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舟状骨骨折 (中編)

今回は画像診断についてです。これは舟状骨に限らず、一般的に骨折に関しての画像診断の違いについての説明になります。

予想外に長くなってしまったので、予定を変更して3回に分けたいと思います…。

X-rays

骨折といえば、レントゲン(X-rays)ですね。レントゲンはX線を体に照射し、各組織によって異なるX線の通過量の違いを画像にしたものになります。骨が白く見えるのは、X線が通過しにくいためです。筋肉などはX線が通過しやすいため薄く見えています。

下は実際の舟状骨骨折のレントゲン画像です。

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これは受傷後から2週間程度経過しての画像で、はっきりと骨折線が見られています(矢印部分)。

骨折といえばレントゲンといいましたが、意外と知られていないのが「レントゲンで100%骨折が判明するわけではない」ということです。

レントゲンで骨折線がみられれば骨折は確定ですが、レントゲンでは写らない骨折もあります。

多くの方が想像するいわゆるボキッと折れた”骨折”は完全骨折といわれ、これはほとんどの場合受傷後すぐからハッキリとレントゲンに写ります。ただ、疲労骨折ヒビ(亀裂骨折)など不全骨折と呼ばれるものは、特に受傷直後や初期にはレントゲン上に異常が見られないこともあります(余談ですが、骨のヒビは骨折ではないと思ってる人もいますが、亀裂骨折であり、れっきとした”骨折”で”折れて”ます)。

「捻挫って言われたのに、1週間後の再診で骨折が判明した。ミスだ...」というのをたまに聞きますが、それはミスではないのです。骨折の可能性は捨てきれないから念のために固定は行った上で、1~2週間後に再度チェックするために「来週また来てください」となります。

では、しばらくたってもレントゲンには異常は見られないものの骨折の疑いが捨てきれない場合、1週間も診断に待てない場合、骨が重なっている場所ではっきりと見られない場合は?

CTMRIといった画像診断が必要となります。

Computed Tomography

CTはComputed Tomographyの略でコンピューター断層撮影法といいます。レントゲンと同じくX線を使っており、360°のレントゲン画像をコンピューターで高度に解析/処理したもの、という感じです。レントゲンの進化版ですね。CT撮影自体は短時間で終了します。

CTは様々な方向から断面をみることができ、また3D処理をすればより立体的にみられるので、骨が重なっていてレントゲンでは個別に写しにくい場合や、レントゲンで骨折はわかっているもののより詳しい骨折の状態(どのように骨折線が走っているのかなど)を知りたい場合にも使われます。下は舟状骨骨折の3DでのCT画像です。

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しっかりと舟状骨上に線が入っており、骨折しているのが一目でわかります。

Magnetic Resonance Imaging

MRIはMagnetic Resonance Imagingの略で、日本語だと核磁気共鳴画像法になります。原理は難しいので端折りますが、レントゲンやCTと違いX線は使わず、MRI強力な磁場と電波を使い、得られた情報をコンピューターで画像化します。

強力な磁場を使うので、磁場を乱すような金属やペースメーカーなどの機械が体内にあると使えません。最近ではMRIでも問題のないチタン合金が使われていますが、もしステンレス製のプレートやスクリューが入っているとMRIは受けられません。磁石にくっつくような金属のアクセサリーなどもタブーです。

MRIとCTの骨折判断時の大きな違いは、MRIだと炎症反応がわかりやすく、また骨内の浮腫(腫れ)や出血も僅かなものでもわかりやすいことがあげられます。炎症反応の有無は、その骨折が新しいものなのか、それとも古い前からあった状態の物なのかを判断できます。炎症反応が見られないような骨折は陳旧性の物で、結構前からあった怪我の痕ともいえます。また初期の疲労骨折や、骨挫傷といった骨折まではいっていない骨の怪我などはレントゲンやCTでは判別されにくくても、MRIだとはっきりと分かることがあります。

これは舟状骨のMRI画像ではありませんが、脛骨の疲労骨折のMRI画像です。

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脛骨上部に白く光っている部分が疲労骨折と診断された個所になります。

MRIの短所としては、先ほど挙げた金属やペースメーカーといったもの以外にも、撮影に時間がかかることも上げられます。足や手など撮影中に動いてしまうと画像がぶれるため、再撮影になることもあります。また、ほとんどの場合、MRIの際には狭い筒の中で大きな音のする中での撮影となりますので、閉所恐怖症や音に敏感な方などは中々難しかったりもします。


このように、画像診断といっても色々なものがあります。整形外科医は、部位やその時の状況によって、方法を変えたり組み合わせたりしながら正確な診断を行っていきます。

次回は舟状骨骨折の最終回。治療などについてお話ししたいと思います。

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