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回復期リハビリテーション病棟で働きたい看護師さんに、入職前に知っておいて欲しいこと6つ

こんにちは。うなぎです。
色々と職歴を転々としてますが、なんやかんやで回リハ(回復期リハビリテーション病棟の略)歴も7年目になりました。

それなりに長くやってると、新人さんや中途さんの教育に携わることもあります。
回リハって特殊なので、急性期から転職した方はギャップに戸惑うことも多いと思います。私もその一人でした。
また、小さい病院のため、急性期よりも比較的流れがゆっくりな回復期でしか経験がない中堅スタッフもそれなりに多くいます。

ここでは、回リハへの就職・転職に興味がある看護学生さんや現役看護師さんに向けて、回リハに入職する前に知っておいて欲しいことをまとめています。


1.患者・家族との関係が深くなる


回復期リハは疾患によって入院期間が決まっています。
最短60日~最長180日です。
ですが、回復期リハにも効率性が求められる世の中になっているため、期限ぎりぎりまで入院する人はそれほど多くありません。
早いと数週間で帰る人もいます。

ですが、この超高齢化社会。やはり患者さんもご家族も高齢化が進んでいます。
社会背景の多様化から、複雑な家庭環境の方や、独居の方も多いです。

回復期リハ病棟の目的は「在宅復帰への支援」です。
高齢で認知機能が低下したり、病気でADLが低下した方が在宅復帰していくのは大変です。
リハビリをしながら機能回復を図り、退院に向けて支援します。

そのためには患者さんがもともとどんな生活をしていたのか、退院して何をしたいのか、周囲にどんなコミュニティがあるのか、家族との仲はいいのか、支援は得られるのか、など様々な情報を得ていく必要があります。

場合によっては退院前に自宅に訪問して療養環境を確認し、PTやOTと一緒に必要な福祉用具について検討したりすることもあります。

ですので、必然的に患者さんや家族との関係性が深くなります。

人生に立ち入る、と言っても過言ではありません。

プレッシャーはありますし、深く入り込むから休みの日も頭から離れないこともあって、それはそれでストレス。
でも忙しい急性期や、自宅への退院が少ない療養病棟などではできない、患者さんや家族の生活をじっくり見据えた退院支援をすることができます。

患者さんや家族とゆっくり関わりたい、退院支援を勉強したいという人は楽しいと思います。

2.トイレ介助をはじめとした生活援助がめちゃくちゃ多い


とにかく朝から晩までトイレ介助か風呂介助ばっかりしてます。
コールも多いです。

急性期から来る看護師さんがよく仰るのは、「看護師ってなんだっけ…?」
というセリフ。
それくらい生活援助ばっかりしてます。

これは決して無駄なことではなくて、回復期リハの看護師としては必要な援助です。
回復期リハにいる患者さんたちは病気でADLが低下していますが、リハ(訓練)によって徐々に改善していきます。

前の項目でも述べていますが、回復期リハ病棟の目的は「在宅復帰」。
歩けるようになったのに、排泄はいつまでもオムツですか?そんなことないですよね。
排泄ひとつを取っても、様々な動作が複雑に絡み合っています。トイレまでの移動、立位保持、両手もしくは片手を使ったズボン操作、便座での座位保持、陰部の清拭・・・。
この複雑な動作の集合体を全部訓練の時間内で練習することは無理です。一番のリハビリは、生活内でいかに実践し、「できるADL」として習得していくか、なのです。

そこで看護師や介護士の生活援助が重要になるのです。

入浴なども同様で、生活援助はすなわち、回復期リハ病棟での看護師の役割そのものと言っても過言ではありません。

同じ動作でも、長期的にみていくとできる部分が増えていることに気づきます。最終的に自立することができると、患者さんもですが、看護師としても嬉しいものです。

患者さんの生活に寄り添って援助していくことができるのは、回復期リハ病棟の大きな特徴の一つです。


3.「できないこと」を受容することが必要


厳しい意見なのですが、「できないこと」を私たちが受け入れることも必要なときがあります。

人がもつ能力はそれぞれです。
どれだけリハビリをしても、病気は完全に治ることは難しいです。
特に回復期リハに入院するのは、脳血管疾患や整形疾患、または廃用症候群でADLが低下した患者さんです。
そして高齢者や認知機能が低下した人も多い。

それは患者さんだけではなく、家族も同様です。
様々な家族がいる。家族関係が良かったり、悪かったり。お金に余裕があったり、余裕がなかったり。近所に援助してくれる人がいたり、山奥で一人暮らしをしていてキーパーソンは遠方だったり。
介護力も家族それぞれ。

良くなっていったり、自立していく患者さんをみていると、「なぜこの人は上手く回復しなかったのか。私の看護が悪かったのか。」と葛藤することがあります。
退院に向けた家族への支援で、自宅退院希望だが介護には消極的な家族に対して、上手く関われないと「私じゃない違う看護師だったらもっと上手に支援できたのかも。」と考えてしまうこともあります。私ですが。

投げやりだと思われるかもしれませんが、これって「仕方ない」んです。その患者さんや家族が回復期リハに入院している間に発揮できる力は、そこまでだったんです。
私たちはチームで関わっています。看護師チームだけではなく、リハビリチームやMSWなど、多職種で経験年数も多様なチームです。一人で援助しているわけではないのです。

「できる」を見極めると同様に、「できない」ことを知り受け入れることも大切です。
ただ、「できない」から諦めるのではなく、その患者さんや家族が「できる」範囲で何を援助すれば、退院後に安全な生活が送れるのか。それを考えることが重要です。

前向きに「できない」を捉えて退院支援をしていくことが必要なのです。


4.「私は何をする人なのか」自分の役割と他人の役割に葛藤する


急性期は点滴や検査、オペ出しの時間に追われたり、処置に走り回ったり、緊急入院の対応に迫られたり、診察介助をしたり…とにかく診療の補助業務が多いですよね。

ところが回復期では、点滴はいても病棟に1人か2人で全く点滴をしていない時期もあったり、緊急検査や医師の診療介助はほとんどなく、入院は全て予約入院。

「え、看護師って何してんの?」

回復期リハ病棟の看護師は、保助看法で言う看護師の業務では「療養上の世話」の割合がかなり多くを占めるでしょう。
生活を見る視点の重要性は2.トイレ介助を~の項で述べているので割愛します。
ここでは他職種と自職種の専門性への理解が大事だよっていうお話をしたいと思います。

回復期リハ病棟に来るとまず、人の多さに驚きます。
朝の申し送りにはセラピスト(リハビリスタッフ)も参加するので、スタッフステーションが満員御礼状態です。
セラピストは基本的に病棟配属で、担当が決まっています。このセラピストたちの役割理解が非常に重要なのです。

「リハビリの役割なんて知ってるよ!」

と思うでしょう。回復期リハ病棟の独特なのが、生活とリハビリが常に入り組んで存在していることです。

記録を読むと、リハビリでできている動作が、生活でできない。そんな時にどうしますか?
または、生活でできない動作をできるようにしたいと思ったとき、誰に相談しますか?

これらの疑問を解決したいときに、まずその課題がどの職種の専門分野なのかが分かる必要があります。

例えば、食事動作一つにしても、食事形態や嚥下についてならST、自助具やセッティングについてならOT、食事姿勢ならPT、または先行期に関することならSTとOTの分野にまたがって相談をする必要があります。食事形態も口腔期の問題なら歯科医や歯科衛生士に尋ねたほうがいい場合も。

このように、ADLの中には様々な要素が複合的に絡み合っているので、その中で「できる」を妨げている要因をアセスメントし、その課題に対応する専門職に相談をして「できる」に向かって多職種でアプローチしていくのです。
そしてこれが回復期リハ病棟の看護師の役割です。

なので、自分の専門性と相手の専門性を理解することがとても重要になります。
急性期と比べると看護師の役割がボヤっとしているので、イメージが難しいかもしれません。次の項目で述べる、コーディネーター的な役割の方が分かりやすいでしょうか。


5.周囲を上手く操る調整力が求められる


先述したように、生活場面を見ていて疑問に思ったことなどを他職種に投げかけたり、相談をしたりする場面は多くあります。
退院調整をしていく過程では、より綿密に目標を共有して、スケジュールを立てていくことが求められます。

そこで重要なのが、看護師の調整力です。

よく回復期リハ病棟の看護師にはコーディネーター的役割がある、と言われます。
専門性が違う職種や、患者や家族の意見を代弁したり、まとめたりして、チームの向かうべき方向性を調整する役割です。
なぜ看護師がその役割を担うのか、というと、やはり看護師という仕事が色々な分野にオーバーラップしていること。また、生活を見る力が他の職種より強いので、より患者や家族の立場に立って考えることができる職種だからです。

病気により人生の岐路に立つ患者さんや家族は、退院後の生活の再構築をしていく必要があります。
回復期リハ病棟では、そのような人たちの退院後の生活を見据えた支援を行っていくことが求められています。
専門性や意見が異なる多職種チームをまとめていくのは大変で、時には対立したり葛藤が生じることもあります。

中立的な立場で、それぞれの意見を俯瞰して捉え、チーム間の連携を円滑に進めていく、そんな調整役としての機能が回復期リハ病棟の看護師には求められています。


6.なんやかんやで基本的な急変対応やアセスメント能力は重要


回復期リハ病棟に入院する患者さんは、急性期での治療が終えた状態で転院もしくは転科してきます。
医療的処置もほとんどないため、急性期と比較すると急変などは少ないです。
それでもやはり医療現場ですから、急変対応や基本的なアセスメント能力は重要です。

回復期リハ病棟での経験しかない看護師は、ここがやはり弱いですし、苦手意識が強いです。
その点、急性期経験のある看護師は得意分野だと思います。

回復期といっても、脳卒中の再発やけいれん発作などもあります。高齢者が多いため様々な基礎疾患をもつ患者さんもいるので、それらの悪化により急性期的な治療が必要になることもあります。
また、急性期の在院日数が全体的に縮小傾向にあるため、その影響もあり全身状態がまだ安定しない状態で回復期に入院していくる患者さんも増えています。

私が働き始めた7年前と比較すると、急変や急性期への緊急転院も増えた印象です。

在宅復帰に向けて支援していく段階には、もちろん大前提として患者さんの全身状態が安定していることが不可欠です。
それを整えるのも、そして異常があった場合に早期に発見し対応するのも、急性期と同様に回復期でも重要な役割の一つです。

急性期からの転職を考えている看護師さんがいるのであれば、回復期において、急性期での経験は全く無駄ではありません。むしろ急変の少ない回復期だからこそ、急性期での経験を遺憾なく発揮していただきたいです。


まとめ

回復期リハビリテーション病棟で働きたい看護師さんに、入職前に知っておいて欲しいこと6つをご紹介しました。

回復期リハビリテーション病棟は、他の病棟と比べるとやや特殊な部分があります。

最近は学生さんも実習で回復期リハ病棟にいくことがあるので、その経験から回リハに興味をもつ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
者さんや家族とゆっくり関わりたい、退院支援や多職種連携に興味がある、という方はぜひ一度見学してみると面白いと思います。

イメージがつきにくい回復期リハ病棟の看護師のお仕事が、少しでも伝われば幸いです。

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