【MIL】MLBデビュー直前のトッププロスペクトChourioと8年契約
ブルワーズ担当のあなんです。
今回は12/5に長期契約を結んだChourioについてお話しします。
○ プロフィール
名前:Jackson Chourio (ジャクソン=チョーリオ)
生年月日:2004年3月11日
出身 :ベネズエラ
身長体重:185cm / 75kg
投打 :右 / 右
○ 経歴
Chourioは20-21年の国際FAでブルワーズと契約金$1.8Mという破格の金額で入団しました。当時16歳のChourioは打撃・守備・走塁いずれも高評価を受けており、国際FAランキングで18位に位置していました。
キャリア1年目の21年シーズンからルーキーリーグで存在感を見せつけると、2年目の昨年は1Aで62試合に出場し.324/.373/.600、12HR / 47打点 / 10盗塁の大暴れ。フューチャーズゲームに2004年生まれの選手で唯一出場するだけでなく、1AのリーグMVPに輝きました。
3年目の今シーズンは2Aと3Aに計128試合(122試合/6試合)に出場し、打率.283 / 22HR / 91打点 / 44盗塁 / 112wRC+。マイナーリーグではブレーブスのAcuna. Jr以来5人目となる20歳未満で20-40を達成しました。
○ Chourioの契約内容
ベースは契約金$2Mを含む8年$82M。加えて2年のクラブオプションと出来高が含まれており、最大10年総額$142.5Mとなっています。
○ 異例づくしのエクステンション
MLBデビュー前の選手と契約したのはブルワーズにとって今回が初。というより、そもそも調停前の若手と契約延長した例すら数える程度しかない。直近では2022年夏に2年目のAaron Ashbyと5年$20.5Mで、2020年の春に3年目のFreddy Peraltaと5年$15.5Mでそれぞれ契約延長している。さらに遡ると、2008年当時24歳の2年目Ryan Braunと8年$45Mの契約を結んでいる。
それらと比較すると、今回の契約の異質さがはっきりする。前2件はFAまでのサラリーを確定させる意味合いが強く、かつ非常にリーズナブルだ。Braunの場合、前年にNL新人王を受賞しており、活躍する未来がほぼ確実という点で契約延長は合理的な選択と言える。
それに対して、Chourioの契約はFAまでの6年で$45M(サービスタイム調整を考慮すると7年$61M)だ。さらにChourioはプロデビューしてわずか3年しか経っていないうえ、3Aすら経験していないに等しい。
また、MLB全体でみても異例の契約だ。
これまでサービスタイムゼロで長期契約を結んだ選手は5人いる。
①Jon Singleton (22) (アストロズ)
②Scott Kingery (24) (フィリーズ)
③Eloy Jimenez (22) (ホワイトソックス)
④Evan White (24) (マリナーズ)
⑤Luis Robert Jr. (22) (ホワイトソックス)
この5人はいずれも22歳~24歳で契約しており、20歳未満で契約したケースはChourioが初めて。非常に若いという点でまずひとつ特殊だが、実戦経験値という点でも大きく異なる。RobertとWhiteを除く3人はマイナーで300試合以上出場しているが、Chourioは3年で272試合にとどまっている。加えて、Whiteを除く4人は契約前年に3Aで200打席以上立っているが、Chourioはわずか6試合24打席だ。
年齢が低く実戦経験も乏しいChourioだが、そんな彼と長期契約を結んだことにはブルワーズなどのスモールマーケットならではの理由が考えられる。
近年、若手有望株をデビュー直後に長期契約で囲うケースが多くある。しかし、それらは非常に大規模なものだ。直近では、23年春にダイヤモンドバックスがCorbin Carrol(MLS:0.038)と8年$111M、22年夏にマリナーズがJulio Rodriguez(MLS:0.141)と13年$210Mの大型契約を結んだ。同じベネズエラ出身の5ツールプレーヤーとしてしばしば引き合いに出されるAcunaも、2年目の2019年春に8年$100Mの契約を結んでいる。
このような超大型契約を結ぶ資金力のないブルワーズが未来のスターをつなぎとめるにはMLBデビュー前しかない。デビューしてスーパースターとしての価値がはっきりしてからでは遅いのだ。
いうまでも無く不安要素は大きい。3A経験が少ないChourioが果たしてMLBに適応するのか。2人目のAcunaが誕生することなどあるのだろうか。2匹目のドジョウを狙うにはあまりにリスキーだ。前述の5人のうち、現在も第一線にいるのはRobertとJimenezのみ。3人は一瞬の輝きこそ見せたものの、泡沫のごとく消えてしまっている。さらに不吉なことに、この契約が発表された同日、Whiteがサラリーダンプによってブレーブスに放出された。嫌な雰囲気が漂う。
○ 起用方針
16歳で指名された当時はショートをメインに守っていたChourioだが、現在はセンターが主戦場だ。今回の契約により、開幕戦をセンターでデビューを飾るという見方が強い。しかしPat Murphy新監督は記者会見で「この契約によって開幕ロースター入りが確定したわけではない。背番号11(彼の新番号)は自ら掴んでもらう」と話している。監督をはじめフロントは3月に20歳になるスターを慎重に起用していくとみられる。
○ さいごに
ここからは完全に私の推測である。
ブルワーズは今後、投手偏重からの脱却を狙うのではないだろうか。
私がブルワーズを追い始めた2018年以降、チームは投手中心のチーム編成を組んでおり、打力は平均前後を推移している。投手は生え抜きがチームを支える中、野手はトレード以外の補強は単年~2年の短期契約でつないでいた。
それが、20年ドラフト1位のMitchellを皮切りにTurang、Wiemer、Frelickと生え抜きの打者が続々MLBデビューを飾っている。3BのTyler Blackも24年のデビューが確実だ。また同時に、これまでチームを支えていた鉄壁投手陣が解体されつつある。既にHaderとWoodruffがチームを去っているが、24年オフにはBurnesが、25年オフにはWilliamsがFAとなる。
マイナーに有望な投手も複数いるなか、それを上回るペースでプロスペクト野手がデビューしている今こそ、攻撃面の比重を上げた編成を組むのではないだろうか。そしてその中心にChourioがいるのではないかと推測する。WoodruffとLauerで空いたローテの穴をMileyとReaで埋めていることからもその意図が伺える。
とにもかくにも、ブルワーズのスター野手はYelich以来だ。生え抜きに限定するとBraunにまでさかのぼる。ファンとしてYelich、BraunのようなMVP級の活躍を期待してやまない。5ツールプレーヤーとしてチームの核を担う姿を心より待ち望んでいる。
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