詩:『晩夏』
『晩夏』
ヒヨに啄まれるヒグラシを見た
ジ・ジ・ジと断末魔のような
三年土の中をただ浪費して
やっと出てきた末路がこれか
今年もまた憧れを溜め込んで
焦がれた末 呆気なく過ぎる夏
失ったものだけ輪郭はっきりして
夕暮れが憂鬱に消えゆき帳くる
お前たちはただ欺瞞の中にいて
わたしたちに怒っているんだろう
満ち足りた人間どもが羨ましくて
短く激しく生きるのだろう
わたしたちが不安に慄いて
家族を抱え踏ん張って
幸せは前借りだと嘆くだけの
そんなことも知らずに
ヒグラシよお前が鳴くから
夏が終わってしまうのだ