イニシャルD*車好き男性との分かれ道
今朝はやばかった。
遅刻しそうになって焦った。
田舎の片側一車線の道路を走っている。
前を走っている白い車のノロさ加減に、
何か嫌な予感がした。
30キロじゃん!
(イケる)と思って、
タイミングを見計らって、飛び出して追い越す。
すぐ先のカーブで対向車が2台やってきた。
ヤバいヤバい、危なかった。
ホッとしたのもつかの間、
紺色の紅葉マークの軽乗用車の後ろに付く。
ちゃんと前後確認していたらしく、
直線で左にウィンカーを出して、
こちらを先に行かせてくれる。
ゆずりあい精神は美しい。てか、助かる。
軽くクラクションを鳴らして、お礼を言う。
少し手間取ったと思ってスピードをあげる。
すぐに4台つながった5台目に並ぶ。
先頭車両はモタモタの軽トラックだ。
荷台になにか積んでいるから仕方がないかも。
2台以上の追い越しはきつい。
だが、2台目の白い車が追い越す気がなさそうで、
みんなそこで諦めて、同じようにノロノロ走る。
繋がった時の2台目の責任は重い。
運転免許を取った時に父が言ったのは
「車の流れに乗ることが一番大事だ」というアドバイス。
しかし、この4台の車の中に、病院の救急に向かう
瀕死の重傷者がいたらどうするの!と心の中で激を飛ばす。
父が言いたかったのは、まさにこのような、
時速40キロの流れでも大丈夫なように、
時間に余裕を持って「早めに出発することが大事」と
一番に教えたかったのかも知れない。。。
でも今日は時速40キロだと遅刻する。
ノロノロ軽トラが左折したので、車列はばらける。
3台目の黒い軽自動車が、
安全運転すぎた白の2台目を追い越し、見えなくなった。
4台目の白い乗用車もそれに続く。
私の番だと思ったら、左側からグレーの車が合流した。
グレーも安全運転過ぎる。
近づいたところで(あのLのマークは、冬タイヤを
変える際にめんどくさいという噂のレクサス)と分かった。
8月のお盆を過ぎると、
スタッドレスタイヤのテレビCMが流れ始める。
この辺で買う人はいないが、除雪機のCMもだ。
高級車を追い越していいのか?と一瞬の逡巡のあと、行動に出る。
だが、次に待ち構えていたノロノロは、
またもや紅葉マークの白い1トントラックだ。
なんだかついてない朝。
もう流れのままに生きて行こうと諦めたら、
途中から嘘みたいにスムーズで、信号にも止まらず、
遅刻することもなかった。
父のいう通りだった。
私は、車は、色位しか区別できない。
乗れればいい、という程度の興味しかないので、
車名まで覚えきれない。
バンや軽トラックやセダンの形状の区別はつく(笑)
話題の中で車が登場する時は、
「〇〇さんのガンダムみたいな車」とか
「白の泣いてるみたいな顔の車」とか、
「苺みたいな赤の車」とか言えば相手には通じる。
男性は車好きが多い。
「これは県内に2台しかないはず」と言われても、
あまりその自慢がピンと来ない。
同一車種でも、
「見た目になんとなく個性があるから違いが分かる」と
言われても、盛りすぎじゃないだろうかと信じられない。
あいつはコベンツというので、車の名前かと思ったら、
排気量の小さなベンツのことだった。
「ナンバープレート見れば分かる」と初めて教わった時は、
(確かに世界は数字で出来ている)と驚愕した。
長い年月をかけて各社のエンブレムも勉強してきたが、
外国車も増えるとBMW、アウディ、フィアット、
フォルクスワーゲン、ミニ・・・トランプの神経衰弱のようで、
だんだん息切れしそうになってくる。
そりゃ、カーブの安定感とか、
加速のスムーズさとか、シートの沈み具合とか分かるけど、
それって私の人生に必要な知識?
RX-7だとかシルビアだとかフェアレディZとか、
かつて詰め込まれた名前の、その姿はすでに忘れてしまった。
イニシャルDは全巻読まされたが、ハチロクの本名も忘れたし、
覚えているのはズキューンだの、ガァフだの、ギュイィだの
ドギャアだのの、ドリフトする時の効果音だ。
一体なんの、どのような違いが??
週末の高速で、同車種の赤、緑、黄色の車が連なって,
まるで何かのデモンストレーションのように走行。
あっという間のハイスピードで走って行った。
「おもちゃみたいで可愛い~♡」と感激すると
「奥様、あの3台はランボルギーニという車です」と、
隣で冷ややかな声のまま旦那が教えてくれた。
その表情はかなり呆れている。