田中真紀子さんの演説の上手さは、ダミ声の泥臭い魅力だけでなく、
多くの人に分かりやすい言葉で考えさせてくれることだ。
独裁政権が効率が良いのは自明の理だが、
どんな方向を目指すのかは問題だ。
人を見る力を養って、
自分の考えと向き合うべきだという姿勢は、
一昔前なら「真面目はダサい」、
今なら「そんなの怖い」と思うのかも知れない。
政治は欲にまみれた恐ろしいものではないのかと、
「総理大臣の暗殺」という事件でも象徴されている。
法学部卒がずらり並んで、政治経済を学んだ多くの総理大臣の経歴。
女性の地位向上に取り組んだ市川房江氏の選挙活動から入ったため、
市民運動家というイメージの、菅直人元総理大臣が引退を表明された。
イラ菅のあだ名通り、歴代の総理の中でただひとり、
バリバリ理系の頭ではさぞやりにくかったのではないかと想像する。
東京工業大学理学部応用物理学科卒という、その学歴は異色だ。
体のトラブルが起きた際に、乱暴な表現は承知だが、
内科の医者なら「これ」と推測する薬を処方して、
経過観察しましょうと語るが、
外科の医者なら、患部を開いて速攻原因を調べようと思う。
311の時の福島原発の事故対応指揮官が、菅直人氏で幸運だったと思う。
政治経済を学んだ方なら、日本のすべての原発の保守管理が
イスラエルの一企業であることの意味は理解できるかも知れないが、
福島原発内部で起こっていたことは理解できなかったと想像する。
同じ引退の道を選んでも、歪んだ顔の老人になることなく、
晴れやかな表情を保ち続けたことで、
なんら後ろ指さされることのない政治家人生を終えるのだと知る。
いち国民として、感謝の念を送りたいと思う。
空からのピンポイント攻撃も可能な時代になったが、
田中真紀子さんはこのインタビューのあと、ひと月もたたずに、
ご自宅が全焼という悲しみに見舞われた。
ご本人が「線香を消し忘れ、ガラスが割れる音がした」と語った。
線香は消すものではない、と誰もが知っているが誰もが黙っている。
この先を進むのも退くのも泥の道が待っているなら、
進むほうを選んで、天の采配をにらみ続けるのもひとつの手かも知れない。
まだいろいろと悩んでいます。