拠を2つ。
まずルーキーコンビの守備指標。
それぞれ2Bと外野の守備でプラスを生んでいます。特にWiemerのUZRはKevin Kiemierに次ぐ数字。TurangもFielding : 60にケチのつかない、上位の数字を残しています。
続いてオフの動き。FAで獲得したBlake Perkins(元NYY)とBrian Anderson(元MIA)はともに守備の優れた野手です。また、守備重視を象徴するトレードがSEAとのKolten Wongのトレード。一般的な見方は「フルタイムDHを求めるMILと正二塁手を求めるSEAで利害が一致した」というものですが、今振り返ると守備で大きくマイナスを作っていたWongは初めから構想外だったといえます。そしてそれはTurangが2ヶ月以上起用されていた理由でもあります。Turangは打撃面でWong以上の貢献は見込めないですが守備でそのマイナスをカバーできるとみたのでしょう。
ここ数年、ブルワーズは投手中心のチームでしたが、今年は守備を軸にしたチームとなっています。Turang, Wiemerの抜擢はその方針に沿ったものでしょう。守備でリズムを作って攻撃に生かす。高校野球で頻出のフレーズが頭に浮かびますね(なお攻撃には生かされてない模様)。
☆ さいごに
前半戦振り返りとは少し横道に外れますが、奪三振数減少と守備力向上が同時進行しているのは偶然なのでしょうか、はたまたフロントの狙い通りなのでしょうか。一見すると前者に見えますが、MILのことですから後者の可能性も捨てきれません。後者の場合TDLの動向もいっそう読みづらくなっていきます。
レッズとパイレーツの台頭で勢力図が変わりつつあるNL中地区。後半戦の展開も見逃せませんが、フロントの動向にも要注目です。
今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。