箱
もみくちゃにされて
私を
もう一人の私が
遠くから呼ぶ
もみくちゃにされながら
口々に囁く口が
体中にまとわりつく
私の中の箱は
すでにまんぱんで
囁く口があふれでていた
地面に落ちながら
それでも囁く口達
遠くの私が叫んでいる
囁く無数の口が遮る
口はどんどん増えていく
いきなり手を引っ張られた
引っ張られて
輪の外に
口は動けず
囁き続けている
『私』が言う
口を集めすぎ
囁きを聞くのも大切だけど
捨てるのも大事
みてごらん
箱から溢れてる
『私』は新しい箱を手渡した
あの箱は忘れなさい
この箱をあの箱のようにしないでね
それだけ言うと『私』は消えた
空っぽの箱を抱きしめた
寂しいような
なんだかホッとしたような
新しい箱を抱きしめて
溜めすぎないように
私は箱の蓋を
そっとしめた
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