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感想【NEWTYPE ニュータイプの時代】:山口 周 著

読み始めてすぐに、自分は「ニュータイプかも」と思った。
しかし、それにも関わらず結果は出せていない。
なぜ結果が出せないのか。浅はかにもそう考えている時点で、本当は「オールドタイプ」なのかもしれない。
本書は、新時代を生き抜くための24の思考と行動様式について、実例を交えてわかりやすく解説している。
それでは、新しい時代を生き抜くためには、その24の思考と行動様式に従えばよいのかというと、そうではないように思われる。
本書が教えてくれることは、少なくともこれまでの価値判断に縛られたいわゆる「オールドタイプ」の思考では、予測できない未来が待っているこれからの世界を生き抜くことが困難になるということだ。
すなわち、これまでの価値判断に縛られずに考えることを求めている。
我々の多くが子どものころから偉人たちの伝記をたくさん読んできた。もしくは読まされてきた。偉人たちは成功を勝ち取るために努力を重ね、一つのことを成すために人生をささげてきた。それこそが人として生きる上での美徳であり、模範だった。
しかし、そんな一昔前の成功物語や模範が通用しない時代が来ていることをどれだけの人が意識しているだろうか。就職に有利なのは理系で、ある技術を突き詰めて問題を解決できる人が重宝される世の中は終焉を迎えた。
先進国では物があふれ、贅沢しなければ何とか生きていける世界にあって、もはや解決すべき問題を見つけることのほうが難しくなっている。
問題に対する模範解答は生成AIが簡単に教えてくれるからこそ、1+1を2にも3にもできる能力よりもむしろ、そもそもゼロを1にする能力、すなわち問題そのものを発見する能力が求められる時代だ。
生成AIに例えるなら、最適なプロンプトを考える能力こそが必要になるということであり、一つの仕事を突き詰めて様々な経験が重宝された時代から、自分に合わないと思えば仕事を変え、環境を変えて結果を出していく。
採算が合わなければ新規事業であっても速やかに撤退する判断ができること、すなわち、何ものにも縛られない自由な思考こそが重要な力となるかもしれない。
つまり、これまで多くの人が後ろめたさを感じていた「途中でやめる」「ドロップアウトする」「仕事をコロコロと変える」といったネガティブな印象が付きまとう行動様式や判断が、むしろ結果を生み出し、これからの時代を生き抜く上で重要な意味を持つような古い価値判断では評価できない時代がそこまできている今こそ、自分自身のこれまでの価値判断はいったん横に置いておき、改めて周囲の人々の生き方や自分自身のあり方を見つめなおし、考えるべき時が来ていることを教えてくれる良書である。


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