最後はコーヒーじゃなくてココアで
スカートを履いてイヤリングをつける。
新品のアイシャドウをひと塗りすると
大きめのラメが少し眩しい。
「急がなきゃ、混んできちゃう!」
早足でカフェへと向かう。
今日は最後の日なのだ。
「ふぅ…」
外は暑く、少し汗ばんできた。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「あ、じゃあ…アイスココアをお願いします」
何度も通ったこのカフェでは
コーヒーを頼むことが多かった。
でも最後の今日は、ほんとたまにだけ
注文するココアが飲みたかったのだ。
混む店内の中から空いている2人がけの
席を見つけて座る。
木で作られたテーブルと椅子が愛おしい。
もうここに来ることはないのか
そう思いながらライトに目を向ける。
今日も変わらず優しい光だ。
幾度となく通ったこの店。
待ち合わせの前に、呑んだ後に、
考え事をしに行くこともあった。
ありがとう と心の中で言いながら
ココアをひと口。
さようなら、どうかお元気で
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( ¨̮ )