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難波麻人
2024年8月12日 01:48
「なんか炭酸が飲みたいなぁ…」 これは僕が子供の頃に時々聞いた、母親の口癖のような言葉だ。 家にスナック菓子やチョコレートなどは基本的に置いておらず、小学校の二年になるまでは駄菓子屋にも行ったことがなかった。 お菓子や甘い物を食べたい時は、いつだって母親の手作りが当たり前だった。 駄菓子屋で買ったお菓子をビニール袋に入れて公園を走り回る光景に憧れはあったものの、子供のためを想い、
2024年8月1日 22:16
夏を迎え、昔ほどではないが心霊番組なども放送する季節になって来た。 僕の知り合いには幽霊が見えるという男がいて、今ではほとんど会うことはないが、心霊番組などを見るとふと彼のことを思い出すことがある。 彼と一緒にいる時など、いきなり「ワーッ!」と叫び声を上げることがあり、どうしたのかと訊ねると、黒い人影が後ろに立っていたのだと怯えて答えたりするのだった。 ただ通常と違うのがそういった反応の
2021年1月24日 11:28
いつまでも頭の中にこびりついて剥がれない記憶がある。 それは初めて恋をした瞬間の高鳴りや、酷く打ちのめされた瞬間の痛みではない。 そのほとんどが自分とは直接関係のない、ぼんやりと浮かんだ月のような記憶だ。 普段から意識しているわけではないが、ふと見上げればそこにある記憶。 保育園に通っていた僕は四階建ての団地に住んでいた。団地の前には住人用の駐輪場や駐車場が広がっており、団地の入り口か