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時間の厚みを観るために 引越し映画5選

生きている時間を客観的に観ることは難しいですが、映画であれば可能です。その中でも引越しは時間を観るのに面白い題材だと思います。

引越しを描くことで、登場人物の生活環境や内面に何かしら変化が訪れます。新しい生活にシフトすることで、以前の暮らしが遠のいていき、観客の頭の中で時間が堆積していくような感覚を覚えます。

ここでは引越し映画の中でも、時間の厚みを感じられるタイプの映画を5本紹介したいと思います。

⚠️ネタバレを含みます。


『スティルウォーター』

異国の刑務所に収監されている娘の救出も難航、むしろ現地の人の助けを借りて居候しながら異文化に馴染んでいく様子が描かれます。
途中で資金不足に陥いるが、ドンパチ派手にやって凌ぐ訳でもなく、現地で働いて解決しようとする。観てる方も「この人、何しに来たんだっけ、このまま移住するのかな」、と本来の目的を忘れる瞬間がある。この今の生活に押し出されるようにして、“”忘れる“”という感覚が面白い。
母国での暮らしと同じ行動が反復される中で現れる差異によって、主人公に起こる変化が見て取れるのもいい。

『フォーザー』

引越して数年経つと、あんなに長年住んでた、前の家の細部が思い出せなくなってることありますよね。

『あのこは貴族』

大事な日はいつも雨、というセリフが出てくるくらい雨が印象に残る映画。ある引越しを決意する場面、蝉の声で2人にとって重要な日が晴れていることに気づき、そして季節が変わっていたこと、2人の生活の時間の経過を客観的に意識させられるシーンでもあります。

『夏をゆく人々』

引越し作業も終わり、最後の鍵閉めの時、ガランとした部屋を見て、まるで知らない家のような、家具とともに思い出まで消え去ったかのような気持ちになったことってありますよね。


『僕のエリ 200歳の少女』ネタバレあり

引越しと新生活が描かれるのは主人公ではなく、なんと隣人。しかしラストで主人公が将来、隣人と似たような生活を送る可能性が示唆されます。引っ越しても生活は変わらないが、肝心の“”人“”が変わる。
本編で描かれてきた“”時間“”は、その後に主人公によって繰り返されるかもしれないものだった、という風変わりな引越し映画です。


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