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切なさを歌い続けた村下孝蔵*今も心に残る昭和の天才
過去の恋愛事情により、
ギターソロのある曲はドキドキする。
イントロがそれなら、
ハートはもう虜になってしまうこともある。
言うならば、弦の音がとても好きなのですね。
アコースティックであれ、バンジョーであれ、
プロであれ、素人であれ。
好きなわりには音楽の才能はゼロに近く、
ただ「好き」という思いだけで
恥ずかしくもつながっている。
カラオケボックスで、
デジタルな音色に合わせて歌うより、
ひとりかふたりの生ギターを従えて、
例えば畑のど真ん中の、
ビニールハウスの中で歌う方が、
どれだけ気持ちがいいか、
経験してみなければ分からない。
時間をかけて飾りつけした部屋で、
有名店のケーキを用意されるよりも、
「会えないんだ」と言って、
一本の弦が切れたギターで
ハッピーバースデーと、
電話の向こうで弾いてもらった方が
ずっとロマンチックな思い出になる。
欲しかったという真空管アンプを組み立てて、
私のお気に入りの曲を掛けてくれる。
「ほら、音がずっと素敵だろ?」
「ふんわりして、空気がまろやか」
「これを知ってほしかったんだ」
いつも音楽はそばにあって、
その時聴いた曲と共に思い出を連れてくる。
あの日はリンダ・ロンシュタットだった。
「昭和の音楽好きなの。CD借りたい」
思いがけずにまだ20代の女の子が語る。
チョコレートが好きとかアイスが好きとか、
そういうノリで語る。
昭和と聞いて
「津軽海峡冬景色~♪とか?」と、
確認してしまう私は、少し何を求めてるのか戸惑う。
荒井由実のカバー曲がまとまったものを手に取る。
「ユーミンブランドっていう、
確か2枚目のアルバムが好きだったのよ。
カセットに録音してもらった」
「カセットって何?」
「、、、今のCDが出来る前の再生器具」
「この中でお薦めの曲は何?」
「えーと【冷たい雨】とか好きかな、、、
ハイファイセットのカバーだけど。
岩崎宏美も良かったんだよね」
「岩崎宏美って誰?」
誰と言われても、、、。
あんなに上手な歌手を知らないなんて、
と、平成生まれとのギャップに戸惑う私。
今では身振り手振りで、
「こういう髪型の」と言っても通じない。
岩崎宏美は、いつも友達のお兄さんのレコードを借りて、
カセットに録音していたことを、走馬灯のように思い出し、
一緒に借りていたKISSのメイクも思い出す。
いや違うし。
どうすれば岩崎宏美を説明できるのだろうとグルグル考えて、
「【タッチ】を歌う人のお姉さんよ」と落ち着いた。
どんなに上手くても、
アニメとカラオケの人気曲には敵わない。
「歌が上手い人なんだ?」
「、、、そうね、、、【タッチ】を歌う人よりもね」
なんとなく岩崎宏美さんごめんなさい、と思う。
もう一枚手に取ったのは、村下孝蔵の2枚組のベストだ。
歌うま女子の岩崎宏美の対をなすなら、
歌うま男子は村下孝蔵だ。
20代女子にぴったりの、
昭和の切なさがふんだんに散りばめられている。
「この人はどの曲がお薦め?」
またしても、マニュアルのように尋ねる平成生まれ。
「【踊り子】とかヒットした曲はあるけど、
私が一番好きなのは【春雨】だよ」
「美味しそう(笑)」
「、、、これは何回も聞くと、絶対絶対好きになる曲だから」
「うん、分かった」
頭の中で(早くに死んじゃったんだけどね)と続ける。
もう40年も経ってしまっているのに、
綺麗なメロディーラインの、綺麗な優しい歌詞は、
綺麗なその音程の整った歌声と共に、
永遠に私達の胸を打ちつづける。
平成生まれの感想はどうだろう?
ライブ音源なのにこの上手さ。
見つけたデビュー前の動画ではギターすら上手い。
嫌味のない笑顔。
大人の男性の髪型。
清潔感のある、きっちりしたスタイル。
すべてが「安心感」というゆとりを持って聴ける、村下孝蔵。
もっともっと評価されて、
もっともっともっと歌って欲しい歌手だった(合掌)♡
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![野原 綾](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/116212282/profile_6510399791a1a8fa821b437daebc2b7c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)