ver.2.1【文字起こし(人力)】J-POP LEGEND CAFE ゲスト:大貫妙子さん
ver.2.1では、重大な誤記を修正、汗。たやたえ(×)→たけたえ(〇)
ver.2では、感想追加と文章校正など。
ver.1.1では、抜けていた曲目「夏に恋する女たち」を追加、誤記を修正。
ver.1を一旦upしましたが感想など追記していきます。
3週にわたる極上の ”たけたえ” トーク”集。聴き始めて間もない私には勉強になることが盛りだくさんでしたー✨ きっと、あとから振り返ることがありそうなので文字起こしと感想などをまとめておきます~♪
大貫さんファンが気になってた あのことについても引き出してくれた田家さんに拍手を~👏
人力の文字起こしなので、恐らく細かい間違いがありますが、どうかご容赦を💦
番組はこの曲で静かに始まります。
突然の贈りもの(Taeko Onuki Concert 2023)
田家(たけ)秀樹さん(以後、田:)こんばんは、FMCOCOLO J‐POP LEGEND CAFE マスター田家秀樹です。
田:今流れているのは大貫妙子さんの「突然の贈りもの」。今年(2024年)の5月に発売になったライブアルバム『Taeko Onuki Concert 2023』からお聴きいただいています。オリジナルは1978年に発売になった3枚目のソロアルバム『NIGNONNE』の中の曲です。今週から3週間、この曲を前テーマにお送りします。今お聴きいただいているこのアルバム『Taeko Onuki Concert 2023』は去年の11月に東京世田谷の昭和女子大人見記念講堂で行われたライブの模様を収めたものですね。この時のアンコールの1曲目が「突然の贈りもの」でした。
田:1975年に山下達郎らとシュガー・ベイブで(アルバム)デビューし来年で50周年。時流にこびない、揺るぎないマイペースで活動を続ける孤高のシンガーソングライター大貫妙子。近年はこれまでになく活発な活動を見せ、今年はフジロック出演など話題の尽きない2024年。2021年にリマスタリングされブームの切欠となった1978-84年にかけての6枚のアルバムを今週は紹介します。
2024/9/16(1週目)
田:こんばんは。
妙:こんばんは。
田:孤高と言っておきながら話題の尽きない2024年ですね。
妙:長くやってますけどフジロックはずっと知っていた。ま、呼ばれることもなく・・私をロックだって知らないのかなと、笑。嬉しかったし、楽しかったです。
田:でませんか言われて驚きました?
妙:いや、やっと来たかと、笑。ずうずうしいですけど。
田:出てみて?
妙:楽しかったです。いろんなことがあって。お客さんも楽しんでくれて。 演奏は坂本さんとやった初期のころのものでしたが。
田:若いお客さんはシティポップのヒロインだっていうイメージもあるんでしょうから。
妙:私は、あまりそういうのシティポップとかも考えていなくて。
田:ご本人は今のブームみたいなのはどう受け止めてらっしゃるんですか?
妙:嬉しいですけど・・「都会」とかも初期の曲なので・・なんでそんなに急に売れてるんだろうって。分からないです。
田:そういうお話はおいおい(伺うこととして)。1976年に1stアルバム『Grey Skies』でデビューされて、リマスタングは78年の3枚目の『MIGNONNE』からRCA時代の6枚のアルバム。大貫さんの中で特別な時代だったっていうのはあるんですか?
妙:どんどん忘れていく方なので、笑。どんどん”生き切る”というか、過去は過去、ここに生まれてきて自分という名前をもらって音楽を続けてきて、(”生き切る”というと)言葉は強いですが、悔いなく・・今は前に進むのものろくなってますけど、笑。ずっとそういう感じなんです。
田:そういう方に無理やり(頼んで)過去に引き戻そうという、そういう3週間かも知れませんが・・笑。それぞれのアルバムから1-2曲ずつ選んでいただいたんですが、まずはこの1978年の『MIGNONNE』から選んでいただいたのがこの「海と少年」です。
1.海と少年
田:2021年に再発された3枚目のアルバム『MIGNONNE』、フランス語で”かわいい女の子”。この曲(アルバム)で思い出すのはどういうことですか?
妙:あまりに昔の話ですが・・RCに移籍してその時の社長さんに呼ばれて「ひとつ、売れるものをよろしくお願いします!」って!?
田:ははは。なるほどね~。
妙:それまでやってきて・・その時3年目ですけど。”売れるものを”って言われたこと無いんですよね、苦笑。なのでその時、売れるものって・・どうすればいいんだろうって。それと、え?そんなこと言われるんだったら契約するのやめようかなとも。思ったくらい、笑。まあ、若かったのでねー。
田:「海と少年」は先の前テーマの「突然の贈りもの」と並んでカバー多いでしょう?
妙:そうですか?
田:これ槇原さんが1989年に『Litson to the music』でカバーしてるんですよ。
妙:そうでしたね。
田:この”少年性”ってのが大貫さんの中でずっと続いている何かなんでしょうし・・。
妙:少女のことは分からないですけど。・・女の子って割とすぐに大人になっちゃうんですよね。
田:はあ、はあ、はあ、(なるほど)!
妙:何か少年の日焼けした?真っ黒けになっちゃうじゃないですか?ああいうのっていいなーって。これを作ってた時に。
田:いいタイトルですもんね。
2.若き日の望楼
田:大貫さんが選ばれた2曲目は1980年の『Romantique』から。
妙:フランス映画とかピエール・バルーとか聴いていたりして。なにか、ただこういう感じが好きということで。
田 歌詞の中の”見えぬ時代の壁”とか”帰り来ない青春”とか”なじみの狭い酒場”とかその辺がキュンと来る時代、世代なのかなと。
妙:そうですよね。その風景とか空気感とか匂いとかそういうものを歌詞にする時代でしたよね。
田:この”なじみの狭い酒場”で、あえてお聞きしようと思ったのが四谷にあったロック喫茶、”ディスク・チャート”です。
妙:あそこが始まりなのでね。
田:僕もそこで仕事してたんです。20代の髪の長い放送作家で、笑。
妙:(笑)みんな髪長かったの、山下君も長かったし。
田:そこで夜。大貫さん達がピアノ持ち込んでセッションしてたの全然知らなかったです・・💦
妙:そう。あたしあそこでバイトしてたんです。ウェイトレス。なんで始めたのか忘れちゃったんですけど、お客さんがいない時間に「音楽やってるんだ」って話になって、「じゃここで歌ってよ!」ってなって・・。歌う場所なんてないのに!
https://e.usen.com/archive/sub-archive/679.html
田:「若き日の望楼」にはそういった景色もあるんでしょうかね、笑。
このアルバム『ROMNTIQUE』は”ヨーロッパ3部作”の1名目と言われています。
妙:ですよね!”ヨーロッパ3部作”でもないんですけど。無理やり・・苦笑。
田:(笑)次の話をしましょうか。”ヨーロッパ3部作”の2枚目と言われている『AVENTURE』「アヴァンチュリエール」。
3.アヴァンチュリエール
田:1981年5月に発売になりました5枚目のアルバム『AVENTURE』から「アヴァンチュリエール」。さっきおしゃった、”ヨーロッパ3部作”なんてなかったとか。
妙:私が言ったわけじゃなくて、レコード会社の人がくくっちゃったというか。当時そういったアルバムが世の中になかったとうか、私がフランス映画の雰囲気が好きでそういうのを好んで書くというか、気持ちの中にまとっていたものがあってそういうことになったのかと。
田:でこの歌詞の中に”サントリン島”というのがあって、これは実際にあるんですね?
妙:あるんですよ。行ったことはないんですけど。
田:それはどこかでご覧になって?
妙:映画とかですね。
田:冒険者たちがモチーフだったというのがあるんですが?
妙:いや~お洒落だなっと思って、笑。
田:そのころ旅をしながら音楽を作るというイメージがあったんですか?
妙:食べるもの、空気、匂いも色も違うし。話している言葉も違うし。日本の中で音楽を作ると自由度がないというか、自分が吸収できないというか。ヨーロッパ映画もめちゃ好きだし、若い時はニューヨークにも住んでいたし。パリ、ロンドンにもアパート借りて住んでいたことがあるし、初期のころの後ではありますが。
田:その後の活動のある種の切欠、イメージになったのがこの頃のアルバムであるとか。
妙:そんなに深いこと考えず、やりたいことや好きで聴いていたことを纏って、しかも日本語なのに(笑)・・その辺の難しさを考えながら。でも楽しくやってました。
田:日本語なのに・・というのがこの後続くと思いますが。今日の4曲目です。1982年のアルバム『クリシェ』から「ピーターラビットとわたし」
4.ピーターラビットとわたし
by田:大貫さんというとこの曲ってイメージもありますが。
妙:そうですね。ピーターラビットは絵本も6集くらいあるのかな?それも全部持っていて。あと、「僕の伯父さん」とかも大人も楽しめるチャーミングなものは集めてますね。そんな絵本とか童話も結構持ってますね。好きだ嫌いだ振られたとか・・そういうんじゃなくて世の中にはほかにもいっぱいあって、なんでそういうのを音楽にしないんだろうって思っていたんですね、当時から。それで本棚から・・(本棚には)自分の好きなのがいっぱいあって。それじゃ「ピーターラビット」から作ろうかなって思って。なんか目の前がぱっと明るくなるようなものってポップスの中では無かったので。
田:で、この曲のアレンジは坂本さんでしょう?
妙:そうです。坂本さんにアレンジをお願いするときは曲を渡して・・「うん」とか「わかった」とかいうんですけど、どんどんやって行っちゃうんですよね、笑。すると、ちょっと違うんだけどな、汗。というのをいつ言い出したら良いのか分かんなくて。何か集中してコンピュータの中で音を作っているときに余計な事をいうと、「じゃあ、お前自分でやれ!」とかね、絶対怒る、笑。
田:いや~坂本さんの話はね(大貫さんのクスクス笑い声)、3週目のあの名盤『UTAU』のところで(クスクス継続)ゆっくりお聞きしたいと思います。
5.色彩都市
1982年のアルバムから「色彩都市」聴いていただいていますが、このタイトルが先だった?
妙:ええ、詩人の北園克衛さんの詩集があってその中にあって。教えてもらったんですよね。これ読んだらいいよって。当時のボーイフレンドから。それで・・その時代としては・・私 ”おしゃれ” って言葉はあまり使いたくないんですけど、品があって素晴らしい詩集なんですよね。
田:お~!
妙:そこからこのタイトル「色彩都市」をお借りしました。
田:大貫さんは先に曲にあって詞は後で。
妙:そうです。詞は後で。
田:曲はその時にできていたんですか?曲の雰囲気が”色彩都市”って言葉を思いおこさせたんですかね?
妙:そうですね。ただ音楽って言葉だけでなくてサウンドもひっくるめてなので。私は最後に歌詞を載せるので、坂本さんがこういうサウンドがいいんじゃないって考えた・・彼はどんどん作っちゃうんですが、それを聴きながら歌詞を。
田:坂本さんこの曲ではドラムを叩いている!
妙:そう。重めのね。すごく時間かかったんですけど、笑。でもあの何とも言えない重さ?ちょっと後ろになるような。
田:ドラマーのドラムとはちょっと違う?
妙:そう。で、飽きないんです。この曲。何度聴いても。もしかしたらあのドラムのせいじゃないかと。あのビート感とか。
田:この『クリシェ』は10曲入ってまして、4曲が坂本さんで、4(6の間違いですね。恐らく。)曲がMusyで、それはやっぱりヨーロッパ音楽をやっていたからという?
妙:そうですね。この人とやってみたいと思うと世界の果てまで行ってしまう自分なので、笑。ブラジル行ったりもそうですし。
田:なるほどね。でも大貫さんのイメージってそういうことしない。
妙:そうですか?そうですね?わかりません、笑。でもやっぱり、「Nature Magazine」で世界中行っているし。
田:パリ録音はこの時が初めて。
妙:ですね。このときJane Musy で、スタジオダブー(?裏取れず)というところで弦を入れたんですけど、床が木の床で、こげ茶色で何度も磨いたような油の色で、そこにオーケストラが入って自分の曲が、フランス人が素敵なスタジオであったかい音で、私の曲が形になっていくというのが感動以外なかったです。
田:いろんなシーンが思い出される。
6.夏に恋する女たち
1983年10月に発売になりました7枚目のアルバム『Signifie』から「夏に恋する女たち」でした。
田:夏って季語が入った曲がいっぱいありますが、良いタイトルだと思っていました。
妙:夏自体にそんなに思い入れはないんですが、なんとなく夏になると表に出るじゃないですか気持ちも。年とると日焼けしたくないって(田:熱中症とかも、笑。)思うけど。若い頃は、あー夏が来た~って感じだったので。
田:『クリシェ』では「夏色の服」って曲もありましたが。あらためてお聞きしたかったのは『シニフィエ』のタイトルですね、記号内容っていう!?
妙:これね。私が付けたんじゃなくてディレクターの宮田さんが凄い難しいの好きなんですよ。また難しいの考えたな~て。で、結構強引なんですよ。ター坊これで行こ、これで行こって。
田:『シニフィエ』はヨーロッパ3部作の卒業旅行みたいに思えたんですよ。坂本さんがテクノで5曲やって、清水信之さんと(鈴木)慶一さんがどこかヨーロッパ的なサウンドをやってというか。
妙:そうですね・・。でも坂本さんが忙しくなって、頼んでも全部はできないと、笑。だからと言って信之さんと慶一さんに頼んだ訳じゃないですけど。ず~とは私に関わってばかりはいられないと。
田:YMOもありましたものね。YMOはどんな風にご覧になってました?
妙:このメンバーだったらこんな音楽をやるだろうなと。すごく日本人らしいバンドというか。なにかそういう感じしますよね?
田:うんうんうん。
田:今回リマスタリングされたアルバムが6枚ありましてその6枚目が『カイエ』その中から「カイエⅠ」をお聴きいただきます。
7.カイエ(Ⅰ)
田:1984年6月に発売になりました8枚目のアルバム『カイエ』から「カイエ(Ⅰ)」でした。アカペラから始まっているアルバムってあまりないですよね。この時はオリジナルのビデオがあって、ずっとパリで撮影されたんですね。
妙:この時のアレンジャーのJane Musyにいろんな曲を聴かせたらなんでパリに住まないんだって、笑。外から見るパリのロマンチックさって住んでいる人は分からないじゃないですか。海外の人が日本を見てオリエンタルとか。(私の場合)余計に、昔のフランスのイメージをつくってるんじゃないかって。昔のフランス映画とか観て憧れてましたからね。
田:フランスの人から見ると、なんでこういうパリなんだろうって、もはやパリには無くなったようなパリがある。それでも今のシティポップのブームに似ていますね。(妙:う~~ん)アメリカの人から聞いたときに、今時こんなビートはないよって。なんで日本にそういうのがあるの?って。それで脚光浴びているようなところありますよね。
妙:うん。フランスの音楽が好きで影響を受けて書いたのが『カイエ』なので。やはり日本人が演奏するとこうにはならないので。いい悪いではなく。そういう音楽って理屈はなくて空気とか食べてるものとか住んでるところ全部じゃないですか。だからどうしても私の中で思い描くことがあると、フランスでもスペインでも行っちまう、笑。
田:なるほど、でもそういう大貫さんの音楽が(今ではもう)無くなったフレンチポップだと評価されることもあるかもしれませんね。
妙:ありましたね。フランスの子たちとポップス一緒に作ってたりしてたので。他のアルバムで。
田:なるほどね。アメリカだけじゃなくて世界中でこの頃の日本のポップスが(当時と)違う評価を浴びているって例になるんじゃないですか?
妙:う~ん、ですかね。
田:作ってる方からすると思いがけないというか。
妙:そうですね。思いがけないですけどだいぶ昔に作ったものなので、自分の中ではもう戸棚にしまっちゃってたっていうか、笑。
田:音楽って面白いなってあらためて思ってらっしゃる?
妙:そうですね。でも嬉しいとかそういう気持ちもないんですよね。おかしいけれど。今売れて嬉しい、昔のモノなのに、とか全然思わない。それはそれでそこに出来上がったものがあって置いてきて、今は自分の道を行っているわけで年齢とともに。だから・・ああ売れてんだ?って。ひどいですかね?笑。報われるためにやってるわけじゃない。すいません、なんかかわいくない女だなって思ってる?
田:汗笑。え~アルバム『カイエ』からもう一曲お届けします。
8.宇宙(コスモス)みつけた
田:これはNHKの『おしゃべり人物伝』という番組の主題歌で歌詞の中で”おしゃべり”という言葉がでてくるのは、そのせいでしょうね?
妙:はい。
田:”宇宙”って書いて”コスモス”って読ませるというのは?
妙:”うちゅうみつけた”だと・・”コスモス”の方がロマンティックって感じで。
田:これはシングルになっいて、B面が「メトロポリタン美術館」これはNHKのみんなの歌だった。
妙:そうですね。みんなの歌は結構やっていて。
田:でも子供向けの歌じゃないですよね。
妙:歌詞の最後に~絵の中に閉じ込められた(汗)。ってのがあるんですけど・・子供は楽しんで聴いてるんだけど最後のところで、わ~んって泣いちゃうって、笑。想像して怖くて、笑。ていう話は聞きました。
田:まあ,でもそういうヒットチャート以外の曲の届き方ってのもその時代その時代でいろいろやってこられているっていうのも。
妙:そうですね。みんなの歌は他の曲もやっていますが楽しい仕事ですね。
田:それこのアルムを最後にRCAを離れて90年までミディアムレコード1991年から2013年が東芝EMIとキャリアが続いていくわけですが。その中で振り返るとこの6枚というのは?
妙:続けて作らせていただいて幸運だったと。今はなかなか大変、アルバム一枚作るのって。大量にお金が要りますし。経済的なものが大きんじゃないかと思います。どうしても。だからそういう意味でもラッキーだったなと。
田:パリに行ったりいろんなところにいったり。
田:リマスタリングということで思うことはありますか?当時と違う音がしているとか?
妙:そうですね。機材も違ってるし。リマスタリングの時も行くもんね、一緒に。
田:お任せではなくて。
妙:そうですね。
田:そういう6枚がですね。リマスタリングして再発されました。来週はですね、最新のライブアルバムについていろいろお聞きしようと思います。
来週もよろしくお願いいます。
妙:よろしくお願いします。
田:新たにリマスタリングされて発売された1978~1984年の6枚のアルバムのご紹介をお送りしました。(今)流れてるのはこの番組の後テーマ竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」ですね。「突然の贈りもの」は竹内まりやさんも歌ったりしているので、そういう繋がりもあるなと思っていただけると嬉しいです。大貫妙子さんはですね。もう少し早く取り上げないといけないアーティストだったんですね。でアルバム6枚を1週間でってのも無謀だったなとあらためて思いながらお送りしています。来週と再来週も濃いいんでね、今週はこんな感じでやってみました。80年代のバブルな流れと関わりなく我が道を生きてきたという意味では稀有なシンガーソングライターだと思いましたね。しかもキャリアを重ねるごとに純化されてきた。キャリアを重ねるごとに垢が付いてきたりある種の余計なものが付くという人がいる中で・・それが全くなくて、どんどんどんどん純化されていくという。ある意味ではJ-POPの聖域と言っていいのかもしれませんね。僕らはもっと大衆的な音楽を扱ってきてるので、あまりインタビューの機会がなく20年ぶりにインタビューしたという3週間なんです。ここ数年はそうじゃない光の当たり方をしていて海外のシティポップブームとか思いがけない再評価の波が押し寄せている、それは日本のメディアは何をやっているんだってことに等しいんだと思いますが、それは彼女をずっと聴いてきたリスナーに敬意を表しながら、そしてこの3週間で新たな発見があるように願って来週もお送りしようと思います。
2024/9/23(2週目)
今週も「突然の贈りもの」Taeko Onuki Concert 2023でスタート。
田:今週はこのアルバム(『Taeko Onuki Concert 2023』)についていろいろお聞きしていきたいと思います。このコンサートは毎年行われているものなんですね。冬のコンサート。今年はこのライブアルバムだけでなく2010年の坂本さんとのライブアルバムがアナログ盤にもなって映画にもなりましたし、7月には東京と大阪で「ピーターと仲間たち」、そして今年の11月には「シンフォニックコンサート2024」があるんでしょう?やはりライブというものに対する考えが変わってきているのですか?
妙:まあ、歌えるうちは歌おうと思うんですけど。歌えるかな?って(笑)。ステージに向かうと声が出るんですけどマイクとお客さんがといると。先日もバンドでやったんですけど大丈夫かな?って。出来るのに勝手に自分の年齢のプレッシャーを感じちゃって。自信がないわけじゃないのに・・なんかちょっと不安?
田:フジロックもそんな感じで?
妙:出ちゃったら楽しくて、笑。ロックなのになんで呼んでくれなかったんだって気持ちで出ましたからね。トンボも来てくれましたし♪マイクの先に、先端に止まったんですよ。私、ハンドマイクじゃないので。前のお客さんは見えますよね。あ、トンボ止まってるよって。長くやってるけどマイクの先端にトンボが止まるなんて、いっちどもない経験だったので、全部歌い終わったら帰って行ったんですよ。
田:じゃ、聴きに来たんですね。
妙:みんな言うのが”坂本さん”だって。
田:来週、(『UTAU』で)「赤とんぼ」をおやりになっているので、お聴き頂こうとおもいます。
田:今日は去年のライブのアルバムなので思い出されることが先週より多いんじゃないかと思ってます。今日の1曲目です。
1.都会(Taeko Onuki Concert 2023)
田:オリジナルは1977年に発売になった2枚目のアルバム『SUNSHOWER』で(フジロックで)トンボ(が飛んできたの)はこの曲なんですって?『SUNSHOWER』は全曲坂本さんアレンジなんでしょう?
妙:だからネット上は皆、坂本さんだ~って、笑。その時ライブでやったのは全部、坂本さんアレンジなので。
田:なるほど、そういうことあるんですね。
田:この曲が入っているのは『SUNSHOWER』このアルバムはメンバーが凄いなと思いました。
妙:そうですね。でもこの人たちしかいないでしょって感じで、笑。
田:坂本さんはじめ、今井裕さん、渡辺香津美さん、細野晴臣さん、後藤次利さん、松木恒秀さん、でドラムがクリス・パーカー(あの伝説的なバンドの)スタッフ(のメンバー)。記事があって1977年に晴海で国際展示場で「ローリングココナツレビュー」っていう1週間のイベントがあったんです。そこにスタッフが来たんです。
妙:ローリングココナツレビューっていえば私たちの世代では良く知ってます。
田:そういう時代の人なんだなってあらためて思いました。
妙:私がですか?何言ってるんだか、笑。もう。
田:ソロになって2年目ですね。
妙:音楽やって来て自分のものが形になるって夢中でやっていたころですね。若くて元気だったし。例えば海外でレコーディングしようと思ったらどんどん行っちゃうし。今じゃ考えられないですけど。
田:あのシュガー・ベイブの解散の後は、解散の後遺症みたいなのはあったんですか?
妙:う~ん多分ないです!
田:なるほどね。こういうメンバーになったというのはこういうメンバーとやってみたかったっていうことだったんですね。
妙:そうですね。
田:そのころの曲をお聴きいただきます。今日2曲目です。
2.街(Taeko Onuki Concert 2023)
田:オリジナルはソロの1枚目のアルバム『Grey Skies』編曲は細野さん、大貫さん、坂本さん。先のバンド解散の後遺症はなかったという流れのなかでできた曲ですね。
妙:うん、後遺症はなかったですね。
田:でも、いろいろ読むとソロでできる自信もなかったと。
妙:それはそうですね。いつでもですよ。何時でも自信ないんで。でも何で後遺症がなかったかというと、山下君の作るものと、彼はスタイルで音楽やってるので、全然違うと・・バンドやってて痛いほど分かったので、笑。
田:自分は自分としての音楽をやっていくんだと。
妙:何のあてもなくですけどね、笑。そう思いましたね。
田:でこの「街」というのは20歳のころ一人暮らしを始めた頃のことを描いているってのがありました。
妙:そうですね。東京で会生まれて東京で育っているので、いっぱい人がいるじゃないですか?私友達いないんで・・。自分で作らないのが悪いんですけど、苦笑。そんな街の中を一人で歩いていると、あれ?私ってほんとに一人ぼっちなのかなって、泣きながら帰ったことあるんですよ。人混みの中をボロボロと。そういうのがあって書いたんですけど。
田:このころの孤独感ってありますよね。
妙:だからと言っても会いたくもないのに付き合わなければならないってのも苦手な方だったので。
妙:でそういうのを自分で選んでいるのに、やっぱりひとりだと寂しいと・・ボロボロと、苦笑。可笑しいよねー。
田:一人でやっていけるんだろうかと思ったときに一番大きかったことは何ですか?
妙:やっぱり・・仲間がいない。必要なんですよね。音楽って。ソロでやらりませんかって話があっても、そういうもんじゃない。何をやればいいんだって。自信がないんじゃなくて、どうするんだろうって。
田:そんな中、できるよター坊って言ってくれた人が何人かいるんですね。
妙:で、いつの間にかってことになりますかね!?
田:プロデューサーの松村さん、坂本さんもそうだったんですね。そんな話を来週もしようと思いますが。今日の3曲目。
3.朝のパレット(Taeko Onuki Concert 2023)
田:これは2022年に配信でシングル発売された新曲なんですね。2005年の「One Fine Day」以来の新作だった。でもコンサートでは前から歌われていた・・。
妙:コンサートはずっとやっていたので。でも一曲くらい新曲ないとね、とは思っていて。網守さんという若いアレンジャーにお願いしたんですけど。
田:今のバンドのメンバー、この曲の編曲とピアノとプログラミングが網守将平さん。
妙:網守さんって、ある日私のパソコン開いてポンと押したら、彼の「偶然の惑星」ってのがポンと出てきたんですよ。
これいいねってなって、だれだれ?っていうのから始まって。マネージャーに聞いたらこうこうこういう人だよって。
田:芸大で坂本さんの後輩だった。
妙:そんなこと知らず「偶然の惑星」ってすごくいいんで、メロディの音の飛ぶ感じとか・・自分もそうなんだけど。コード感とかも。それで今世に流れているのと全然違うと思って、会ってすぐお願いしたの。
田:「朝のパレット」は網守さんが居てできたというところがある?
妙:そうですね・・多分。やっぱり何かモチベーションがないと。坂本さんとやりたいって思っても、天国にいらっしゃるので、アレンジャーが必要なので。でもなかなか・・出会えてないんですよね。そこを開いた、そこに出会いがあった。というのが不思議ですよね。多分、出会うべくして出会ったんでしょうけど。私にとってはですよ。彼にとってはいい迷惑かもしれませんが・・笑。
田:坂本さんと網守さんもお付き合いが。後にできたんですかね?
妙:前から。芸大の後輩だったし。やっぱりご縁ってあるんですね。だからどうってわけではないんだけど、私も積極的に友達作らなきゃって方でもないし、一人でいることが多いんですけど、でも絶対会うんですよねこういう人とは。
田:なるほどね。歌詞の中に”私の愛してるもの、お金では買えないもの”ってのがありましたね。それはもう?
妙:一番伝えたいこと、笑。そういう歌詞を泥臭いサウンドに乗せてると、こうほんといやじゃないですか、笑。彼のサウンドにこういう歌詞が載っているとふっと風が吹くようで良いなって思いました。そういうアレンジャーに出会いたかったんです。
田:このアルバムは去年のバンドのメンバーがやっているわけですが、その人たちの話は後ほどお伺いします。今日の4曲目。
4.One Fine Day With You(Taeko Onuki Concert 2023)
田:2005年のアルバム『One Fine Day』から「One Fine Day With You」でした。これは最新アルバムでしょうかね。いまのところの。
妙:はい。
田:森俊之さん、小倉博和さん、佐橋佳幸さんといった方たちが参加していて、このライブのメンバーに森さん、小倉さんも加わっている。このライブのメンバー凄いですね!
妙:豪華ですね✨
田:ドラムがですね、林立夫さんと沼澤尚さんという、笑。
妙:私ね、パーカッションが苦手で・・。昔パーカッションってラテンさんって言われていたじゃないですか?ラテンが嫌いなわけじゃないんですけど。それですごく贅沢な参加の仕方(をしてもらっている)なんですけど、林さんが(メインで)やってると、沼澤さんがハイハット(シンバル)だけチキチキチキと、笑。ちょっと手が足りない分。でもそれが凄く大事で。それもわかっていて沼澤さんも参加してくれているんですよね。
田:でベースが鈴木正人さん、キーボードがフェビアン・レザ・パネさん。
妙:彼とは長いですね。一番長いですね。
田:で(キーボードの続き)森俊之さん。これは大貫さんが集められているわけでしょう?
妙:そうですね。声かけさせていただいて。
田:林さんと沼澤さんっていのが・・もう世代も違うし。
妙:違うって言ってもある程度いっちゃうとみんな同じ・・笑。
田:歌っていてどうですか?このバンドは?
妙:もう最高です。贅沢させていただいてます♪
田:大貫さんの歌い方ってミュージシャン選ぶとこありますよね?誰でもバックできる(わけじゃない)・・歌でもないでしょう?
妙:そうですね。ブルースとかロックとかスタイルがあるわけじゃないんですよ。その曲の理解が必要なので。でもそうすごく長くやっている方たちなので安心しています。
田:そういう呼吸をですね、味わっていただきたいというライブアルバムでもあります。
5.新しいシャツ(Taeko Onuki Concert 2023)
田:1980年に発売になった4枚目のアルバム『ROMNTIQUE』からの曲で、先週も話題になったヨーロッパ3部作の中からの1枚。作詞作曲が大貫さんで編曲がはやり坂本さん。この曲は歌ってらしてどう思われました?
妙:やっぱり内容が内容なので別れていく・・男女が、昔から長く歌っていますが、年齢を重ねるということはそういうことなんだなと思っています。とても良い意味で。いろんなことを学びますよね。悲しいことも含めて。
田:このことをお聞きすべきではなかいのかとも思ったんですが、坂本さんがこの曲について語られていたでしょう?お書きになってたでしょう?
妙:そうだっけ?
田:えっと最後のエッセイ集かな。これは”大貫さんからの別れの歌だった”ってご自分でお書きになっていたんですよ。
妙:ええ、坂本さんと私は一緒に住んでいましたけど若い時。でも彼は転がり込んできて、それで勝手に出て行ったんですよ。
田:ふははは・・💦 これは大貫さんの詞曲なので大貫さんが坂本さんに向けてお書きになった、新しい生き方をって曲なのかと思ったり・・。
妙:ていう風に言われていますよね。別れの歌っていろいろあるんですけど、別れのその先に、受け止めて、生きるということは受け止めていかなくてはいけないことがいっぱいあって、例えば相手がそういう風に出ていくときに足にしがみついて、「行かないで!」って言ったはすべてが終わりなんですよね。そういうことをせずに、すごく悲しくてもいままでのことをありがとうと、グッと自分の中で大切にする。そうすると男の方って「何か悪いことをしたなって」思われることがほとんどだと思うんですよね、笑。やっぱりそういうことを受け止めることで・・男女の関係だけではないので、男と女、(田:アーティスト同士ですしね)私たちが出会った意味は何だったんだろうって、考えていれば本当に長く付き合えると思うんですね。
田:え~その話を聞けて、嬉しかったです。ありがとうございました✨
妙:何を(いってるの)、ふふふ、笑。
今日の6曲目です。
6.夢のあと(Taeko Onuki Concert 2023)
田:1997年6月発売のアルバム『LUCY』から、「夢のあと」をお聴きいただいていますが、(”LUCY”とう)タイトルは320万年前にエチオピアで生活していたっていう猿人の女性。
妙:その骨に”Lucy”(と愛称がついた)。
田:どこでお知りになったんですか?
妙:多分、ネットか本か忘れましたが、(何かを)読んでいて、これだ!と思ったんですよね。本当にすごい古い骨が見つかって、それに”Lucy”って名前を付けてこれはロマンティックだぞ✨って思って。
https://onukitaeko.jp/project/lucy/
田:あ~(なるほど)。このアルバムは龍一さんとアート・リンゼイ(アレンジ)で、この曲はアート・リンゼイですね。「夢のあと」で描こうとしていたことがあるんでしょう?いろんな夢があったり、いろんな夢が終わっていったりするんでしょうし。
妙:そうですねー。でも女性だからってそんなにロマンティックには考えてなくて、あー駄目だったな?とか。夢は見るけど年齢重ねてくると現実的に手に入れられないものや、なれない自分、そういうものを夢見ることは無くなるので。これはかなり前に、若い頃に書いたので、笑。
田:はは、そういう終わっていくものも当時と今では違うものがあるでしょうしね。それでこういう曲をライブでやるのに選んでいくときに選びにくいものもあるんでしょう?
妙:そうですね。どの曲かは分からないんですけど、選んでいく時に人気の曲ってあるんですよね。おかけした「新しいシャツ」とか「突然のおくりもの」なんかもそうなんですけど、そういうのはきちっと(いれて)。その時その時で歌って違うものなので。それは私の宿命ですね。
田:今日最後の曲はこの『LUCY』の中の曲なわけで。『LUCY』はいまあらためて気になったりするところがあるんですか?
妙:そうですね。やっぱり何か好きなアルバムですね。ポップだしアレンジもいいし。
7.Happy-go-Lucky(Taeko Onuki Concert 2023)
田:今日最後の「Happy-go-Lucky」、97年の『LUCY』の中からお聴きいただいております。これも坂本さんですね。
妙:そうです。
田:坂本さんとは1985年のアルバム『コパン』から12年振りに復活したのがこの『LUCY』。ずいぶん空いたなってことになるんでしょうね。
妙:いろんな事情があるんですけど。住んでるところがNYに行っちゃったとか。あとはやっぱり、さすがの・・ということなんですけど、同じことを続けているともうなんか鮮度がどんどん落ちるというか。私、坂本さんにアレンジしてもらってるのに何でそんなこと言えるのか?って言われるかもしれないけど、同じ(志の)友人として、仲間として、坂本さんがそう思っていれば、私もそう思っているんですよね。それは、やれば(お互いに)すぐ分かって。なんとなく乗ってないなとか。そういう時は思い切って暫く離れて、それぞれが自分のことに集中するっていう。大変ですもん。アルバムのアレンジをするのは。すごいエネルギーをいただいたと思っています。使っただろうし。坂本さんの(エネルギーを)ね。
田:そんな二人が究極的な出会いをしたのが来週ご紹介するアルバムでもあるんですが。この「Happy-go-Lucky」はライブでマルチトラックを使っている?
妙:人のコーラスじゃなくて自分の声のコーラスじゃないとこの曲にならないので、どういう形でいろんなことを出したり入れたりしているのか分からないんですけど・・任せっきりです、笑。
田:さっきの「新しいシャツ」は、はっきり歌とピアノだけで、これは全くそうじゃない作り方で、一つのライブの中にいろんな要素が入ってますね。
妙:そうですね。自分で詞も曲も書き、自分で歌っているので、違和感がないんですよね。たぶん。聴いてらっしゃる方も。
田:それが大貫妙子さんのライブだと思ってお聴きいただけると思います。来週は『UTAU』について色々お聞きしていこうと思います。
2024/9/30(3週目)
もちろん「突然の贈りもの」Taeko Onuki Concert 2023でスタート。
田:先々週から3週間、この曲を前テーマにお送りしています。今週は2010年のコラボレーションアルバム "a project of Taeko Onuki and Ryuichi Sakamoto"『UTAU』について伺っていこうと思います。これはライブ映像が映画館で上映されたりして、あらためて評価が高まっていますがこの反響についてはどうですか?
妙:反響はあんまり知らないんですけど・・(田:ははは。)💦
田:でもトークイベントとか人前で話すというのは、あまりおやりになっていないでしょう?
妙:そうですね。
田:でもこの映画館では、おやりになったでしょう?
妙:必死に思いだそうとして・・苦笑。これ芸森で録っているんですよね。
田:制作されたのが2010年で。2009年に一緒にツアーをおやりになっている。『Ryuichi Sakamoto Playing Piano with Taeko Onuki 2009』。その時にもうこのアルバムに入っている「美貌の青空」と「Tango」を演っていたという。
妙:「Tango」は私が歌詞を書いているので。「美貌の青空」は私じゃないんです。(田:売野雅勇さん)でもこの曲は歌いたかった。
田:2009年のツアーは坂本さんの曲に歌を付けた曲で回りたいと伝えていたツアーなんですか?
妙:はい。
田:やっぱりそういうように思うようになっていったというきっかけはありましたか?
妙:坂本さんがソロのピアノをやり出していて、それを聴いていて・・当然過去のものも。そうするとこれに歌詞をのせたいと、ひらめいて。のせられないような曲もありますし。それで坂本さんにそれに歌詞をのせてもいいかな?とか、話して。いいよってそれだけ。
田:すぐに良いよ、ってそれだけで?
妙:一緒に長くやっているのでどんな歌詞を書くのかわかっているでしょうから・・あ、でも案外坂本さんって歌詞に興味がないんですよね。
田:あ、そうなんですか!?
妙:っていうと、そんなこたぁないって、空の上から絶対言っていると思うんですけど、笑。
田:このアルバムが制作されるというのは2009年のツアーの最終日に発表されたわけです。あらためてですね、2010年の奇跡のコラボアルバム『UTAU』のことをいろいろお聞きしていこうと思います。今日の1曲目は先ほども話に出ました、アルバムの2曲目。
1.Tango
田:さっきも話にでましたが、この曲は大きいきっかけだった?こうやってアルバムを作るということも含めて?
妙:『UTAU』をね。でも曲っていうよりなんかのときにスタジオで坂本さんに会った時にこのツアーが決まったんですよね。坂本さんはNYに住んでて、何か一緒に(やる仕事が)あって来てて、(話しているときに)坂本さんのマネージャーが「ここ(予定が)空いてますよ」って。大貫さんと何かやったらどうですかって。でいろんなメンバー集めるんじゃなくシンプルに二人でやったらどうですかって。
田:曲目も早めに決まったんですか?
妙:もう二人だったらね。私が選んだんですけど、笑。それはすぐ。いい曲いっぱいあるんでね。
田:でもこの「Tango」は難しかったって当時の記者会見でおっしゃってましたね?
妙:歌自体は難しくないんですけど、ピアノと歌だけだと”間”とかそういうのが。
田:”間”ね、まあ、凄いですね!凄いですねって話がいっぱい出てしまうんですけど、今年の7月にアナログ盤が発売になりました2010年のコラボレーションアルバム『UTAU』のご紹介です。大貫さんが選ばれた2曲目です。
2.3びきのくま
田:もともとは坂本さんの2008年のシングル「Koko」。最後のシングル曲なんだそうですね。
妙:それを聴いて、とってもメロディが美しい曲なので、それを聴いて、歌詞乗っけていいって聞いたら「いいよ~」って。
田:やっぱりこれをいいなと思ったことは大きいですよね。
妙:そうですね。(坂本さんに)聞いて、すぐに歌詞のっけて作って良いってなって。
田:「3びきのくま」ってなってますけど、原題が「Koko」でしょう?(妙:はい)で、歌詞の中に”くま”ってでてこない・・。
妙:ええ、全然それは関係ないんで、笑。イギリスの童話にあるんですよね。女の子が出てくるんだけど、その子が空き家に入って行って、そしたら寝ちゃうんですよね。そこにふかふかのベッドがあって。そこに3匹の熊がやって来て、あれ?見知らぬ奴が寝てるよ?っていろいろ話がある童話なんですけど。それを読んでそこから歌詞を考えたんですけど。
田:それはこの「Koko」というタイトルとつながる何かが?
妙:全然関係なく。
田:関係なく。
妙:ただ曲を聴いて。
田:この熊って聞いて思い出したことがあって。ap bank Fesに出たことがあるでしょう?つま恋の。(妙:あ~はいはいはい)あの時、加藤登紀子さんもでていて、打ち上げがあって(妙:ああ、あったあった)、わたしも同じテーブルにいたんですよ。すると大貫さんが北極の白熊はもう絶滅するのよって。待ったなしなのよって力説されていたことを覚えていて。
妙:「ネイチャー・マガジン」の仕事も兼ねてやっていたので。すごくそういうことに興味があって。例えば南極に行った時もそうですけど、客船に乗って、いっぱい研究者の人が客船に乗っているんですよね。それと船員とか、一般のお金持ちのお客案なんかが乗っていて。・・そういう人はつまらないので船倉に降りて行ってそこにいくと従業員がそこのまかないを作っていて食べているんですよ。そうすると豪華なみんなが食べているような料理よりおいしくて、笑。ふふふ、わたし夜になると降りて行って従業員と一緒にご飯食べてるという、笑。その時にいろいろな話を聞きました。
田:でこの「3びきのくま」の歌詞は読みようによっては環境問題が背景になっているようにもとらえられますよね?
妙:・・ふむ。そうですね。人間の生活が出している色んなもの、地球にかけている負荷っていうのが確実にあると思うので。常にありますよね、自分の中に。坂本さんもそうだったけど。(田:はい)でもそういうのをなかなか歌にすると、なんだこれって。(田:レッテル貼られちゃうみたいな)そういうのが嫌だったので。あんまりそういうことをいわずにそういう感じを醸しだしている・・。
田:”3びくのくま”という絵本のようなタイトルにしている。
田:この「3びきのくま」もそうですが、ピアノと歌だけの曲がこんなに深淵なのかっていう曲をお聴きいただきます。
3.赤とんぼ
田:いろんな赤トンボが日本中、世界中にあるんでしょうけど、こんな赤トンボ聴いたことないです!
妙:どんな赤トンボなんですか?笑。
田:このピアノと歌の(バックに曲が流れていて)・・この間!
妙:かなり遅いです。鍵盤叩いてるだけに聞こえることがありますもんね。
妙:やっぱり・・リハーサルでこのテンポでって一応決めるんだけど、本番になったら全然(笑)坂本さんは自分のテンポで始めます。
田、妙:ははは、苦笑、💦
田:それ聴きながら合わせるわけでしょう?
妙:ええ、本番なので合わせるしかないという・・。でもそういうやり方っていうのは、坂本さんなので、いつも頭のどこかには、(笑)・・入れて。
田:いつもの”坂本さん”だって。
妙:一応、あの人のテンポで。
田:この『UTAU』はライブ映像が出ていまして、こちはらMCも入っている。そのMCの中でお二人が童謡について語っている。これは面白かったですね。山田耕筰さんの話。
田:うんうんうん。
田:大貫さんが(ライブのMCで坂本さんに)歌いたい曲、山田耕筰さんなのよねって(言ったら)、坂本さんも好きな曲、山田耕筰さんって言っていた。
妙:そうですね。日本の(童謡)って(カテゴリー分けして)聴いていないんですよね(坂本さんが)。歌がね、曲が。(私も)わかりますよね(坂本さんの気持ちが)。だから。
田:山田耕筰さんってドイツの”メッチェンサン”?(聴き取れず、ググってもわからず)というところで勉強された方なんでしょう?そういう意味では西洋音楽の人?
妙:はい。日本の童謡ってもうちょっと・・”狭い”んですよね、レンジが。(即席で歌って)何ちゃんと、何ちゃんがどうしたの ♪ って。
田:鼻歌で歌えちゃう。
妙:こんなに。たりら~ら~たりるるる♪ (赤トンボの歌メロを披露。だけじゃなくてバッキングも足されていたような?)ですよ!こんなの童謡にないですよね。日本の。あんまり聴かないですね。私が知らないだけかもしれないけれど。
田:でも大貫さんの曲、割とそういうのありますもんね。
妙:めちゃ飛びます。もうこれは生理的のもので、そこに行きたいんですよ。あとで、誰だこんな曲書いたのって、自分で苦労するんですけど、苦笑。
田:そういうお二人だから生まれたこの「赤とんぼ」でもあり、次の曲です。
4.Flower
田:これは坂本さんの「A Flower Is Not a Flower」がもとになっていてそれに詞をお付けになって、タイトルも「Flower」にしている。
妙:はい。やっぱり絶対に(大概の曲は)歌詞が乗りにくいってのがあるんですよね。ただ、聴いているとふうっと言葉が浮かんでくるんですよね。そういうのは大体、歌詞つけられますよね。
田:これは原曲もこういうゆったりとした曲なんですか?
妙:そうですよね?そうそう。たぶん。んっ?(全リスナー:苦笑。←たぶん)
田:まあ、そう花っていうより植物全体みたいな歌詞になっている?
妙:そう私は、忘れられてしまった鉢植えの花のイメージなんですけど。
田:あ!ああ~。
妙:いつも街を歩いていると、マンションなんか見ると鉢植えの枯れたものが、ほっぽらかしになっているところがあって。ああ、なんてかわいそうなんだろうって思って、その鉢植えの花、自分が枯れていく気持ちになって歌詞を書いているんですよ。だから坂本さんが思い描いた”FLOWER”とは違うと思うんだけど。
田:っていう話もライブ映像では会話として入っています。
妙:ああ!そうでしたっけ、笑。
田:そう。この会話が、普段聞けないふたりの会話。ああ、こういう話し方でこういう話をするんだって、いうのもライブ会場ではありながらね、ドキュメンタリーとして本当に貴重ですよね。
妙:ああ、そうですか(しみじみ)。
田:でーこのテンポで歌われております。
妙:苦しかったです、笑。
田:こんなに間が、”音の間が美しい歌と演奏”というのは聴いたことがないというライブアルバムです。
5.a life
田:これは(アルバム作成時の)新曲なんですね?
妙:そうですね。
田:レコーディングの2日前に書いたという話がありました。
妙:これ、札幌の芸森スタジオっていうところで録っているんですけど、私札幌にすごく友達が多くて、今もおいしい食材を売っているお店があってそこから毎週届けてもらっているんです。その前からも札幌には行ってましたけど。遊びにね。何かご縁があって。その時に、だいぶ前ですけど、芸森スタジオがあるってのを知って、ここのスタジオ本当に素晴らしいスタジオなんですよ。『UTAU』は絶対ここでやろうって決めて坂本さんにここでやりませんかって言ってお呼びしたんですよね。
田:はあはあはあ。
妙:難しー顔してきましたよ。(思い出すように)うん、うん。
田:でも当時の写真が残っていて、割と公園でリラックスしている坂本さんの写真なんかも。
妙:ハンモックでしょう。あれは公園っていうかスタジオの横の木につってあるハンモック。でな、泊まる施設もあってとても広々としていて良くて。それで朝起きて、朝食も全部作ってくれて。コーヒーでも飲みに食堂にいくじゃないですか、そうすると坂本さんもう朝ごはん食べ終わっていて、(田:ええー!)あれ、朝の連ドラっていうんんですか、あれを観て。
田:ああ、朝早いんだ!
妙:そう、朝のNHKでやってる連ドラが大好き。不思議な人、笑。
田:夜中の人じゃないんですね。
妙:そうですね、ある程度年齢行ってから早起きになったんじゃないですか?
田:ライブの映像にはスタジオで作曲する一夜漬け話がありましたね。
妙:弦のアレンジ(の話)はタクシーの中で。
田:作曲ではないんだ。
妙:今もうスタジオに弦の人はもう集まってるんです。日本での話ですけど。それで(一緒にいて)書いてる様子は・・無いなってのがあって。で、どうするのかなって思ったらタクシーの中で、全部書いて。(田:なるほどね~。)こんなすごい量ですよ?芸大・・伊達にいってないと、笑。だっていつ学校に行ってたんだろうって思うくらいだったけど。
田:芸森スタジオでの坂本さんはタクシーの中で書かなきゃいけない環境ではないわけですよね、笑。
妙:これはすごい若い頃の話ですけど。
田:朝ドラをゆっくり見る。
妙:芸森ではね。
田:「al ife」はそういう生活シーンが背景にあるんですか?歌詞の中に?
妙:これは曲が先だったので、曲からのイメージですよね。何かすっと生活している感じ。こんな風に日常を過ごしたら素敵なんじゃないってことを歌詞にしたらどうかなって思って。
田:で、(アルバム出すには)新曲がないとって話が先週もありましたもんね。
妙:そうなんです。そうなんです。
田:大貫さんが選ばれた今日6曲目です。
6.四季
田:これは詩曲は大貫さんで坂本さんの曲ではないですね。1999年の大貫さんのアルバム『ATTRACTION』からの曲です。このアルバムはパリとNYと東京で録音したとありまたよ。
妙:そうですね!?そのようでしたね💦 もう世界中ぐるぐる回っていた時期なのでどこで何をしていたか・・笑。でも海外でやるときは、曲を書いた時点でどこでだれとやろうと決めているんで。海外に出ていると海外でやった方が楽というのがあるんですよ、いろんな意味で。それで海外レコーディングが普通になっていて。
田:そういうあちこちでレコーディングしたこのアルバムで歌っているのは”日本の四季”ですもんね。
妙:そうですね。
田:でその「四季」をオリジナルで初めにアレンジしたのが今のライブメンバーのフェビアン・レザ・パネさんだった!
妙:そもそもすごく長い。
田:そんなに長いんだって思いました。
妙:一番長いですよね、パネさん。もうどのくらいになるのか分からないくらい。
田:でもやっぱり波長が合ったから今まで続いているんでしょうね。
妙:うん、凄く正直な方で。本当になんというか・・ピアノを弾く指がまたきれいで。細くて。それで、いい悪いじゃなくて坂本さんの”ドサン”という感じではなくて、もう全然違う音色なんですね。でやっぱり人との出会いって、パネさんにはずいぶん長く弾いてもらっているので。ピアノ(奏者)が変わると歌が変わっちゃうんですよね。だから坂本さんが弾けば坂本さんとの歌い方になるし、他の楽器も大事だけどピアノはそのくらい私の歌に影響を与えるので。
田:この”四季”は坂本さんと一緒の”四季”っていうことですね。でもステージの中のMCで坂本さんが、これ僕のアレンジじゃないとかって、笑。話をされてましたね。
妙:焼きもち焼きなんですよ。彼は。
田妙:(爆笑)
田:このアルバムに入っている「夏色の服」も坂本さんの曲じゃないっていう。
妙:坂本さんに頼みたくても、忙しくて無理だったからそういうことになっていると思うし、全部坂本さんでっていうのも・・曲によっては(他の人が適任)、というのがあるので。
田:で坂本さんが、これ僕のアレンジじゃないって言いながら弾かれている姿も微笑ましかったですが、笑。(妙:ひど~い、笑。)この3週間、最後の曲はこの曲です。
7.風の道
田:3週間いろいろお花入されたことのほとんどがこの曲の中に含まれているんではないかと思ったりもしました。こういう出会いと別れっていうのは、ちゃんと生きている人は場面を経験するんだと思いますけどねえ。
妙:これを聴いた・・坂本さんとは関係なく・・男の方は全部自分のことを歌っていると思われるようですよ、笑。
田:そう、思いましたもん。ま、自分のことを言うのもなんですけど、やっぱり、ふたりには譲れない生き方があった、っていうのは・・まあ、別れざるを得ない、っていうことがいろいろあるんでしょうし。あらためて時間が経てば、寄り添う月日も思えば語る言葉もないほど月日が短い、このことについて(大貫さんに)語ってくれということが(すみませんが)・・。
妙:そうですね。言葉じゃなくて音楽を長く作り続けているのでその中で語っているようなものなので。それでお許し願いたいと。
田:でもそういう意味でもこのアルバムは今こうやって評価されるっていうことがものすごくいろんな意味があるんだろうなって思いましたけど。
妙:やれるときにやっておくって変ですけど。
田:こういうアルバム作れる人、歌う人も、ピアノ弾く人もいませんものね。
妙:そうですね、最後に。作れて良かったですね。
田:はい。で今年は11/30人見記念講堂でのコンサート。これは「シンフォニックコンサート2024」これはどういうコンサートになるんでしょう?
妙:オーケストラです。あとリズム隊もドラムとかギターも入りますけど。
田:ええ。で来年が50周年ということで。
妙:え~そんなこと言わなくても、笑。50年なんて(長く)やってる?・・か、笑。でも、そんなに続けられて幸せ者ですよね。本当にありがとうございます。ファンの皆様。
田:来年50周年だから何かやるということは?これから考えられるとか?
妙:そうですね、区切りで何かやるってのは世の中の常なので。・・そういうことはスラっと準備して・・かもしれない、笑。
田:そういうことに重きを置いて生きてきたわけではない、笑。
妙:区切りっていうよりは、流れなので。無理やりそこにお城建てるってことをするとそこで終わっちゃうんじゃないかって、笑。流れで、何かそういうのができればいいなって思います。
田:この3週間のような大貫さんが来年も流れていくというように思いたいです。
妙:もうちょっとだけ流れて、笑。
田:もっとちょっとたくさん流れるかもしれない、笑。
妙:流されちゃう♪と困ります、笑。
田:ありがとうございました。
妙:こちらこそ、ありがとうございました。
田:J-POP LEGEND CAFE 3週間に渡って大貫妙子さんをお迎えしてお送りしました。
田:3週目がですね、この坂本さんとのコラボアルバム『UTAU』で終えられたことが、ああやってよかったなって、思っております。ピアノと歌だけっていうライブアルバムも珍しいですし、それだけで2時間を超えるライブをやれるっていうのも稀有だと思うんですよね。こんなに研ぎ澄まされていて緊張感があって奥行きがあって、温かいっていうライブは・・僕は映像でしか知りませんけれども、今まで経験したことがない気がしましたね。もう、お互いが歌っているっていうタイトルそのもの。一つひとつの音、指の動きそのもの、すべての間、それが”歌”になっている、これは打ち合わせしてもできるものでもないでしょうし、毎回同じような演奏、同じような歌でもないですし、その日その日の空気、その日その日の二人の心境がそのまんま作品になっている。こういう関係のシンガーとピアニスト、アレンジャーとシンガーソングライターこれはやっぱり他の人の中にはないですね。ポップスとかロックとかジャズとか現代音楽とかクラシックとか・・どれでもなくて、あらゆる音楽の概念を超えているコラボレーションではないかと思いました。大貫さんの曲と声だから生まれたライブアルバム。最後の『風の道』の歌詞、これはすごいですね。
二人には決して譲れぬ生き方があった。
寄りそう月日を思えば語る言葉もないほど月日は短い。
ここまで歌っているアルバムについてですね、言葉で語ってくれってお願いしてしまった。本当にありがとうございました。先週の「新しいシャツ」の話もそうでしたが、ああ、そうだったんだなってあらためて思いました。
田:FM COCOLO J-POP LEGEND CAFE 制作:加藤与佐雄、鹿野明、構成とお相手は、田家秀樹でした。また来週。
◆おまけ
大貫さんの最近のライブメモのマガジンです。ユキヒロさん、坂本さんが亡くなった時期のライブ、そこから復活?を遂げたCIRCLE'24など収録。
おしまい。