舟状骨骨折 (前編)
今回は手の舟状骨骨折について少し詳しくお話ししていきたいと思います。これから前後編に分けて解剖~治療方法についてお話していきますが、前編は解剖学、受傷機転、症状についてです。
Anatomical Review
まずは手の解剖学的おさらいからです。
注) 足にも同じ名前の骨がありますが、今回は手の方の舟状骨についてです。
上の写真は、手の甲と手首を甲側からとったCT画像になります。
①~⑤は中手骨で、①が親指(第一中手骨)で⑤が小指(第五中手骨)となります。手の平の指側、約2/3を占めています。
⑥~⑫が手根骨と呼ばれ、手の平の手首側、約1/3を占めています。
⑥: 大菱形骨
⑦: 小菱形骨
⑧: 有頭骨
⑨: 有鉤骨
⑩: 舟状骨
⑪: 月状骨
⑫: 三角骨
となります。もう一つ豆状骨という小さな骨が三角骨に隠れていますが掌側にあります。手首を反らすとより判りやすくなりますが、
小指側の手首すぐ上にあるでっぱり(右側矢印)が豆状骨、ちなみにほぼ中指の延長線上にあるでっぱり(左側矢印)が舟状骨結節といわれる舟状骨のコブになります。
Mechanism of Injury
続いては受傷機転(怪我の原因)についてです。ちなみに英語では受傷機転はMechanism of Injury、MOIと言われます。
舟状骨の大きな原因として、手首を反らした状態で手を着くように転倒すると起こります。
この状態で転倒すると、手首が過伸展状態となり橈骨骨頭に押しつぶされる形で舟状骨に極度の負荷がかかり骨折が発生します。
Symptoms
続いて症状です。主な症状として、手首親指側に痛みや腫れが怪我から数日以内に起こります。ただ大体の場合見た目の変形は見られず、また人によっては痛みはあるものの手首や指を動かすことができることもあります。
手首の捻挫でも同様の症状は出ますが、舟状骨骨折でみられる一番特徴的な症状として、Anatomical snuff-boxにでる圧痛があります。Anatomical snuff-boxとは解剖学的かぎタバコ入れとも呼ばれ、
短拇指伸筋及び長拇指外転筋の腱が掌側(写真左側の線)と、長拇指伸筋(写真右側の線)に囲まれたx印の場所になります。
このx印の部分を指で押した際に痛みが出ていたり、その他の症状も見られているようであれば、舟状骨骨折の可能性がありますので早急に整形外科にて診察を受けるようにしてください。
今回はここまで。
次回後編では、実際に舟状骨骨折はレントゲンでどのように見えるのか、治療(保存vs手術)などについてお話させていただきます。
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